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第12話 西村沙織の観察日記

【観察ファイル①】 飛鳥井建設 副社長 榊原 伊織 彼は役者 榊 清四朗の次男なのは有名な話だ 何故、飛鳥井建設の副社長をしているかと言うと 飛鳥井家真贋 飛鳥井康太の伴侶だからだ だが、榊原伊織は誰よりも瑛太に似ていた 社長と兄弟だよ と言われれば、あぁやっぱり……と誰もが納得するであろう それ程に榊原伊織は飛鳥井の家族と似ていた 下手したら飛鳥井康太の方が…… 似ていなかった 拾われた子だから…… と言われれば、あぁやっぱり…… と、誰もが納得するだろう 傍にいると緊張する程のイケメン そんな榊原のより近くで康太の秘書をしている西村沙織の観察日記を少しだけ公開したいと思う 榊原伊織はまるでロボットの様に感情がない 冷徹な彼は、眉一つ動かす事なく…… 一刀両断、断ち切る事が出来る男だった そんな彼の弱点は……飛鳥井康太 彼は妻にメロメロだった 今時、メロメロなんて死語だが……… その言葉が彼には似合っていた ロボットが人間らしい感情を見せるのは妻といる時だけ…… 「康太、愛してます 君だけを愛してます」 口にすると暑苦しい台詞を何時も吐きまくり 「君がいなければ生きられません」 勝手にやってれば? そう言いたくなるのは仕方がない 榊原の気持ちのベクトルは常に妻にしか向かわない 妻がいると仕事なんてそっちのけで愛を囁く 最初は嘘…… と想ったが…… 暑苦しい台詞の羅列を吐きまくる男に 人間らしい想いがあるのに驚いた この人も……生身の男だったか…… 西村はそう思った だが……結婚したくないタイプの男だと西村はつくづく思った 恋人がいないと副社長はすぐに恋人を探し出す 引き出しを開いて中身をチェック 副社長……幾ら小さくても……無理では? 西村は想う 真剣な顔で探してる榊原に…… 「………副社長……真贋でも引き出しは無理です」 と助言 「僕の康太は時々3センチになったりしますからね……」 悲しそうな顔で言われたら……… どう突っ込めば良いのよ! 西村は3センチの康太を想像する 似合いすぎてて…… 笑いを堪えるのが大変だったのは言うまでもない… トイレから帰って来た康太を掴まえると、榊原は膝の上に乗せて仕事を始めた 「奥さん……勝手にいなくならないで下さい」 「………お前が中出ししたからな……腹具合が悪かったんだよ!」 ………聞きたくないんですけど? 「ごめんね康太…… 堪えきれずに沢山中出ししちゃいましたからね…… 今もお腹の調子悪いのですか?」 「大丈夫だ伊織!」 榊原は康太に口吻けた 西村は「ゴホンッ」と咳して止めようとした ………が、二人の世界には誰も入り込めなかった 西村はアホらしくなって真贋の部屋に戻って行った 真贋の部屋には慎一が仕事していた 慎一は西村を見て「お邪魔虫でしたか?」と言い笑った 「………急ぎの仕事なら引き剥がしてやるんだけどな」 「珈琲を入れます」 慎一は珈琲を入れて西村の前に置いた そして康太が隠し持っているお菓子を西村にお裾分けした 「なぁ慎一」 「何ですか?」 「副社長……康太がいないって引き出しの中まで見てた」 慎一は吹き出しそうになった 「………西村……」 「………何も言わんけどな……」 「………伊織は康太しか見えませんからね」 慎一は西村の前にお菓子を置いてやった 「………あんなに愛されたい思いはあるけどな…… 実際にやられたら……三日で逃げ出したくなるな」 西村がしみじみというと慎一は笑った 「あの二人は……気の遠くなる程昔から……ずっと互いを愛してきましたからね……」 「あの二人しか成し遂げられない愛だな」 「ですね!」 「慎一もそんな人探せよ」 西村は慎一にふった 慎一は「なら西村もそんな人、探したらどうなんです?」と返された 「………ストーカーと執着の差が……私には解らないわ」 「………それは俺にも解りかねますね」 「それが解ったら再婚するよ」 「………永久に無理じゃない?」 慎一が言うと西村は慎一の脛をけり飛ばした 慎一は蹲った 西村は「慎一は女心が解らないのよ……」と言い捨てた 慎一は苦笑した 西村の観察日記は始まったばかりだった 「また観察したら報告するわ!」 【観察ファイル②】 この日 榊原は忙しかった 午前中に大学に行き、昼から会社に出勤していた 大学2年になった榊原は専攻のレポート提出や課題の提出に手間暇取られていた 忙しい…… 仕事をしながら、想うのは康太の事ばかり…… 大学には一緒に逝った 会社にも一緒に戻ってきた だが、会社に戻って直ぐに康太は秘書の西村と共に真贋の仕事へと出掛けて逝った 康太のいない空間 それは榊原から総ての感情を奪った瞬間だった 真贋の仕事を終えて会社へと戻る車の中で西村は康太に 「アレ……の何処が宜しいのですか?」