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第七章・4

 どうしよう。  10月に入り、自分が書いた丸印を見るたびに、弦は焦りを感じるようになった。  千尋の誕生日。  大切な一日にしようと張り切って暦に印をつけたはいいが、どうしていいやらさっぱり浮かんでこない。  千尋のように、好物の料理でもてなそうと思っても、炊事は苦手だ。  巧くいくはずがない。  プレゼント。  これもまったく思いつかない。  以前千尋からは、白地にワンポイントの入ったTシャツをもらった。  制服の下にも着られる、シンプルなやつだ。  しかし、それなりに良いもののようで、柔道部の連中がやたら興奮して褒めていた。  人気のブランドなのだろう。

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