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第8話 行きたくない

飛鳥井の朝は戦争だった 幼稚舎の制服を着せて帽子を被せて登園の準備をする 応接間で登園までの時間を待つ 犬を触る子供に毛が着くからと止めて、登園時間になり玄関へ向かう 「みんな揃ってるな!」 かぁちゃの号令が掛かる 「「「「 あい! 」」」」と良いお返事が返ってくる …………ん?康太は点呼を取った 「翔!」 「あい!」 「流生!」 「あい!」 「音弥!」 「……………」 「あれ?音弥は? 次、太陽!」 「あい!」 「大空!」 「ぁい!」 元気のない声が何とか聞こえた 康太は榊原を見上げた 「………音弥……いねぇ……」 康太が呟くと榊原が 「君は先に幼稚舎へ行きなさい 僕は音弥を捕まえて行きます!」 そう言い榊原は音弥を探しに行った 康太は四人の子達と共に家を出た 慎一が「俺も伊織と共に残って音弥を探します」と言い家の中へと入って行った 一生は康太を急かした 「とにかく、行くぜ!」 「………音弥……虐められてるのかな?」 不安になって康太は……言う 「旦那が連れて来るから、おめぇは子供達を連れて行かねぇとならねぇんだよ!」 他のことは考えるなよ!と一生は康太を急かした 榊原は音弥を探した 応接間、キッチン、客間を探した 一階には玲香と清隆の部屋があるが、二人は出勤する時鍵を掛けるから、入るのは不可能だから探さずに 源右衛門のお部屋のドアを開けた するとパタパタと言う音が聞こえた 榊原は部屋に入って音弥を探した 「音弥、いるのは解ってます! 出てらっしゃい!」 榊原が言うとカーテンに隠れた音弥が顔を出した 榊原は音弥を抱き上げた 「幼稚園、行くの嫌なのですか?」 「………ちらう………」 「なら何故隠れたのですか?」 「かぁちゃ……とぅちゃも……いにゃきゅにゃるぎゃら…… おとたん……ちゅいてきゅ…… ちゃみちいにょ いらや……」 康太や榊原がいなくなるから……淋しいのは嫌だから隠れてて一緒に着いてくつもりだと訴えられて 榊原は音弥を強く抱き締めた 「………音弥……ごめんね……」 榊原は音弥に謝った それでも逝かねばならないのだ…… どれだけ子供に泣かれようとも…… 明日の飛鳥井の礎を築く為に逝くだろう…… 「………おとたん……わりゅいきょ?」 「違いますよ…… でも……みんな心配してます」 「………ぎょめん……」 音弥は謝った 手を繋いで幼稚舎へ向かう 幼稚舎の前には……康太が子ども達と待っていた 「……康太……遅刻ですよ?」 「解ってる……でも……他の子が音弥が来ねぇから…… 心配して入らねぇんだよ!」 榊原は音弥に「ね?みんな心配してるでしょ?」と問い掛けた 音弥は頷いた 兄弟、手を繋ぎ幼稚舎の中へと入って行った クラスは違えど、何時も一緒な兄弟だった 榊原は帰り道に 「音弥……僕達が留守にするから…… お留守番しなくても良いように見張っていようと想ったそうです……」 「………そうなんだ…… ずっと一緒にいてやりてぇけどな……」 そう言う訳にはいかなかった 逝かねばならぬ時は…… 振り返りはしない 生きて還れない道だって…… 康太は逝くのだから…… 榊原は康太を抱き寄せた 「………いられる時は一緒にいてやりましょう」 「………解ってる……」 「写真館に写真を撮りに行きましょう 家族で毎年撮りに行きましょう そうして家族写真を毎年、増やして行きましょう」 「………伊織……ありがとう…」 「僕と君の子です 誰に何を言われようとも…… 六人の子は僕と君との子です 君の魂を受け継いだ子です 決して曲がらずに育ってくれます」 「………だと良いな……」 「良いなじゃなく、そうなるんです! 僕が言うんですから、必ずそうなります!」 「青龍は有言実行の男だもんな」 「そうです。 世界で一番幸せな奥さんにしてあげます 約束します 未来永劫……君を幸せにします」 「………ありがとう……」 「ありがとう……じゃなく愛を囁いてください」 「愛してる お前だけ愛してる」 「僕も愛してます 君だけ愛してます」 康太と榊原は手を繋いだ 二人は帰りはお迎えに来ようと想った 一緒にいられる時はいてやろう そして抱き締めて…… 愛してるってキスを落とす…… 愛してる 愛してる 愛しき子よ 明日の飛鳥井を背負わす我が子よ…… 康太は榊原を見上げた とぅちゃ と かぁちゃ は誰よりもお前たちを愛してます

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