104 / 239
第四章・28
馬鹿だな、と弦は千尋を抱き寄せた。
その一回に、充分価値はある。
口にするのは照れくさいので、わざと全く違う話題に切り替えた。
「一休みと言ったが、休憩にならなかったな」
「……」
「千尋?」
見ると、疲れ果てた千尋は弦の腕枕ですうすうと寝息を立てている。
「今から、一休みか」
まぁ、それもいいだろう、と弦は後輩の素肌に柔道着をかけた。
ずいぶん思いきり乱れたからな、千尋。
見たこともない後輩の痴態。
甘く、それでいて艶のある声。
これはしばらく頭から離れそうにない、と弦は軽く首を振った。
ともだちにシェアしよう!