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第五章・3

 弦は、一学期末に坂井が無理やり貸してくれた本を思い出した。  男同士の恋愛を赤裸々に描いた、BL小説。  まぁ、あれがきっかけの一つで、晴れて千尋と結ばれたのだが。  しかし坂井は、内心確かな手ごたえを感じていた。 (あんな本を、っていう事は、中をちゃんと読んだ、ってことだよね)  これは一歩前進。さっそく友達同士で共有せねば!  休み時間を楽しみに坂井は鼻歌を歌い、新たに課せられた試練を前に弦は脂汗を流していた。

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