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第21話 水泳の準備

ギラギラ照り付く太陽が容赦なく降り注ぐ夏 桜林学園 幼稚舎の方も水泳が始まる季節となった 水泳 桜林はかなり本格的な教育を幼稚舎からするので有名だった 今 トップを泳いでいる選手の何人かは桜林の出だった 康太と榊原は水着の即売会にやって来ていた 飛鳥井康太の姿を見かけると父兄は目の色を変えて…… お近付きになろうと躍起になった 近付いて、彼に見て貰いたい そうすれば百億の富がもたらされる 目の色を変えて康太に近寄ろうとする それを慎一が涼しい顔をして止めていた 「主に近付くのはご遠慮願います」 桜林の警備員と共に近付けない様に…… 細心の注意は払われた そんな事より、康太は水着選びに余念がなかった サイズは測って貰った 悩む姿はどの親と変わりなく、神楽四季はそんな康太の姿を微笑ましく見ていた 何とか水着と帽子、水着を入れるバッグを桜林指定のモノを買った 後はデパートに行き、バスタオルとか細々したモノを買う デパートは花菱へと出向いた 出迎えたのは道明寺達也 花菱の社長だった 「康太!よく来てくれました! 今日はどの様なご用命でいらしたのですか?」 「子供がプール始まったかんな……準備に来た」 「解りました! では3階の子供服売り場を閉鎖します 子供服売り場に学校で使うバスタオルとかタオルとかご用意してありますから、時間を気にせずに見ていって下さい」 道明寺自ら案内をして逝く 花菱は生まれ変わった 今では若い世代から年配向け、そしてセレブ指向な方々まで棲み分けして、購入者のハートを掴んで離さないデパートとなっていた 目の保養をさせる空間を作る 今は買えなくて、買いたくなる空間を提供して 本物に触れる事で、素材の良さを知って貰う お洒落な空間には休憩する所も多く作ってあり この空間をデザインしたのは飛鳥井康太だった 社員の意識も向上して、今では飛鳥井康太を見ても逃げ惑う社員などいなかった 道明寺にレクチャーを受けて、必要なモノを買って逝く 榊原は道明寺に「康太に似合う服も幾つか見繕って持ってきて下さい」と、ついでに康太の服も買う算段を付けていた 道明寺は店員を呼び付けて 「康太様に似合う服を御用意して下さい」と指示した すると店員は深々と頭を下げて 「只今見繕って参ります」と言い、その場を後にした 榊原はご機嫌だった 康太は子供達の水泳の準備が出来て、一安心だった 榊原は「子供達の私服も買って行きますか?」と尋ねた 「おー!良いな! なら和希と和馬と北斗にも買って逝こうぜ! 慎一、皆の服、見繕って着てくれよ」 と頼んだ 「烈の服もですか?」 「おー!瑛智や美智留、匠のも見繕ってやってくれよ! 今度持っていくつもりだかんな!」 「解りました!では探して来ます」 そう言い慎一はデパートの中へと消えた 慎一は買い物が上手い 普段着を探させたら安くて、動きやすくて色や形も良いモノを探してくる 値段じゃない 機能性を重視した造りを選ぶのだ 康太は水泳の準備が終わると、道明寺に出されたお茶を飲んでいた そして……ふと思い付いた 「そう言えば……うちの子は泳げるのか?」 水遊びなら何度もさせた 本格的に泳げるのかは……解らなかった 榊原は「大丈夫でしょ?」と妻を安心させる言葉を贈った 康太は本格的に水泳が始まる前に 「………スイミングスクールに入れるか?」と思案した 「康太、翔は日々の修行で遊ぶ時間もないのです それに塾やスイミングスクールを増やしたら…… 本当に子供らしい時間はなくなります 解りました! 僕が子供達をプールに連れて行きます そして子供達と遊びながら泳ぎを教えます」 父の愛だった 康太は厳しい母で良い でも優しく愛して包み込む人間もいなければ…… 子供達は逃げ場はなくなる 榊原は子供達を護る壁になろうと決めていた 「……伊織……」 「君もプールに行きなさい」 「………え?