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第3話 桃日和

【桃日和①】 ワンワン       ワワワンワンワン 兵藤貴史が康太の命で海外に行く事になると 桃太郎とごまは飛鳥井に預けられた タカシは美緒が連れて行く事になった 選挙も近くなり、美緒は慌ただしく動いていた 桃太郎は一生が預かる事になった ごまは康太の部屋で預かることにした 康太はリビングで寛ぐ事が多くなった 「ごま太、トリミングするか?」 康太はアメリカンショートヘアのごま太を腹の上に乗せて寝っ転がっていた 榊原は「………ごま太?」と聞き直した 「ん……ごま太」 「………ごま太と呼ばれてるのですか?」 「………と本人は言ってる」 「………そうですか……なら、ごま太と呼ぶしかないですね」 ごま太のトリミングをしてると一生が桃太郎を連れてリビングにやって来た 桃太郎は一生と一緒でご機嫌だった 『ワンワン』と康太の顔を見て尻尾を振っていた もう尻尾の毛は綺麗に生え揃っていた 首輪のリボンがキランッと光っていた 「お、桃 元気だな」 康太は桃太郎に語りかけた 康太は桃太郎を撫でながら 「お前の飼い主は今日本にいねぇからな……淋しくねぇか?」と気遣った 一生は「貴史は海外かよ?」と問い掛けた 「ん……俺の代わりに逝って貰ってる……」 「そうか……兵藤は今選挙を視野に入れねぇとなねぇ時期なのに……貴史を欠くのはキツいだろう……」 「その分戦力は送っておいた…… オレが逝ければ良いけどな……オレが動けば……向こうは警戒するからな……」 「貴史は自らの意思で逝ったんだ 気にしてやるな!」 康太は、そうだな……とその会話を打ち切った 桃太郎は一生にベッタリと引っ付いていた 当然夜も……力哉と一生の間に座って、二人に撫でて貰っていた 力哉はニコニコと桃太郎を撫でていた 「桃ちゃんは良い子だね」 力哉が優しく桃太郎を撫でる 「なぁ、俺は?俺は良い子じゃない?」 一生が力哉に甘えて問いかける 力哉は「一生も良い子だよ」と撫でた 『ワンワン!』 桃太郎も負けずと鳴く まるで、ボクは?ボクは?と問い掛けているようで、力哉は笑った 「一生と桃太郎は似てるよね?」 一生と桃太郎が顔を見合わせる 「俺の方が男前だって!」 『ワンワワワワン!ワン!』 (ボクの方が!男前だって!) 同時に抗議が入る 力哉は爆笑した 一生がベッドに入ると力哉がベッドに入ってきた その真ん中に桃太郎が割り込んだ 二人の間に挟まれて丸くなる 力哉は「桃ちゃんも淋しいんだよ」と桃太郎を撫でた 「桃太郎が貴史に連れ帰られるまで……お預けか?」 一生が情けなく問い掛けた 「だね、桃ちゃんの前で犯らないでよ!」 力哉は一生に釘を刺した 「………旦那じゃあるまいし……」 「なら寝ようよ!」 二人と一匹は一つのベッドで眠りに落ちた 朝起きると、力哉は顔をペロペロ舐められて目が醒めた 「………ん……一生……止め……」 力哉は止めた でもペロペロ舐められて、よく見ると桃太郎だった 「桃ちゃん 早起きだね」 力哉は笑った 一生はまだ寝ていた 力哉は桃太郎に「桃ちゃん、一生を舐めて起こしてあげなよ」と唆した すると桃太郎は一生の顔をペロペロ舐めた 「………力哉……ゃめ…………」 一生も力哉がやってると想って…… 力哉は笑った 桃太郎は一生の耳をハムハムと噛みながら…… 『ワンワワワワン!』 いい加減起きろ!と吠えた 耳元で吠えられて一生は飛び起きた 一生は「桃……もう少し優しく起こしやがれ!」とボヤいた 桃太郎は一生にスリスリしていた 力哉は「妬けるんだけど?」と笑った 「妬くな力哉……桃は預かり物だ」 「頭では解ってるんだけどね 桃ちゃんと一生は似過ぎだよ!」 この生活に慣れたら手放せなくなりそうで怖い… 『ワンワン』 と桃太郎は力哉にスリスリ 『力哉、力哉』と近寄ってくるみたいに力哉は嬉しかった 「桃ちゃんは本当に可愛いね」 『ワン ワンワワワワン ワン』 (力哉も可愛いよ!) と言うかのように桃太郎は力哉を舐めた 桃太郎は一生と力哉の間に割り込んで満足そうな顔をしていた 力哉は桃太郎の顔を見て、一生の顔を見た 「何か僕幸せ……」 そう言い笑う そんな感情……ずっと知らなかった 犬がこんなに可愛いなんて知らなかった 人を愛するとこんなに心が満たされるなんて…… 知らなかった 「もっともっと幸せにしてやるからな!」 一生はそう言い力哉の肩を抱いた 「一生……ありがとう……」 『ワン!』 と桃太郎も吠えた 桃太郎と過ごす日 それは愛に満ちた時間が流れていた 【桃 日和②】 首輪のダイヤがキランっと光る 首輪には可愛いリボンが結ばれていた その中にダイヤが光っていた それが桃太郎の首輪だった オーダーメイドの首輪は飛鳥井にいる緑川一生からプレゼントされたモノだった 桃太郎のお気に入りの首輪だった ふさふさの尻尾はフリフリ振られてご機嫌だった 桃太郎のリードを持つ人は…… 「……桃よご機嫌じゃねぇか…」とボヤいた 『ご機嫌に決まってるじゃん!!』 ワンワンワワワォーンと桃太郎は鳴いた 早く!早く! 