と問い掛けた 四六時中束縛したがる恋人など、持ちたがるモノなど中々いない 西村は想像するだけで辟易しながら問い掛けた 「全部愛してるんだよ! これ以上愛せないって想う矢先から愛が募ってくんだよ!」 「………モノ好きに御座いますね! 貴方は遥か昔から……彼しか愛しませんでしたものね」 「解ってるじゃねぇかよ?木花咲耶姫」 「………カビが生えた名前はよい お主が還らぬ限り……その名では呼ぶな」 「オレはまだ還らねぇぞ?」 「解っておる! お主のおらぬ魔界はパインを入れぬ酢豚でいかぬな」 「………パインを入れねぇ酢豚って……例え悪すぎねぇ?」 「なら消臭剤を入れぬ下駄箱でどうじゃ?」 康太は想像して……眉根を寄せた 「その例え……めちゃくそ嫌だわ」 「ならば酢豚で我慢しておけ!」 「そうする!」 康太はドッと疲れて会社へと戻った 真贋の部屋のドアが開くのを聞きつけると、榊原は真贋の部屋へ続くドアを開けた そして部屋の中の康太を拉致ると副社長室へと連れ込み、ドアに鍵を掛けた 「康太……何処へ逝っていたのですか?」 「真贋の仕事だって言ってたやん」 「探しました!」 榊原は康太を抱き締めた 「西村がスケジュールを教えてねぇのか?」 「教えて貰っておりますよ? でも見えないと不安なんです 君を愛する故です許しなさい」 「………それ言われたら反論できねぇの知ってて言ってる?」 「愛してます康太」 「オレも愛してるかんな!」 「…………ゲシュタルト崩壊……しそうな程に仕事しました……君を味合わせて下さい……」 「………会社……だぞ?」 会社で最期までは嫌だと何度も言った ノックされたらどうするんだよ? 康太は追い着かない場所では嫌がった 「……なら……顔に……」 榊原は両頬を挟んで口吻けして 「掛けさせて下さい」 「………伊織の好きにしろ……」 康太は愛する男の要求を飲んだ 榊原は康太を引き寄せると…… 耳朶を噛み「なら……舐めて下さい」と告げた 康太はソファーから立ち上がると、榊原の前に跪いた そしてズボンの前を寛げて……性器を取り出した 硬くなった亀頭の先っぽに口吻け… 先っぽをペロッと舐めた 口に咥えて、肉棒を口淫する 指は陰嚢を揉みながら…… 裏筋に指を這わせた 「………っ……あぁ……イキそうです……」 榊原は康太の頭を押さえ込むと……射精直前に口から抜いた そして顔に射精した 榊原の精液が顔に飛び散った 目に入りそうな精液を拭き取り、口吻けた てらてら濡れた唇は……欲情を掻き立てるには充分だった 「伊織、約束は守ってやった 続きがしてぇなら……仕事を終わらせろよ伊織」 「………康太……写真撮って良いですか?」 精液で濡れた顔を……撮ると言うのか? 康太は諦めて「良いぞ……」と言った 榊原はその顔をカメラに収めて、顔を拭いてやった そして康太を抱き上げて膝の上に乗せた 部屋の換気をして消臭剤を撒き散らし 榊原は康太を膝の上に乗せて仕事を始めた その様子を真贋の部屋から見て、西村はため息を着いた 一生が「………あの2人は何時もだ放っておいてやれ!」とボヤいた 「私なら三時間でご免だわ……」 「仕方ねぇだろ?康太も惚れまくってるんだからよぉ!」 一生もボヤいた 部屋に引き入れ込むなり顔射なんてご免だった 「………顔射だぜ?一生」 「挿れてねぇだけ理性はあったんだよ」 「………挿れる時もあるのか?」 会社だぞ?と西村はボヤいた 「旦那にとったら場所は関係ねぇんだよ」 「………お前の弟であろう……お前もそうなのか?」 そう言われて一生は西村の顔を凝視した 「………お前……誰よ?」 「まぁ気にするな!」 めちゃくそ気になるんですけど? 「………気にするなって方が無理なんだけど?」 西村は「そうか?」と言うと嗤った 「まぁ慌てるな赤いの そのうち解る事もあるってもんだ!」 「そのうち………ね まぁ、それで良いか」 一生は暢気な事を言い追求を止めた 康太が真贋の部屋を開けると一生と西村を見た 「一生、オレは帰ることにした!」 「家に直行?」 「違う!烈を迎えに行って子供達を幼稚舎まで迎えに逝く」 「なら俺も逝く! ついでにファミレスに逝こうぜ! 今日は俺が奢る!」 「おっ!珍しいな」 「アスカイサンダーがパドックに入るなり連勝を続けているからな」 緑川から育った馬が初めてパドックに入った パドックに入るなり連勝を決め込み、今の所負け知らずだった それを皮切りに良い具合に馬が成長を続けている 緑川慎吾の夢とも言う、自分のファームからサラブレッドを排出すると言う夢が叶った瞬間だった 康太は榊原と一生と共に帰って行った 西村はそれを見送った 「………貴方は……本当に難儀な方がお好きなのですね…」と呟いた そして暑苦しい程の恋人同士を思い描いた 顔射…… ねぇな 西村は自分なら張り倒すだろうな……と考えて苦笑した そこまでの大恋愛 してみたいな 相手の精液が気にならない程に愛してみたい まぁ無理だろうけど…… 西村は仕事を片付けるべくPCの前に座った

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