……」 「カッコイイ僕が裸体を晒すのですよ? 君は傍で見守っていなくて良いのですか?」 榊原は康太にウィンクを送った 康太は榊原を見て笑った 「それは見張ってねぇとな」 「でしょ?」 慎一が子供達の服を買って戻ってくると、康太は立ち上がった 「道明寺、今日は本当に助かった」 「いいえ!貴方のお役に立てるなら、私は出来る限りのことをして貴方をお助け致します」 道明寺は康太の手を取ると、手の甲に口吻けを落とした 「ならオレも出来る限りのことをしてやんよ! お前が今交際している女性の後見人になってやんよ! そしたら誰も何も言わねぇだろ? 彼女が道明寺の子を産む その子が花菱の頂点に立つ! これは総て決められし理だ その時が来ただけの事だ………だから腹を括れ! 全身全霊懸けて護ると誓え!」 道明寺は驚愕の瞳を康太に向けて……… そしてホッとした息を吐き出して笑った 「………心の何処かで……貴方に逢って背中を押されたいと想っていたのですね……」と呟いた 一族の決めた縁談を断った 自分には心に決めた人がいたからだ……… でも彼女は……ごく一般の人で……… 結婚して下さい……とは言葉に出来なかった 反対されても結婚する覚悟ならあった だが……自分と結婚する事によって……… 変わってしまう生活環境に……彼女は躊躇するだろう ならば……このまま……何も言わずにおこうか…… 道明寺は悩んでいた 「お前の彼女は龍ヶ崎すみれの所へ行儀見習いに逝かせろ!」 「………え?龍ヶ崎すみれ様の所に御座いますか?」 「そう。誰にも文句を言わせねぇためについてな 行儀作法や諸々、すみれも花嫁修業してるからな 一緒に覚えて逝けば一石二鳥ってヤツだ!」 康太が話すと慎一が道明寺に名刺を渡した 「これは?」 「すみれ様の連絡先に御座います 彼女の方に渡して、連絡を取らせて下さい」 慎一が説明すると、道明寺は「解りました」と覚悟を決めた 康太は道明寺の頭を撫でた まるで子供にするみたいに…… 頭を撫でられて、道明寺は康太を見た 「人はな、愛のねぇ生活では花は咲かせられねぇんだ 綺麗な花を咲かせてぇと想うのなら、日々の愛情を注げる奴を選ばねぇとな! 愛は日々、手間暇掛けて育てて逝かねぇと萎れて枯れてしまうんだよ! その愛を枯らすのも、綺麗な花を咲かせるのも…… 道明寺、おめぇ次第って事だ 愛のねぇ政略結婚じゃ、花も咲かねぇし…… 愛も育たねぇ……痩せた土地では何も育てねぇ 解ってて………荒廃した日々に飛び込む程、莫迦じゃねぇだろ? なら、自分の愛は自分で護らねぇとな」 子供に言うみたいに、頭を撫でられて言われる 道明寺は何だか泣きたくなった 鼻の奥がツンッとして………涙腺が緩む 知らず知らずのうちに道明寺は泣いていた 人前で泣いた事なんてないのに…… 「お前の心は答えを既に出してる なのに動けねぇのは……苦労を背負わせる事になるからだろ? 彼女は喜んでお前の背負っている荷物を持ってくれるさ 二人で枯れない愛を育んで逝ってくれるさ 愛し合い助け合って日々を過ごす両親を見て育った子は正しき目を持ち、先を見て逝く道標となる これも総て決められし理だ道明寺」 「………康太様……私は貴方に背中を押して欲しかったのかも知れません…… この先……何があって信じて生きて逝ける言葉が欲しかったのかも知れません……」 「おめぇは大丈夫だ! 何があっても、この先最強の伴侶を得て生きて逝ける!」 「康太様……」 道明寺は康太に縋り付いて泣いた 心の澱が体内から出て逝くみたいに…… 涙は道明寺の決意を新たにさせた そして康太から離れた時に見せた顔は…… 清々しく決意を見せていた 道明寺は立ち上がると深々と頭を下げた 康太はそんな道明寺の肩を叩いて 「世話になったな道明寺」と言い離れた 荷物を台車に乗せて駐車場へと運び込み 康太達はデパートを後にした 道明寺は榊原の車が見えなくなるまで…… 頭を下げていた そして顔を上げると、動き出した 飛鳥井の家に還ると、清四朗と真矢が遊びに来ていた 家にいた一生が二人を招き入れていた 応接間に運び込まれる物凄い服の紙袋…… 清四朗と真矢は唖然として見ていた 清四朗は「……物凄い買い物ですね」と尋ねた 榊原は荷物を総て応接間に運び込むと、康太を膝の上に乗せて笑って 「子供のプールが始まるのですよ」と説明した 真矢は「この荷物、プール用品だけじゃないでしょ?」