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第27話 解るかな?

康太が還って来た だが……一生は康太と一緒に還って来なかった 「お帰りなさい……康太」 仕事から還って来た力哉は応接間にいる康太を見つけて声をかけた そして辺りを見渡し一生を探した 一生は康太と共に何処かへ出掛けた 電話もメールも届かない所へ逝く……と一生は言った 『ちゃんと……僕の所へ還って来てね』 『あぁ!ちゃんと還って来るから待っててくれ』 一生に謂われたから待ってた 日々一生の無事を願いながら待ってた 康太が還って来れば一生も一緒に還って来るって想っていた なのに………一生は何処にもいなかった 応接間から出て逝こうとすると康太が 「力哉、座れよ」と声をかけた 力哉はソファーに座った 康太は胸ポケットからゴムで出来た様な赤いヒモを取り出した 赤いヒモの様なモノは康太の掌で伸びをしてニョロニョロと動いた 鎌首を擡げ赤いヒモは康太の手に擦り寄った 「体躯、痛くねぇか?」 康太が声をかけるとニョロニョロ元気アピールする 康太は赤いヒモの様なモノの頭を撫でた 「力哉」 「はい!」 「お前にやんよ!」 康太はそう言い赤いヒモの様なモノを乗せたまま……掌を力哉に向けた 「………え?……僕にくれるのですか?」 力哉は赤いヒモの様なモノを受け取った 「可愛いだろ?」 「ええ。本当に可愛い」 「お前のだ!お前のお待ちかねの……大切なモノだろ?」 「…………え?……」 力哉は掌の上の赤いヒモの様なモノを見つめた 力哉を見つめるつぶらな瞳は……見覚えがあった 「………一生……」 力哉は呟いた 康太は兵藤に手を出した 「オレの勝ち」 康太が謂うと兵藤は悔しそうに康太の手の上に一万円札を乗せた ついでに魔界から持ってきた飴も幾つか乗せてやった 康太はそれをお口の中に放り込んだ 「畜生!力哉のせいで俺は一万円奪われた……」 兵藤に難癖言われて力哉は「えええ!何ですか?それ!」と驚いた 「俺は赤い蛇が一生だと解らないに一万円賭けた 康太は解る方に一万円賭けた で、俺の負けと言う訳だ………畜生!」 康太はガハハッと笑って慎一を呼んだ 「慎一」 「何ですか?」 「この軍資金で夕飯のケータリングを頼む」 康太が謂うと兵藤は財布からもう三枚取り出した 「ケータリングなら足らねぇだろうが!」 「大丈夫!瑛兄が出してくれる おめぇの小遣いが減るからな、しまっておけよ! そのうち倍にして返してやるから待ってろ!」 康太はそう言い応接間の入り口を見た 瑛太は笑って「足らない分は出しますとも!」と言い康太を抱き上げた 「お帰り康太」 「瑛兄 ただいま 今還ったんだ! 会社に行こうかと想ったけど、家にいた方が早そうだからな待ってた」 「お前が無事で還って来てくれれば………それだけで良い……」 「瑛兄 オレは元気だ!」 「良かった……」 康太を抱き締める瑛太の腕は震えていた 愛する者を失う……怖さを……瑛太は知っている 幼い康太が誘拐された 永久に亡くすかも………と言う恐怖なら…… 誰よりも味あわされた…… 「………瑛兄……また心配……かけた」 「兄は……お前が生きて……幸せそうに笑っててくれれば……それだけで良いのです」 「瑛兄 オレは幸せだぜ? 家族や仲間…そして伊織がいてくれれば……幸せだ」 瑛太は笑って康太は離した 「慎一、支払いの時は呼んで下さい 足らない分は私が支払います ですから康太の好きそうなのを沢山お願いします あ、伊織、清四朗さん達を呼んで下さいね 私は着替えてきます」 瑛太はそう言い応接間を出て逝った 榊原はソファーに座ろうとする康太を膝の上に乗せて、頬に口吻けを落とした 赤いのは嬉しそうに力哉の掌に乗っていた 「力哉、赤いのに果物を食わせてやれよ」 「………え?果物……食べるの?」 「基本何でも食べるぜ 一生の嫌いな……ラッキョウ以外はな」 「………え?蛇になっても……ラッキョウ駄目なの?」 