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第四章・12
ころんと仰向けに転がった千尋の上に、弦が圧し掛かってきた。
ぐいぐいと体を押し付けられ、千尋は悲鳴を上げた。
「痛い! 先輩、痛い痛い!」
なんだなんだと体を起こした弦に、千尋は涙ながらに訴えた。
「畳に耳が擦れて痛いですよ、先輩。それに、さっきから投げられてばかりいたから、柔道着が擦れて体中痛いんですけど」
そうか、すまなかったな、と弦は素直に反省した。
確かに柔道などやったことのない千尋に、突然畳や柔道着は痛かろう。
「待ってろ」
「?」
和室から出て行った弦は、寝室から自分の掛け布団を担いで戻ってきた。
「これを敷いてからやろう。柔道着は痛いかもしれんが、もうしばらく我慢してくれ。寝技は道衣を掴んでかけるものが多いからな」
「うう……」
「ゆっくりやるから! 痛くしないよう気をつけるから!」
「はい……」
では、と千尋は弦の用意した布団の上に転がった。
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