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第七章・7

 そこで坂井は、ぬいぐるみの前足をひょこりと動かして弦に向けた。 「海江田クンは、河島くんへのプレゼントに迷っていますね?」  なぜそれを、と弦は再び驚いたが、いいタイミングだ。  坂井に、何かアイデアをもらえるかもしれない。 「何がいいと思う」  そうですねぇ、と坂井は相変わらずぬいぐるみが話しているかのように手を動かした。 「時間、なんていいかも」 「時間?」 「そ。海江田クン、夏休みの間に、河島クンと一緒にどこかへ出かけたりした?」 「いや、特には」  だと思った、と坂井はため息をついた。  弦が田中先生の指導で、柔道三昧だったことは耳に入っている。

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