11 / 95

第11話 太陽の様な子は‥‥

太陽は温厚で人当たりも良く、言うことを聞く良い子だ ほとんどの人はそう言うだろう 勿論、花組のたえこ先生も同じ事を言うだろう だが案外太陽は腹黒い それは兄弟や気に入らない奴にしか見せないのだが…… 兄弟をイジメる奴らには、知らん顔して足でも出して転けさせる 転けた奴は太陽が足を出した!と怒っても 太陽は先生の信頼も厚い 「ちな、ちらにゃい!」で押し切れるのだ その日も流生に文句言ってる女の子の側に寄っていき 「ぶちゅ だみゃれ!」と低い声で脅した 女の子は大泣きして先生が近寄ってくる頃には太陽は消えていた 女の子が「ちなきゅん いじめた」と泣いても 「ひなた君?何処にもいないのに嘘はダメよ」 と言われるのだ 理不尽だ…… と、女の子は怒るが、太陽は知らん顔していた その日は翔が同じ組の男の子に 「おまえ えらちょうらな!」と肩を突き飛ばされていた 翔は知らん顔していた 翔の瞳は生まれつき人とは違う 翔は見える自分の瞳が見せる世界を、まだ受け止めきれずにいた だから極力、人を見ないように過ごすと、生意気!となるのだ…… 翔はどんな挑発にも乗らなかった そんな翔を休み時間に目にして太陽は切れた 「かけゆによりゅにゃ!でぶゅ!」 太陽はそう言い翔を虐めてた子に暴言を吐いた デブな男の子は太陽を突き飛ばした 太陽は突き飛ばされた以上に飛んでいき…… 窓に激突した そして窓ガラスが割れた それを見ていた子が泣きながら騒いだ 保母がやって来て、血だらけの太陽を見て大騒ぎした 翔を虐めていたデブな子は……… 太陽を突き飛ばして先生に怒られていた 太陽はニャッと嗤った 翔はそれを見ていて…… 悲しくなった だから「………ちな……やっちゃらめ!」と泣いて怒った 翔の泣く姿は滅多と目にしない兄弟は…… 全員大泣きして…… 別室に移された 康太が幼稚舎から呼び出しが掛かった 康太は榊原には教えずに、一人で幼稚舎に来た 保母が説明しようとすると、康太は 「説明は不要だ」と言った そして子供達を視た 太陽は手当てを受けて母の顔を目をそらさずに見ていた 「ひな、歯を食い縛れ!」 康太が言うと太陽は目を瞑って歯を食い縛った 康太は太陽が吹き飛ぶ程に……叩いた 保母は「……止めて下さい!虐待として通報しますよ!」と叫んだ そこへ美代子先生が現れた 「飛鳥井の家の事に我等は関与は一切してはなりません!」 たえこ先生に美代子先生は言い捨てた 「………ですが……美代子先生……」 「受け入れられないなら……貴方は受け入れられる所へ転職なさる事をお勧めします!」 凜として美代子先生は言い捨てた たえこ先生は……歯を食いしばり……目を瞑った 「何で叩かれたか解るか太陽?」 「………わじゃと……やっちゃきゃら……」 「そうだ!兄弟を想う事は良い事だ オレは何も言わねぇけどな もしガラスが心臓を突き刺したら、お前は確実に死ぬぞ? それこそ永遠に兄弟に逢えねぇ状態になる可能性だってある……」 太陽はボロボロと涙を零して「ぎょめん……かぁちゃ…」と謝った 翔が太陽の前に出て両手を開いて、庇った 「………かけゆ……きゃばったきゃら!」と翔は訴えた 「翔」 「あい!」 「視えたのか?」 「………あい……ちゅいみゃちぇんれちた」 翔は謝った 「………翔……視える果ては変えられない…」 「わきゃっちぇまちゅ」 康太は翔の瞳を貫いた 翔は怖かった かぁちゃに視られるのが一番怖かった 太陽は翔の前に立った 「かけゆ……おきょるにゃ!」 太陽は怒っていた 流生は太陽と翔に抱き着いた 音弥は康太に飛び付いて「らめっ!」と訴えた 大空は美代子先生の所へ行って耳元で ヒソヒソ ゴニョゴニョ カクカクしかじか と話をしていた 美代子先生は頷いて、部屋を出て行った 康太は子供達と睨み合っていた 康太は身を挺して兄弟を庇う太陽が怖かった 兄弟は何故太陽と翔を怒るのか…… 解らないでいた 「………お前達は……慎一に迎えに来て貰え……」 康太はそう言い立ち上がった そして部屋を出て行った 子供達はかぁちゃに見捨てられたと号泣した そこへ榊原が顔を出した 「あれ?康太は?」 榊原は部屋の中にいない康太の姿を探した そこへ慎一がお迎えに来た 「あれ?伊織……どうしました?」 慎一はそう問い掛けた 「慎一、君はどうしたんですか?」 「俺は康太に呼ばれました……伊織は?」 「僕は美代子先生に呼ばれて来ました」 榊原が言うと美代子先生は 「かなた君がとぅちゃ よんれ!と言ったから呼びに行ったんです あんな状況にいても、判断が冷静に出来るなんて凄い子ね」 美代子先生は大空を誉めた 美代子先生は康太と子供の会話をメモにしていて、それを榊原に渡した 榊原はそのメモを受け取り、読み始めた メモは詳細に会話まで書いてあった それで榊原は状況を理解した 榊原は太陽を見た すると太陽はビクッと震えた 「太陽、どうして母さんが怒ったか、解りますか?」 