と問い掛けた 「ええ。子供達の服と康太の服も買いました!」 榊原はニコニコとして答えていた 康太は「うちにプール作っとくべきだったな……」と呟いた 清四朗は「プール……ですか?」と問い掛けた 「おー!うちの子は泳げるか……不安なんだよ」 「康太は泳げるのですか?」 清四朗はそう言えば、泳げる康太というのが想像出来なかった それに答えのは一生だった 「康太は全日本にいてもおかしくねぇ泳ぎだぜ!」 真矢と清四朗は「ええええ!!!」と驚いた 「桜林の教師が何時も選手になれって付きまとっていた それ程に康太は驚異的に早ぇんだよ!」 榊原は選抜競泳の時の康太を思い浮かべていた 黄金色の肌に競泳水着を着た康太は誰にも見せたくない程に……輝いていた 隠してしまおうか…… ずっと思案していたから……泳ぎは…… 見ていなかった 清四朗は夢見がちな息子は放っておいて 「ならば、私がプールに連れて行きましょう ………いや、庭にプール作りますか?真矢」 「そうね!庭はとにかく広いからねプールの一つ位作れるんじゃないの?」 真矢もその気でそう言った 「駄目だ義父さん 庭を触るのは駄目だ」 盛り上がる清四朗と真矢を止めたのは康太だった 清四朗は「……え?……」と唖然とした 「清四朗さんの家の廻りに木々が多いのは伊達に植わっている訳じゃねぇんだ 風水を取り入れて、死する時まで役者でいられる様に……伸びて逝ける運気を引き込ませている だから庭に触っちゃ駄目なんだ」 康太が言うと清四朗と真矢は驚いた顔をしていた 康太の愛だった 役者ばかりいる家に相応しい運気を詠んで作った家だった 康太は「飛鳥井記念病院の下に会員制のスイミングスクールがあるんだよ あそこのプールは温水プールだかんな通わせようと想っているんだ あそこは許可された会員制のプールだかんな、会員じゃないのは入れねぇからな そこに行こうと想っている…… あのビルの屋上では夏にはビアガーデンが開始されますよ清四朗さん」 ビアガーデンの言葉に清四朗は瞳を輝かせた 夏の間は昼間はカフェで、夜はビアガーデンが運営されていた 総て予約制で、会員制だった 康太は「今年は皆で行きましょう!」と嬉しそうに言った そして我が子を想う 「………泳げるかな……」 榊原は康太を抱き寄せた 「大丈夫です! 君と僕の子です! 見事に泳いでくれますよ!」 誇らしい父の顔をしていた すっかり父の顔をする息子が、清四朗も真矢も誇らしかった やって来る夏に胸躍らせながら 康太は夏の楽しみを思い浮かべた 「夏休みは白馬に逝くだろ? 今年は海にも連れて行くか?」 「なら昼は泳げて、夜は花火大会を楽しめる場所 探して予約を入れておきます そしたら皆で逝きましょう!」 「だな!」 ワクワクする夏に清四朗も奮い立つ 「ならば、皆を連れて行ける位、稼ぎます! 真矢、まだまだ私は頑張ります!」 真矢は笑って夫を見て 「なら私も頑張らないとね まだまだ健在だとアピールせねばなりませんね!」 と笑って答えた まさか……子供達はプール開きがこんな大事に発展しているとは想ってもいなかっただろう 夏はまだ始まったばかり 今年の夏は どんな夏になるのか ワクワク心が踊った 【水泳練習】 プールが始まる ………とお知らせが来ると、両親はその準備に余念がなかった 準備が全部終わると、何故か…… 近くのプールへと通うと……とぅちゃが言った そのプールにはじぃたん清四朗とばぁたん真矢も一緒に付いてきていた プールに入る前の準備体操 一列に並んで体操をする かぁちゃは「手足は特に念入りにしとけよ!」