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第六章・21

「千尋!」  応援合戦の時と同じくらい大きな張りのある声が、運動場中に響き渡った。  途端に、観戦席から、千尋がぴょこんと顔を出している。 「どうしたんですか、先輩!?」 「来い!」  千尋の腕を引っ掴み、弦は猛然と走りだそうとした。  だがしかし。 「ん? 千尋、足をどうした!?」 「ごめんなさい、先輩。さっき出た障害物競走で、くじいちゃったんです」  何と。  足を引きずるようにしか歩けない千尋。  陸上部の今川が、サッカー部の小林が、ラグビー部の加藤が、弦を追い抜いてゆく。 「これでどうだ!」 「ちょっと、や。先輩!?」

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