桃太郎がスキップして走る 「………おい!少し歩け!年寄りを酷使させるんじゃねぇ!」 リードを持つ人は公園へ行くと、ベンチに座った そして桃太郎のリードを外した 『カズキ、だらしないね』 桃太郎は吠えた 「このぉ、生意気だぞ!桃太郎!」 『走ろうよカズキ』 「走ってこい!見ててやるからよぉ」 『ケチ、一緒に走ろうよぉ!』 「無理だわ……少し休ませろ!」 『タバコなんて吸うから体力なくなるんだぞ!カズキ』 ブチッ! 一生は桃太郎を追い掛けた 「うるせぇよ!桃太郎の癖に!」 一生は怒って追いかける 桃太郎は楽しそうに逃げた 桃太郎は一生に追い掛けられて楽しそうに逃げていた そこへコオが走って来た イオリもその横に並んでいた ……………その横に……見た事もない犬が……いた 桃太郎は恐る恐る……その犬に近寄った 兵藤が遅れて公園にやってきた 「一生、悪かったな!」 「腹具合はどうよ?」 一生は心配して兵藤に問い掛けた 「何とか収まった………んとによぉ…… うちのクソ犬……人の服を捲るか?」 どうやら桃太郎が兵藤の服を捲って腹を出したまま放置した様だった 「………腹冷えちまったやねぇかよ……」 兵藤はボヤいた 腹が冷えて下痢したのは言うまでもない 兵藤は桃太郎やコオやイオリの横にいる犬を見て 「あれ、スコティッシュテリアだろ?」と問い掛けた 「知らん」 「シュナウザーとテリアは似てるって言われてるけど 体型が違うんだよな、テリアは足が短い コオ見てぇな足にイオリの様な顔……ある意味… テリアの方がコオとイオリの子供に見えるな」 兵藤はそう言い笑った 一生は「………それ笑えなーず……」と、困った顔をした 「で、誰の犬よ?」 兵藤は問い掛けた すると康太が「元は母ちゃんの犬だ!」と答えた 兵藤は「………え?玲香さんの犬?」と信じられないと呟いた 「元は母ちゃんが美緒から貰った犬なんだよ ………でもな……母ちゃんに懐かねぇかんな 母ちゃんは自分に懐いてるあずきを持って行きやがった……だからオレはこの犬を飼わねぇとならなくなったんだ!」 「………あずき、玲香さんが持って行ったのか?」 「おー!あずきは何故が母ちゃんが好きなんだよ で、母ちゃんにベタッとくっついてる 母ちゃん最近じゃあずきを部屋に入れて可愛がってる でもあずきはオレの犬だろ? 美緒が母ちゃんが淋しいと想って、母ちゃんの為にスコティッシュテリアをブリーダーから、わざわざ買い取ったって言うのによぉ…… 母ちゃん、変えてたもれ!と持って行った…」 康太はボヤいた コオとイオリはスコティッシュテリアの子犬を見守っていた ペロペロ舐められてスコティッシュテリアの子犬は嬉しそうに尻尾をふっていた 兵藤は「名前は?」と問い掛けた すると康太が「ガル」と答えた 兵藤は「なしてガル?」と問い掛けた 「フランス語でGardien(ガルディアン)守護者と言うかんなガルと名付けた」 「………こんな短い足だぞ?」 なのにGardien(ガルディアン)で良いのか? と兵藤は問い掛けた 康太は笑って「護るべき存在なんだよガルは」と笑ったから、後はもう何も言わなかった 桃太郎はガルと並んでいた 同じような顔が………並んでいた 一生は笑い出した よりによってこうも似たのを探して来なくても良いのに…… 顔はイオリ 脚の長さはコオ スコティッシュテリアの子犬に桃太郎は親近感がわいていた 『がるちゃ!ボク桃太郎!ヨロシクね』 桃太郎はガルに自己紹介した ガルも桃太郎に『よろちく』と挨拶した スコティッシュテリアを自分と同じだと認識した桃太郎は………尻尾をふりまくっていた シュナウザーなんだ! ボクと同じなんだ! 大喜びな桃太郎日和なのでした 追記 玲香はあずきと散歩に出ていた 散歩に行くと栗田と恵太と恵美と出逢うのだ 恵太は茶太郎と言うあずきの兄弟犬だった 「母さん、お散歩ですか?」 恵太は嬉しそうに言った 最近、蒼太も康太から犬を貰ったらしく 散歩に出ていた 真っ白なホワイト・スイス・シェパードのタイショウを連れて散歩をしていた 食堂のおばちゃんは………帰らぬ人となった タイショウは飼い主を待って後を追いそうになっていた 本当なら白馬に連れて行く筈だったが…… タイショウの体躯は寒い場所へは行けないと獣医の一ノ瀬が言った だから蒼太に託した 宙夢(ひろむ)がタイショウを気に入って、タイショウも宙夢を気に入ったみたいで飼うのに賛成した その日からタイショウは蒼太んちの子になった タイショウはブリーダーによって掛け合わされ、子供も成していた その子供も蒼太は引き取っていた 子犬とタイショウは一緒に散歩が出来ない だから朝早くタイショウの散歩に行っていた すると母親と散歩が一緒に重なるようになり それが朝の日課になりつつあった 玲香は嬉しそうだった 我が子を見ていられて、本当に喜んでいた あずきは本当に玲香に懐き 玲香もあずきを大切にしていた 朝の散歩のひととき 玲香の大切な時間だった 時々、清隆も一緒になり散歩に行く あずきが取り持つ親子の時間だった

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