「だろ?食えねぇよな赤いの」 康太が謂うと赤いのは 「ラッキョウなんて食わせたら龍になってこの家壊してやる!」と喋った 一生の声だった 康太は爆笑して「食わせねぇよ!この家、建てたばっかしだかんな!」と言った 「一生………喋れるの?」 「康太と貴史が賭をしていたんだよ 賭の勝敗がつく前に喋ったら伸ばされちまうからな……」 一生は蛇の体躯をプルッと震わせて言った 「伸ばされる………って?」 力哉には解らなくて問い質した すると一生じゃなく康太が答えた 「ゴム紐みてぇに伸ばしてグルグル振り回してやるって言ったんだよ!」 そう言い振り回すフリをした 慎一が力哉の前に果物を置いた 「……え?何?」 「一生に食わせてやれよ」 「良いの?」 「ナイフも用意してあるからな切って食わしてやれよ その為だけに蛇の姿で連れて還ったんだからよぉ!」 康太はそう言い楽しそうに笑った 力哉は心配して…… 「一生……ずっとこの姿なの?」と問い掛けた 「お前がキスすれば元に戻る そう言う風に弥勒が呪文をかけといてくれた」 康太の言葉に力哉は胸をなで下ろした 果物を小さく切って力哉は赤い蛇のお口に入れてやった 赤い蛇は美味しそうに果物を食べていた モグモグ頬を一杯にして食べる姿は本当に可愛かった 力哉はその可愛さに胸が一杯になった 果物を食べると力哉は赤い蛇のお口にキスを落とした すると蛇の姿が……… みるみるうちに一生に変わった 力哉は一生に抱き着いた 「お帰り一生」 一生は力哉を抱き締めて 「ただいま力哉」と言い強く抱きしめた 「可愛かったな赤い蛇」 力哉が嬉しそうに言う 「美味しかった果物 でも蛇の体躯には満腹でも人間に戻れば空腹だ……」 一生の言い分に力哉は笑った 笑って一生の無事を確かめた 「………ありがとう……還って来てくれて……」 「俺が還れなくなったら……お前を連れに来るさ」 一生が謂うと力哉は涙を流した 「………嬉しい……」 ずっと離れない方法を考えてくれる一生の言葉が嬉しかった 兵藤は「………アイツも新婚か……」と揶揄した 康太は「地蔵みてぇな顔してるのにってか?」とその揶揄に乗っかった 榊原は「そんな事は言わないの……力哉を逃せば兄さんに春は来ないのですから……」と現実を告げた 一生は怒った顔して 「んだよ?その言い草は!」唇を尖らせた 「拗ねないで下さい 可愛いだけですよ?」 「………拗ねてねぇし……」 「………だって……朱雀……どう思いますか?」 榊原は肩を竦めて、兵藤に問い掛けた 「あれは拗ねた顔してるな……」とやはり揶揄した 慎一が瑛太を呼んで、ケータリングの支払いをした 榊原は父 清四朗に電話を入れた すると直ぐに逝くと告げた 暫くすると清四朗が真矢と共にやって来た 今宵は宴となる雰囲気だった 人が集まれば宴会に突入するのが飛鳥井の家だった 源右衛門が何時も座っていた席に盃を置いて なみなみに酒を注ぐ 宴会の大好きだった源右衛門を偲ぶ 何時も何時も……源右衛門の声を……思い浮かべながら…… 目が源右衛門のいた席を見る 康太は『護るかんな!じぃちゃん!』と胸で呟く 今も 源右衛門の席には誰も座らない そこに源右衛門が今もいるみたいに…… お酒が注がれる 心の中に……源右衛門はいて…… ガハハッと笑っている 清四朗は源右衛門の盃に乾杯して…… 酒を飲んだ 清隆も玲香も瑛太も…… 源右衛門の盃に乾杯した 康太はその場を見て笑った 力哉は……写メ撮っておけば良かった…… と少しだけ後悔した すると康太は力哉に綺麗な布を手渡した 「部屋に帰って見ろよ!」 康太が言うから部屋に帰って見たら……… 赤い蛇のタペストリーが……そこに在った 力哉はそのタペストリーを胸に抱いて 「康太……ありがとう」と感謝した どんな一生だって大好きだ愛してる 力哉の囁きに 熱い夜になるになったのは言うまでもない

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