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第四章・10

 よく解からないが、とにかく先輩の技を受けていればいいのだ。  自宅での練習なのに、なぜかこだわりをもって畳の和室で、しかもそのへりを開始線に見立てて真面目に一礼する弦。  ちょっぴりカワイイかも、とクスリと笑った瞬間、すぽーんと体が崩れてしまった。 「千尋! 小内刈りで一本とられてどうする! 真面目にやらんか!」 「急に始めないでください!」  礼をした時からすでに戦いは始まっているのだ、と鼻息の荒い弦。  その後もじゃんじゃん足技をかけてくる。  小内刈りをようやくかわせるようになってきたら、次にはカミソリのような内股が千尋を襲った。 「踏ん張れ、千尋! 高橋はここから寝技に持ち込んでいったぞ!」  僕は高橋さんじゃないんだし、寝技への持ち込み方なんか知らないし!   千尋の心の叫びも、弦には届かない。  内股で一本ではなく、技ありくらいまでしのげるようになった頃には、もうへとへとだった。  

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