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第六章・20

 パン! とスターターピストルの音とともにダッシュ!   滑り込む勢いで、運命のカードの入った箱に手を突っ込んだ。  中には『メガネをかけた人』だとか『帽子を被った人』だとか書かれたカードが入っている。  予行練習で走った時に引いたカードには『黒い靴を履いた人』と書かれてあった。  委員長の言った通り、さほど難しくはないはずだ。 「何ィ!?」  弦は自分の引いたカードを見て絶句した。 『カワイイ人♡』  女子の書くような丸文字が、眼に飛び込んできた。  しかし、ここで逡巡していては負けだ。  見ろ、すでに今川と加藤は観戦席に飛び込み、誰かの腕を引っ張っているではないか。 (カワイイといえば、一人しかおるまい!)

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