82 / 239

第四章・6

「そんなに強いんですか? その高橋さんって人」 「ああ……、千尋!? どうして高橋の事を!?」  もう~、と千尋は天井を仰いだ。 「さっき、ぼそっと話したじゃないですか。今日、高橋さんに負けた、って」  そうだったか? と照れ隠しにお茶すする弦。  すっかり柔道に夢中になってしまって、と千尋は笑った。  しかし、弦が何かひとつのことに打ち込むのは嬉しかった。  エネルギーの有り余っている弦は、しばしば取っ組み合いの喧嘩をやらかしていた。  そんな弦に、身も心も打ち込めるものができるのは大歓迎だった。

ともだちにシェアしよう!