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第16話 コオ イオリ 時々ガル

『………イオリ……』 コオはイオリの名を呼んだ 『………解ってるよコオ……』 イオリは擦り寄ってくるコオを舐めた ワンワン♪ スコティッシュテリアのガルが尻尾をふっていた 『………この子……イオリに似てるね……』 『そうかな?脚の長さはコオに似てるよ』 ブチッ 『………どうせオレは足が短いよ……』 キャンッ!!!イオリは鳴いた 『違うよ!そんな意味じゃない!!』 あずきがコオとイオリの間から出て来た あずきは玲香が飼うようになったが、玲香が会社に行ってる間は、コオやイオリと過ごしていた 玲香が会社から帰って来たらベッタリ玲香に着いて歩いていた あずきは新しく来たグレーと黒のまだら模様のガルから子犬の匂いを嗅いで嬉しくなっていた 生後半年のスコティッシュテリアからは子犬の匂いがした ガルはイオリに懐いていた 父親だと想っているのか、常に一緒にいようとしていた そんなイオリが大切にしてるコオは……母さんだと想っているのか、コオにも懐いていた 『……イオリ……よそで作ってきたの?』 コオが呟くとイオリは焦った 『ボクはずっとコオ一筋です!』 朝からイオリのキャンキャン!!と言う声が響き渡った あまりのうるささに康太が応接間に顔を出した 「うるせぇぞ!イオリ」 康太が言うと涙と鼻水を垂らしたシュナウザーがキュンキュン鳴いて近寄ってきた 『………ボクはずっとコオ一筋なのに……』 康太はイオリに同情して 「コオ、イオリはおめぇだけしか見てねぇのに……言ってやるな!」と怒った コオは耳を垂らして……『だって……』と項垂れた 「この犬はスコティッシュテリアと言う犬でシュナウザーじゃねぇ!」 『……でもイオリに似てるよ……』 「オレもなシュナウザーだと想っていたら、違うって美緒が言ってた」 『そうなんだ……でも良かった』 納得してコオは尻尾をふった そこへ桃太郎が乱入してきた 『コオ!逢いたかったよぉ!』 ワンワン!鳴いて入ってくる桃太郎をイオリは邪魔そうに見た コオは『桃ちゃん!』と嬉しそう だから腹が立って桃太郎のお尻にガブッと噛み付いた キャン!と桃太郎は鳴いた 康太はイオリを叩いた 「今度噛み付いたら別居だかんな!」 キャイン!キュンキュン……『やだ!そんなの嫌だ…』 イオリは鳴いた コオは桃太郎のお尻を舐めてやった ガルも桃太郎のお尻を舐めた ガルは桃太郎に擦り寄った 『ガルちゃ……イオリソックリだね』 桃太郎はガルはシュナウザーだと信じて疑っちゃいなかった 『コオは産後は大変なんだから無理しちゃダメだよ』 桃太郎は尻尾をふってご機嫌にそう言った イオリは固まった 『………桃……ボクは……』 イオリはなんと説明していいか……解らず困っていた 『コオとイオリのいい部分を取ってるね!』 コオが出産したと疑わってない桃太郎だった 兵藤は堪えきれずに爆笑した それを見ていた一生も腹を抱えて笑っていた 一生は涙を拭きながら 「桃、おめぇの子供は俺が一匹貰うからな!」と口にした 『ボクの子?そっかボクも奥さん貰うんだね!』 嬉しそうに桃太郎が言うと更に一生は爆笑した 「桃…」 ワン?『何?一生?』 「首輪気に入ってるか?」 ワンワンワワワン!『気に入ってるよぉ!一生!』 桃太郎は一生に飛び付き、顔をペロペロ舐めた 一生は笑って桃太郎を撫でた そしてコオとイオリとガルを見て……笑った 「顔はイオリだな」 一生が言うと兵藤も頷いた 「体躯はコオだな」 兵藤はそう言いガルを撫でた そしてコオを撫でて 「近いうちにコータの兄弟犬が産んだ子を貰う事になった……」と告げた コーギーのコータを亡くして…兵藤は寂しそうだった だから美緒が兄弟犬を持ってる知人に頼んで子を成して貰ったのだ 淋しそうな兵藤の傍を桃太郎は離れようとはしなかった ずっとベッタリ桃太郎は兵藤の傍にいた だから兵藤が誰が好きなのかも知っていた 大好きなご主人貴史の為に桃太郎は日々尽くしていた 背中が痒いと言えばご主人貴史の為に服を捲ってパリパリ掻いてやる お腹が痒いと言えば服を捲ってパリパリ掻いてやる でも元に戻さないから腹が冷える 康太は「そっか……散歩で逢えるの楽しみだな」と喜んだ 「まぁコーギーが来ても桃は離れそうもねぇけどな」 「お前、大学まで連れて行ってるんだって?」 「離れねぇからな」 「桃は貴史が大好きだからな」 「あの顔で悪さするんだからな……でも怒れねぇけどな」 兵藤は笑った ガルは桃太郎に近寄った 桃太郎は嬉しそうにガルを舐めた 『ガルちゃ』 『モモちゃ』 すっかり仲良しさんな二匹はじゃれて遊んでいた それをコオとイオリは見ていた 気分はすっかり両親の気分 あずきも仲間入りして桃太郎とガルとあずきが遊ぶ 飛鳥井の家は今日も平和だった

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