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第7話 桃組 大空

飛鳥井大空 大空と書いて【かなた】と呼ばせる 双子で生まれた我が子の為に 康太が付けた名前だった 太陽 とかいて【ひなた】と呼ばせる 太陽は大空があるから昇れる 大空は太陽が在るから蒼いと解る 二つはなくてはならぬ存在だから なくてはならぬ存在に相応しい名前を付けた 生まれてからずっと、親と過ごせない時があったって 兄弟は離れる事なく過ごして来た なのに……… 大空は幼稚舎では、一人だけ組が違った 翔は大空を心配して休み時間のたびに顔を出してくれる 音弥はこっそり抜け出して大空の傍にいてくれる 見つかって連行されるけど、手を握っててくれた 流生は何かと桃組に顔を出していた 飛鳥井の五兄弟は休みに時間に突入すると、桃組に集結する 同じ組の子が話し掛けてきても、休み時間はダメ 授業中は大人しく人気者 休み時間は他は眼中にない 先生達は困っていた 桃組の『くらしななつひこ』クンが何かと大空にちょっかいを掛けてくる 大空はそれが少し辟易していた 「おまえ きょーらい いにゃいと にゃんにもれきにゃいのかよ?」 兄弟が訪ねて来るから、揶揄してちょっかいを掛けてくる 大空は無視していた でもネチネチ……ネチネチ……そいつが止まる事はなかった 大空は先生の所へ行った 「あいちゅ うるちゃい!おきょる!」 先生は大空は寡黙な子だと想っていた 「喧嘩はダメよ?」 「ちぎゃう!おきょるにょ!」 そう言い大空はスタスタ近寄った そして「おみゃえ、うるちゃい!」と怒鳴った ネチネチして来た奴は「え?……」と驚いて泣いた 同情を引こうと泣いていたが先生からも一蹴 「かなたくんにちょっかい出してたからでしょ?」と言われた 理不尽に想えた…… なつひこクンは生まれて初めて鼻っ柱をおられた 寡黙だが厳しい大空の人気が上がったのは 言うまでもない 女の子からの熱い視線を受けても…… 知らん顔の大空だった なつひこクンは親にさっそく報告した 「おきょったやちゅ いりゅにょ はらたちゅにょ!」…………と。 親は気楽に「誰なのその子は」と聞いた 後で先生に謂えば良いわ……と算段する 「あちゅきゃい きゃにゃちゃた」 飛鳥井大空……… 触らぬ神に祟りなし 「なつひこ!皆と仲良くしなさい! 解ったわね!飛鳥井大空君にはちょっかいかけちゃダメだからね! あんたのお小遣い減らすだけじゃ足らなくなるからね!」 母親に釘を刺された 理不尽だ……… くらしななつひこクンは理不尽な世界を知った のちに大空とは親友という程 仲良くなる子だった 大空の幼稚舎生活は始まったばかりだった 「らいじょぶ!きゃにゃ ちゅよい!」

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