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第五章・9

「千尋、まだ寝ないのか?」 「あ、お弁当の下ごしらえ済んだら眠ります。先に寝てください」  その返事に、弦はため息をついた。  あれから毎日、千尋は『きゃらべん』なるものを作っている。  こんなことなら、初日に『恥ずかしい』とハッキリ言えばよかった!  しかし、残さずたいらげてくる弦に、千尋は『先輩は喜んでくれている』と感じてしまったらしい。  猫や犬、はてはネズミまでかわいらしく仕立て、弁当を彩ってくる。  そして今日は、決定的な言葉が坂井の口から放たれた。 「ね、海江田クン。まるで愛妻弁当みたいだよね~♪」  坂井の目が、いやらしいカマボコ形に笑っている。

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