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第八章・11

「これはやっぱり、接客で勝負よね!」  やたら張り切る坂井が、弦の髪を整髪料で整えてゆく。  オールバックに撫でつけ、余る後ろ髪は細い白のリボンで結んだ。 「どう? 自分でもカッコイイって、思わない?」 「まるで知らん男だ」  坂井に渡された手鏡の中の自分の姿に、弦は大きくため息をついた。 「海江田くん、大人っぽ~い♡」 「大学生みたい」 「お前、実はもう2人くらい子どもがいるんじゃないのか?」  クラスメイト達は、無邪気にはしゃいでいる。  仕方がない。これも人生勉強と思え、と弦は自分で自分に言い聞かせ、やるからには完璧にこなしてみせようと背筋を伸ばした。    9時を過ぎ、次第に廊下を歩く人の姿が多くなってきた。  いよいよ文化祭の始まりだ。 (しかし……、メイド喫茶や執事喫茶は、文化なんだろうか……?)  根本的な問題を考え出すとやるせなくなってしまうので、弦はただ無心に客を接待することにした。

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