「ちな……わじゃと……やっちゃ……」 榊原は立ち上がって太陽の横に座ると怪我をした手を撫でた 「運が悪かったら……太陽は死んでいたかも知れないんですよ?」 太陽は涙で潤んだ瞳を榊原に向けた 「こんな痛い目をして……もう二度とやってはいけませんよ?」 「ぎょめん……」 「太陽を誰よりも愛しているから…… 母さんは叩いたのです……解りますね?」 「……わきゃる……」 「なら母さんに謝らなきゃね」 「……とぅちゃ……ぎょめん……」 「太陽が怪我して助けてくれても翔は…… 喜びませんよ? 翔は視えていたのです…… 翔に後悔させないで下さい」 「……かけゆ……ぎょめん……」 太陽は泣きじゃくった 榊原は太陽を抱き締めた 翔は榊原に「………かけゆ……ちぎょう……ちゃらにゃい」 と告げた 「………それは……母さんが決めます 自分で決めてはいけません 解りますね?翔」 「………わきゃった……」 翔は涙を堪えていた 榊原は翔を抱き締めた 「翔、泣いてもいいのです」 「らめ……かけゆ……ちんぎゃん…」 「真贋が泣いちゃダメだって誰が言ったのですか? 父さんがそいつを殴り倒してやります! だから泣きなさい翔 泣いても良いのです 我慢される方が………堪りません 泣けないなら殴り倒してやりましょうか?」 榊原が優しく言うと翔は泣き出した 榊原は立ち上がると先生方に頭を下げた 「飛鳥井の子育ては歴代の習わしがあるのです なので口出し無用でお願いします まぁ、口を出されたとしても聞けませんけどね うるさく言うなら……永遠に言えなくすれば良いだけです 飛鳥井を敵に回して、どれ位持つかやりたいのであれば、やると良い!では失礼します!」 榊原はそう言うと、子供達を促して幼稚舎を出た 榊原が幼稚舎を後にすると佐野春彦が姿を現した 「たえこ先生、怒らせると一番厄介なのが榊原伊織です 彼は日頃温厚で人畜無害な奴ですが、桜林学園歴代執行部 部長に名を連ねている男です 甘く見ると痛いしっぺ返しを受けます」 と忠告した 美代子先生は「何故康太ちゃんが一人で来たのか…… こうなるのが目に見えているから……なんですよ 伴侶殿は何処までも冷徹になり……追い詰めていく それをやられた人間は……地獄に墜ちた方が楽だと必ず言うらしいですよ? すると彼は「本当に地獄に墜ちた事もないのに言えるなら堕としてあげましょうか?」と言うもんだから…… チビる程に学園の生徒を脅えさせたのです 甘いと想うと痛いしっぺ返しを食らう事を忘れてはいけません!」 たえこ先生に釘を刺す そして佐野がトドメを刺した 「飛鳥井康太を怒らせたら……そんな輩の相手をせねばならねぇって事だ 康太の為ならば……駆け付けてくる厄介な存在は多いと頭の中に入れておくと良い!」 そう言い、美代子先生と佐野は部屋を出て行った たえこ先生は唖然として……… お二人の言葉を肝に銘じておいた 幼稚舎を後にした榊原は桜林学園へと歩いて向かった 慎一は「何処へ行くのですか?」と尋ねた 「康太の覇道を手繰り寄せているのです」 榊原はそう言い子供達と手を繋いで歩いて行った 泣きじゃくる太陽を慎一は抱き上げた 榊原は桜林学園へと入っていって、学長室の前に立った そしてノックした ドアを開けたのは神楽四季だった 「早過ぎます伊織……」と四季はボヤいた 「僕は妻の側を離れる気は皆無ですので!」 そう言い学長室へと入って行った 学長室のソファーに康太が座って紅茶を飲んでいた 太陽は慎一に「おろちて!」と頼むと康太へと飛び付いた 「………かぁちゃ……ぎょめん……」 康太は太陽を抱き締めて頭を撫でた 「もう二度とやるなよ!」 「あい!」 太陽は返事した 「お前が怪我するの……見てる兄弟はお前よりも痛いんだぞ?」 「………まもりちゃきゃっちゃの!」 「守るなら、人を陥れずに守るんだ」 「………わきゃっちゃ!」 「良い子だ! 約束だぞ?」 「あい!やくちょく ちゅる!」 小指を出して指切りげんまんをした お約束の指切りげんまんだった 「帰り、久遠の所へ連れて行かねぇとな ガラスの破片でも入ってたら大変だ」 太陽は康太に甘えていた 兄弟はこの日は太陽に、かぁちゃを譲った 飛鳥井康太の子は、康太の精神や魂を受け継いで 明日の飛鳥井へと繋げて逝く 曲がらずに育てて逝かねばならぬ子供達だった 神楽と別れて、康太は飛鳥井記念病院へと向かった 太陽の手当てをして貰い、康太は診察を受けた 康太が戻って来るまで待合室で待っていた 大空が太陽の側に来ると、怪我をした所を撫でた 流生も太陽を撫でた 音弥は太陽にキスした 翔は太陽と手を繋いだ 飛鳥井康太の子達だった

ともだちにシェアしよう!