と言うから、特に念入りに手足をブルブルやった 音弥は……逃げたかった なのに……真矢がガッチリ掴んで離さなかった 「逃げようなんて100年早いわよ音弥」 「………ばぁたん……きょわい……」 「怖くなんてないわよ!」 ズンズン音弥を連れて歩く その肢体はまだまだ、その場にいる老若男女が見取れる程に美しかった ボンッと飛び出た胸 括れた腰 すらっと伸びた脚 真矢は歳を感じさせない美しさを放ち、気高く咲き誇っていた もっとも……本人は無自覚で、祖母として孫といられる時間を満喫していただけだが…… 清四朗も負けてられないと、太陽と大空を掴んで離さなかった 「「じぃたん……きょわい……」」 「私が怖い?なら悪役も頑張ろうかな」 ふふふ……と笑って清四朗は嬉しそう 太陽と大空は……「「らめら……きょれは…」」と諦めた 流生は康太といた 翔は榊原といた 翔は修業の一環で泳ぎは既にマスターしていた 流生はそんな翔と一緒にいるから、そこそこ泳げた 「ぎゃー!!!ばぁたん!!ふきゃい!!」 音弥の悲鳴が聞こえる 「大丈夫よ!音弥!」 真矢の無邪気な声がする 流生は康太を見た 「大丈夫だ流生……」 「「らめっ……じぃたん……!!」」 太陽と大空の悲鳴も響いた 流生はジーッと康太を見た 康太はジーッと榊原を見た 榊原は………仕方なく両親の方へ行った 「父さん 母さん トラウマになるので無理強いは困ります」 真矢は榊原に水を飛ばした 「伊織、邪魔です」 清四朗はうんうん!と頷いた 榊原は呆気なく撃沈…… 康太の傍へと戻った 真矢は孫との時間を噛み締めて想う 笙は初めての子と言うだけあって手を掛けて育てた あの子とはプールも行った でも………伊織とは……何処へも行ってない 自分に似た笙といるのは気が楽で…… 何処かで気難しい伊織を避けていたのだ こうして……孫と過ごせば過ごす程に…… その現実が見えて来る この時間が大切だった 孫と過ごす時間……だけじゃない 我が子ともいられる時間だった 真矢は音弥に泳ぎを教えていた 音弥は真矢の教える事を柔軟に吸収して、泳ぎ出す 真矢は嬉しかった 大空がビート板を使って真矢の方に来た 「ばぁたん……うみゃい?」 バシャバシャ足を動かし、大空は泳ぐ 真矢は顔をくしゃくしゃにして笑った 「上手よ大空!」 榊原の子供の時にそっくりな子…… 真矢は大空の頭を撫でた 「ほら音弥もバシャバシャやりなさい」 音弥もビート板に掴まりバシャバシャした 「上手よ音弥! 大空も凄いわ!」 また一つ成長する過程を見た こうして一つずつ成長して逝く 子供達のそんな成長を見逃したくないと想っていた 翔と流生はビート板なしても泳いでいた この二人は……『特別』なのだ だが兄弟はそれを羨むより、自分に出来る最大限の努力をする 偉いと想った なんとか泳ぎも様になり、プール開きに間に合って 康太は胸をなで下ろした 「康太……帰りはファミレスに行きますか?」 最近飛鳥井はワゴン車を二台購入した 「だな……でも腹も膨れると眠くなっちまうかな……」 「寝てても構いません 僕の愛で目醒まさせますから」 榊原はそう言い笑った その笑顔は、憎らしい程に男前だった 二人の世界を破るように康太の携帯がけたたましく鳴った 康太は電話をに出た 「何よ?」 『お前、今どこよ?』 「オレは飛鳥井の病院の下のプール」 『これから時間ある?』 「飯食わせろ!」 『腹減りか、なら何時ものファミレスで待ってんよ!』 そう言い電話は切れた 「伊織、食いに行くなら何時ものファミレスにしてくれ!」 「解りました!では行きますか」 飛鳥井の家まで歩いて行き、ワゴン車に子供達と清四朗と真矢を乗せた 榊原はベンツに康太を乗せて、何時ものファミレスへと向かった 何時ものファミレスに着くと、車を降りた 駐車場に兵藤の車が停まっているのを確かめてから 子供達と手を繋いでファミレスの中へと入った 席を案内しようとする店員に 「連れが先に来てると想うんだけど?」