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第七章・19

 僕は弦先輩だけのものだから。  だから、先輩も僕だけのものでいて。  今日だけでいいから。  誕生日だけでもいいから。  僕は、こんなにも先輩のことが大好きで。 「千尋?」 「弦先輩、好き。……大好き」  泣いているのか? 千尋。  そっと顔を伺ってみるが、涙を流しているようには見えない。  だが、なんだろう。この胸を締め付けられるような気持ちは。  まだ千尋が幼い頃、泣いて泣いて俺の名を呼んでいた時に感じたような、切ない気持ちは。  

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