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第七章・10

「どうだ? 具合は」 「ごめんなさい、先輩……」  待ちに待った9日の当日、千尋は夜中から熱を出してしまったのだ。  這ってでも行く、と駄々をこねたが、弦に布団に捻じ込まれてしまった。 「朝夕は冷え込むようになったからな。風邪をひいたんだろう」  弦の言葉に、千尋は心の中でそれは違う、と考えていた。  嬉しくて、楽しみすぎて、興奮しすぎて熱を出しちゃったんだ、僕は。  なんて情けない。まるで遠足前の子どもみたい。  どんなに悔やんでも、39度もある熱を押して遊園地へは出かけられない。

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