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第六章・3
「どうしました、山本先生」
「お、田中先生、いいところに」
弦の体育の授業を見ている、田中。
その身体能力に一目置き、彼に柔道を勧めている体育教師だ。
「いえね、うちのクラスの海江田のことなんですけど」
「海江田が、どうかしましたか」
山本の悩みは、弦にやや協調性が欠けているところにあった。
真面目に授業は聞くし、注意なども素直に聞く。
問題行動はほとんどない弦ではあるが、いつも一匹狼で飄々としている点が気にかかる、と山本は言う。
「うぅん。確かに海江田は柔道をやるにしても、仲間とワイワイと言った風ではありませんからねぇ」
「そうでしょう。何とか友人と交流を持たせることができれば、と考えているんですよ。体育祭は、そのいいきっかけになるかと思っているんですが」
「そうですねぇ」
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