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第四章・28

 馬鹿だな、と弦は千尋を抱き寄せた。  その一回に、充分価値はある。  口にするのは照れくさいので、わざと全く違う話題に切り替えた。 「一休みと言ったが、休憩にならなかったな」 「……」 「千尋?」  見ると、疲れ果てた千尋は弦の腕枕ですうすうと寝息を立てている。 「今から、一休みか」  まぁ、それもいいだろう、と弦は後輩の素肌に柔道着をかけた。  ずいぶん思いきり乱れたからな、千尋。  見たこともない後輩の痴態。  甘く、それでいて艶のある声。  これはしばらく頭から離れそうにない、と弦は軽く首を振った。

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