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第四章・6
「そんなに強いんですか? その高橋さんって人」
「ああ……、千尋!? どうして高橋の事を!?」
もう~、と千尋は天井を仰いだ。
「さっき、ぼそっと話したじゃないですか。今日、高橋さんに負けた、って」
そうだったか? と照れ隠しにお茶すする弦。
すっかり柔道に夢中になってしまって、と千尋は笑った。
しかし、弦が何かひとつのことに打ち込むのは嬉しかった。
エネルギーの有り余っている弦は、しばしば取っ組み合いの喧嘩をやらかしていた。
そんな弦に、身も心も打ち込めるものができるのは大歓迎だった。
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