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第六章・11

「白組応援、いくぞ!」 「おう!」  長ランに白ハチマキ、白のたすきに白い手袋を身につけた弦は、その姿だけで白組全員の心を一つにしていた。  きびきびとキレのいい振り付けも鮮やかで、よく通る声も見事だ。  全員が弦の姿を見ながら、まるでライブに参加しているようなノリで熱中している。  しかし、弦はそんな視線をひしひしと感じながらひとり滝汗をかいていた。 (恥ずかしくてたまらん!)  人一倍も十倍も、丈夫な体だ。  まだ残暑の残る炎天下で長袖の長ランを着ていても暑いことなどないが、別の種類の汗が流れてくる。  米10㎏のためだと我慢しても、練習が終わっても女子が名残惜しそうに周りから離れない。  廊下を歩いていると、いわゆる不良と目されている男子生徒が会釈をしてくる。  挙句の果てに、舎弟にしてほしいなどと言い出す。  弦はついに、千尋に音をあげていた。

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