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第五章・7

   翌日渡された弁当箱は、いつもと同じものだった。  重箱でも渡されるかと思っていた弦はわずかに残念に感じたが、これは中身が充実しているに違いない、とお昼を楽しみに授業を受けた。  そして、昼休み。  弁当箱を開けた弦は、つい苦笑いした。 (フッ。熊の弁当か)  両端をとがらせ耳になぞらえたいなりずしには、切り抜いた海苔やうす焼き卵で顔が描かれている。  卵焼きにゴマで目鼻がつけられたコレは、豚か?  見た目の華やかさで食欲が増せば、との千尋の心遣いに、弦はありがたさと同時に微笑ましさを感じていた。  さっそくいただこうかと箸を持ったその時。

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