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第五章・30
「千尋、いつまで寝てるんだ。朝だぞ」
弦の声に、千尋は掛布から顔をのぞかせゆっくりとまばたきをした。
「弦先輩……」
ぐんにゃりと覇気のない声。
「起きろ、朝飯だ。弁当の準備もあるんじゃあないのか?」
もぞもぞと、なかなか動き出さない千尋。
おかしい。
この時刻なら、飛び起きてバタバタと慌てだすはずだが。
「どうした、千尋。具合でも悪いか」
ごめんなさい、と千尋は頭からすっぽりと掛布を被ってしまった。
「先輩……体が動かない……」
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