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第四章・9

 軽い柔軟を終え、弦は本日の目標を千尋に語った。  昨日、高橋主将に負けた敗因、そして反省、さらに、それを克服するために身に着けねばならないこと。 「鮮やかに速攻で一本勝ちすることは難しい。しかし、技と技を組み合わせながら必勝パターンに持ち込めば、俺でも高橋に勝てる可能性はあると思うんだ」  弦先輩ならワンパンでどんな相手でも瞬殺でしょう、と内心ツッコミながらも、千尋はおとなしく耳を傾けた。 「小内刈りで崩し、内股をかける。ここで決まれば問題は無いが、主将は崩れながら寝技に俺を誘い込んだ」  小内刈り? 内股? 技の名前らしいがちんぷんかんぷんだ。  しかし弦は熱く語り続ける。 「俺の方が上だったので横四方固をかけようとしたが、高橋はそれを返し、下からの腕十字固へと持ち込んだんだ」  横四方固? 腕十字固? 「しかし、横四方固をきっちり決めていれば俺が優勢だったことに違いは無い。ここまでの流れを、今日は徹底的に極めたいと思う」 「は~い」

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