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第31話 どこ?

ご主人タカシがいない…… 家のどこにもいない 探して歩く ご主人タカシのお部屋 廊下 応接間 何処にもいない お気に入りのリードを咥えて探す ご主人タカシ……どこ? お散歩してよ 毎朝……連れてってくれたじゃないか いない…… いない…… いない…… 何処にもいない…… ボクは……置いてけぼりにされたのかな? ボクが我が儘言うと ご主人タカシは笑って 「仕方ねぇな」って許してくれた ご主人タカシの好きな人の写真を咥えて逝くと 「この馬鹿犬!」と怒るけど 消して殴ったりしない 笑って許してくれる もう……ご主人タカシの好きな人の写真を…… 勝手に咥えないから…… 出て来てよぉ…… お散歩も……行けなくても我慢する コオやイオリ、ガルに逢いたいって…… 我が儘も言わない だから……ボクを撫でてよ… いない いない いない…… ご主人タカシがいない…… ボクはご主人タカシのベッドの上に寝る ご主人タカシの臭いを嗅ぐ 何時もベッドにもぐり込むと……抱き締めてくれた ボクの優しい……ご主人様 一生に聞いたら解るかな お手伝いさんに頼む 外に出して!と何度も服を引っ張って…… 玄関まで逝く 隙を見て、外に出る そして飛鳥井の家に行く 玄関の前に座って……一生が来るのを待つ 早く来ないかな…… ねぇ……ボクは捨てられたのかな? イオリみたいに…… チャンピオン犬じゃないから? 一生は玄関のドアを開けて外に出ようとした その時……何かに蹴躓いた 「うわぁ!何だよ!」 足下を見ると……… 玄関の前で項垂れている犬を見つけた…… 「……桃……どうしたよ?」 一生が問い掛けると桃太郎は必死で 『ワンワンワン(ねぇねぇ一生) ワワワォンワンワン(ご主人様、知らない?)』 一生は返答に困った 「………桃…」 『ワン……ワワワン……ワ……ワワワン…… (ボクは捨てられたのかな?………)』 鼻水をタラタラ垂らして……涙する犬を…… 一生は抱き締めた 「桃………良く聞け!」 『ワン(はい!)』 「貴史は……怪我して入院してるんだよ」 『……キャインッ……(嘘……)』 「泣くな桃……」 『ワン……ヮォォォン…キャン……ゥゥゥォン (もぉ……ボクなんか…要らない……のかな?)』 「違ぇよ……お前の事、心配していた ご飯食べなくなるから、食べさせてくれって頼まれていたんだよ! 暫く……うちにいるか?」 桃太郎は首をふった 「そっか……貴史を待つか……」 ブンブンと頷いた 「なら、ちゃんと飯は食え! 約束だぞ?」 『ワン!(うん!)』 桃太郎はそう返事すると家に還っていこうとした 一生は桃太郎を持ち上げると 「家まで連れて行ってやるよ」と言った ボクはご主人タカシが還ってくるまで…… 待とうと想う ちゃんとお留守番出来るよ だって……ボクはご主人タカシの犬だもん 哀しい日だって…大丈夫 ボクは……優しく撫でてくれるご主人タカシがいた 待ってれば還ってくる だからボクは待てるよ 桃太郎は兵藤のベッドの上に上った ご主人タカシの臭いに包まれ ボクはお留守番をする事に決めました ボクは強いから大丈夫 鼻から出てるのは…鼻炎だもん 目から出てるのは……汗だもん 大丈夫 ボクは………ちゃんと待てるんだ お留守番出来るんだ

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