と告げた すると店員は店の奥へと案内した 案内された席には兵藤が座っていた 「何か用か?」 康太は兵藤の隣の席にドサッと座った 「来月海に行かねぇ?」 兵藤は早速切り出した 「………理由は?」 理由は康太の耳元で、康太にしか聞こえない声で話した 「…………子供達も連れてっていい?」 「おー!飛鳥井の家族全員大丈夫だ! 清四朗さんや真矢さんや笙さん親子もどうぞ!」 と言い小声で 「やらねぇとならねぇ事はして貰うけどな」と付け加えた 「オレの家族に危害を加えねぇならな……やってやんよ!」 康太はそう言い皮肉に唇の端を吊り上げて嗤った 「伊織、来月は沖縄で海水浴三昧で過ごそうぜ! 好きなだけ滞在できるコテージを借りれるらしいからな」 「それは素敵ですね 僕と康太のコテージは二人だけにしてくれるなら逝っても良いです」 榊原が言うと兵藤は「そう言うと想っているから安心しろ!」と答えた 兵藤の返答を聞き榊原は和やかに笑った 「父さん 母さん 一緒に逝きましょう 多分………一般の人間は入れない領域の海水浴なんて中々出来ませんよ?」 榊原が言うと清四朗は「それは良いな」と乗った 真矢も「なら新しい水着買わなくちゃね」と楽しげに言った 「なら母ちゃん達も誘って逝くとするか!」 康太が言うと流生が「どきょ いくにょ?」と問い掛けた 「海に行くんだよ!」 「うみ?」 「そうだ!海水浴に逝こうぜ!」 「りゅーちゃ おにゅーにょみじゅぎ かうにょ!」 「お!良いぞ!買ってやんよ」 康太はそう言い笑った 兵藤は「一生はどうしたのよ?」と、その場にいない存在の事を問い掛けた 「一生はオレの用で出掛けてる」 「…………お前……用?」 「そう……一生と聡一郎は今 掴まらねぇと想うぞ?」 「海には?逝けるのか?」 「大丈夫だろ?それまでには還ると想う」 「………そっか……」 兵藤は子供達に視線を落とし 「海に行こうな」と声を掛けた 流生は「ひょーろーきゅん いっちょにゃにょ?」と問い掛けた 「おー!一緒に行こうな」 流生は「ちょれ!うれちぃ!」と笑った 音弥も「ひょーろーきゅん あちょぼうね!」と誘った 「おー!ボート膨らませて乗せてやんよ」 「ちょれ!うちれぃきゃも」 流生が言うと太陽も「ひょーろーきゅん たのちぃね」と笑っていた 大空は面倒臭さそうに…… 翔は兵藤をジーッと視ていた 康太は「泊まりならオレんちの犬は……連れてっていいのかよ?」とコオ達の心配をした 「犬も一緒に移動すれば良い 当日は空港までバスが出る 犬達は一日早く車で移動となるけどな」 「なら安心だな 笙達も構わねぇか?」 「連れて逝きてぇ奴は事前に言っといてくれ 名前と顔の資料を送らねぇとならねぇからな」 「まぁ増えるって言っても神野と小鳥遊位かな」 「………アイツ等がマスコミさえ連れて来なければ歓迎だ」 「大丈夫だろ?一緒に白馬に何度も逝ってるが来たマスコミはいねぇよ!」 「………少し神経質になるのは……許せ……」 康太は「解ってる」と言おうとすると それよりも早く翔が「かぁちゃ わかっちぇりゅ」と答えた 兵藤は翔の頭を撫でた 「そっか……翔もおニューの水着で逝くのか?」 「かけゆ にゃきゃみれ ちょーぶ!」 その言葉に兵藤は笑った 「そうだぜ!男は中身で勝負だ! うしうし!お前は本当に男前だな」 兵藤は楽しそうだった 子供達は兵藤に抱き着いた 流生が「ひょーろーきゅん」と呼ぶと 音弥が「じゅっちょ いっちょにゃにょね!」と笑った 太陽が「いっちょらと うれちぃにょね!」と甘え 大空が頷いた 翔が「ひょーろーきゅん ちょいねちて!」と甘えた 「おー!一緒に寝ような!」 心躍る夏が近付いていた 忘れられない夏にしてやりたかった 夏は…… すぐそこまで来ていた

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