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第三章・23
「先輩。口でして、いいですか?」
少しは驚いてくれるかと思ったが、悔しいことに弦の顔は余裕だった。
「できるのか?」
あんなDVDを観た後だ。きっと興味本位でこんなことを言い出したに違いない。
しかし、観るのと実際にやるのとは大違いだ。
弦は、ぎりぎりのところで千尋が降参するだろうとたかをくくっていた。
思った通り、顔を近づけたはいいが迷ったように動かなくなった。
さあ、千尋。ここまでだ。そろそろ飯にしよう。
そう気を抜いたとたん。濡れた感触が弦を襲った。
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