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第24話 優しい時間

子供達は添い寝をしてくれる両親と一緒に眠った ずっと傍にいてくれる両親が嬉しかった だが……心の何処かで、目が醒めたら…… いなくなってるんじゃいかって想っていた 案の定 目が醒めた時、とぅちゃもかぁちゃも傍にはいなかった 起こしに来た慎一に「とぅちゃとかぁちゃは?」と問い掛けると…… 困った顔をされた それで「やっぱり……」と想った 流生は「まちゃ……るちゅばんだ……」と呟いた 翔は流生に抱き着いて背中を撫でた 「ゆきゃにゃきゃ にゃらにゃいんらよ」 「………わかっちぇりゅ……かけゆ…」 大人びた顔をして流生が言う 慎一はやるせなくなった 康太の子供は時々 和希や和真や北斗よりも大人びた顔をする時がある 全部知っている顔をする…… 慎一はそんな子供達が哀しかった 子供の時を…… 通り越して逝かなくて良い…… 音弥は「るちゅばん ちなきゃね」と諦めて言った 太陽は「じぇんぶ ぼきゅたちのためらからね」と大人びた顔をした そう言う顔は笙に酷似していた 大空は「ちかたにゃい ……」と寂しそうに言う そんな諦めを秘めた顔は榊原に酷似していた 子供達は諦めて起きると歯を磨き顔を洗った 自分で出来る事はなるだけ自分でやる 「にーにー」 烈が起きると、弟の面倒も見る 流生は「れちゅ おきちゃにょ?」と淋しい思いをさせない様に傍に行く 音弥は烈を抱きしめた 翔も烈の傍へと逝った 「れちゅ ぎょはんたべゆよ」 烈はにーに達の顔を見てご機嫌だった 慎一は烈を着替えさせて抱き上げると 「下へ降りますよ」と子供達に言った 子供達は下へと降りて逝った もう階段も一人で上り下り出来ていた 幼稚舎に通う様になって康太の子供達は逞しくなった 皆で食卓に着く 最近は烈も一人で食べれる様になってきた 「ちんいちきゅん りゅーちゃ みるきゅ ほちい」 慎一は一生は牛乳は飲めないのに、流生は牛乳好きだから、そんな所は親子でも違うんだなと想った 流生は「かぁちゃ みるきゅ ちゅきなんらよね」と嬉しそうに言った 音弥も「おとたんもみるきゅ!」と催促した 康太は背が高くなりたくて今でも牛乳を飲む それを子供達は知っていて、牛乳が好きなんだと勘違いしていた 翔も太陽も大空も牛乳を欲しいと言った 瑛太はそんな朝の光景を見て笑っていた 「康太は背が高くなりたくて飲んでましたね」 瑛太は……今は留守の弟を想い言葉にした 「………瑛兄さん……子供達は憶えるので……」 「そうでしたね! 毎朝 牛乳を飲んでる母さんを見て育ったんですものね……」 親の裏事情はなんのその 逞しく育っていた 瑛太は翔を見た 自分の子だけど…… この子は康太の子として生きていた 母を愛し 父を愛し 曲がらずに育っていた 『かけゆ ちゅなぎゃっちぇるの わかりゅ』 と翔は瑛太に言った あの瞳は総て知っているのだ 知っていて翔は飛鳥井康太の子として生きているのだ 他の子にしても…… 薄々は解っているのだろう 賢い子達だ 知らない筈などない 瑛太は六人の子を見守って逝くと決めていた どの子も変わらず愛すと決めていた 翔は瑛太に瞳を向けて、ニコッと笑った 「えいちゃ ちゃみちぎゃりらもんね」 翔が言うと玲香が爆笑した 「翔、そう痛い所を突いてやるな」 「らめ?」 「叔父さんは労ってやらねばな」 「かけゆ えいちゃ いたわっちぇる!」 「そうか……翔は偉いな……」 「かけゆ とぅちゃとかぁちゃのきょらもん」 玲香は痛む胸を抑えつつ笑顔を作った 「お主は伊織と康太の子だ よく似ておるぞ、お主は……」 「れも かけゆにょほうがおちょこまえ!」 玲香は爆笑した 瑛太は翔のお口を摘まんだ 「飛鳥井で一番男前なのは私です!」 そう言い笑った 翔は「ちょってりゃ!」と言った 瑛太は翔をこそばかした 背負ってりゃ………何処で覚えたんだ? 「らめ……らめらって……」 翔はこそばかされ苦しそうに言った 京香が翔を助け出した 「大人げないぞ瑛太……」 京香が言うと瑛太はすねた顔をした 「………愛する夫にそんな事を言いますか?」 「………!……翔が苦しそうだったから……」 京香は翔を離すと瑛太に謝った 流生が「ふうふぎぇんきゃは いにゅもきゅわにゃい!」と揶揄した 瑛太は「君達、その言葉……何処で覚えるのですか?」と思わず聞いた その問いに黙っていた大空が答えた 「きゃにゃたち まいにちテレビみちぇりゅ! ちきゃも じらいげき みちぇりゅにょ!」 とネタバレした 玲香は慎一を見た 慎一は「飛鳥井の方々は源右衛門を含め、皆様時代劇がお好きな様なので、今から洗脳しています」と笑って答えた 玲香は言葉もなかった 清隆は「父さんも喜びますね」と今は亡き父を想った 「源右衛門秘蔵のDVDがあります 榊 清四郎さんの作品が結構多くて、良い機会なので見せてます」 子を思う……愛だった 源右衛門は何時も我が子や家族、そして康太の仲間を愛していた 清隆は慎一の想いが嬉しかった 「慎一 今度……私にも源右衛門秘蔵のDVDを見せて下さい」 「はい!何時でも言ってください」 孫達と源右衛門秘蔵のDVDを見れる日が来るなんて…… 清隆は幸せを噛み締めていた 流生は「じぃちゃとばぁちゃとみりゅにょ!」と清隆のお膝に顔をすり寄せて甘えた 「流生、今日はじぃちゃんと幼稚舎に一緒に逝くかい?」 遅刻覚悟で清隆は流生に問いかけた 流生は嬉しそうに「あい!」と返事した 清隆は「そう言う事なので瑛太、後は頼みました」としれっと言うと瑛太は悔しそうに 「なら明日は私が子供達と共に幼稚舎に逝きます」と言った すると玲香も便乗して 「なら我は明後日でよわいな」 と、ちゃっかり算段した 子供達はじぃちゃんとばぁちゃんと瑛太が日替わりで着いてきてくれると言うから大喜びだった 康太と榊原のいない日々 飛鳥井の家族は子供達の寂しさを埋める為に、役得しようと躍起になった 幼稚舎に楽しそうに逝く姿を仕事に行く途中で見つけた清四郎が、仕事が終わると飛鳥井に逝き理由を知ると ちゃっかり参加したのは言うまでもない 真矢も笙も参加して、美緒も玲香と共に逝き そうそうたる人間が幼稚舎に来る様は…… 先生達の間でも話題になっていた

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