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第33話 干からびるぅ~

飛鳥井の応接間にデローンと伸びた犬が3匹…… クーラーを切って窓を開けた途端、伸びるのだ 一生は「………お!!伸びすぎだろうが……」とデローンと伸びたガルを持ち上げた ガルはキュンキュンキュンキュン……一生に訴えていた 『一生……暑すぎるんだよ……』 デローンと伸びきってるのはガルだけじゃない コオやイオリもデローンと伸びきっていた 「………海に行くか?」 海は人が凄い 犬なんて邪魔にされるのをコオもイオリも知っていた 早朝ならともく 昼過ぎに行っても犬は居場所すらない コオとイオリは見向きもしなかった 「………ちゃっかりしやがって! 仕方ねぇな、屋上で水浴びするか!」 一生が言うとコオとイオリはワンワン喜んだ 屋上に行き、小さなプールに水をいれる 飛鳥井の屋上は結構広い 周りを木々を植えて自然を取り入れつつも、ソーラパネルを要所々々設置さてあった その片隅に子供用に小さなプールが作ってあった そのプールにコオとイオリ、そしてガルが入った ホースで水を掛けてやるとワンワン喜んでいた 水に浸かって涼を取った犬たちは元気だった 水浴びしていると子供達が屋上に顔を出した 「かじゅ!」 呼ばれて振り向くと、ちゃっかり水着姿の子供達がいた 「お!お前達水浴びするのかよ?」 一生が問い掛けると子供達は準備体操を始めた 幼稚舎で水泳の時間があるのだ それに合わせて泳ぎを教えにプールに通ったりしたから、もう水は怖くはなかった 準備体操が終わると、子供達はコオとイオリに近寄った 「コオちゃ ちおり!ぎゃるちゃ」 子供達と犬達は仲良しだった 水浴びしていると、何処からかワンワンワン!と言う鳴き声が聞こえた 一生は鳴き声の方へと振り向いた 裏の兵藤んちの桃太郎が鳴いていたのだ 一生は桃太郎を見付けて 「桃!」と名前を呼んだ 兵藤んちは結構大きなプールが庭にあった 兵藤は一生に「来るか?」と声を掛けた 「良いのか?」 「良いぞ!康太も浸かっているからな!」 兵藤が指差す方を見ると康太か水に浸かっていた 一生は速攻、兵藤んちへ向かった 兵藤んちに行くと、兵藤が子供達と一生と犬達を迎え入れてくれた 一生は康太を見付けると 「あんで此処にいるんだよ!」と問い掛けた 康太は水に浸かって 「だって暑いもんよー!」とボヤいた 暑いから……… 一生は言葉もなかった 「寝室から外見てたら貴史見付けたからな プール行っていいか?聞いたんだよ そしたら好きなだけ浸かってろって言ったからな浸かってたんだよ!」 ニカッと嬉しそうに言われれば……なにも言えない 一生は「………犬も良いか?」と問い掛けた 「桃が泳いでる 一緒に入っちまえ!」 兵藤が言うと一生はリードを外した すると嬉しそうにコオ、イオリ、ガルは桃太郎の方へと駆けていった 一緒に泳ぐ 兵藤は「このプールで泳げるのも今年で最後だからな……思う存分泳いで貰った方が本望だと思う」と言葉にした 一生は驚いた顔して兵藤を見た 「………今年で最後?あんでだよ?」 「この家……建て替えるんだよ」 「……建て替え?そんなに経つのか?」 「築40年以上してるんだよ 親父が政治家になった年前に建てた家なんだよ」 「……何時から工事なんだよ? んで…立て替えの間……何処へ逝くんだ?」 「9月半ばには工事に入るだろ? 立て替えの間は………マンションへ移る」 「それって遠いのか?」 「………少しな……」 「何時頃建つんだよ」 「2年後位じゃね?」 「そんなに掛かるのかよ?」 「だよな?康太?」 兵藤は康太に話をふった 康太は水に浸かったまま「だぜ!」と答えた 話をしていると子供達が兵藤に抱き着いて来た 「「「「「ひょーろーきゅん!」」」」」 「お!お前達水着似合ってるじゃねぇかよ?」 「ひょーろーきゅん!」翔が兵藤を呼ぶと 音弥が「ぎゅふ いっちょ いきょ」と兵藤の手を取った 太陽と大空も「いっちょ いきょ!」と言った 「……ぎゅふ?ぎゅふって何よ?」 兵藤は訳が解らなかった 流生が「ぎふゅ いきゅにょいきょ!」と答えた 兵藤は康太を見た 「………ぎゅふって何よ?」 「岐阜だよ貴史! 今年も花火を見に岐阜に逝くんだよ 今年は船の上から花火を見る予定だ」 「………花火なら横浜でも見れるだろ?」 「見れるけど、旅行も兼ねて行くかんな 日頃忙しい清四郎さんや真矢さん達も一緒に行くからな!」 「家族団らんに……俺がいたら悪いだろうが……」 「気にすんな! 一人や二人増えても困らねぇし 昭一郎と美緒も来る予定だからな そしたらお前は留守番って事になるな」 兵藤は一度も聞いてないのに……と怒った 「なら行く! 何で俺が留守番なんだよ!」 「うし!決定だな! 今年の夏は忙しいぜ! 海に連れて行ってくれるんだろ?」 「お!海に連れて行く」 「お前は潮風はダメだからなホテルに留守番だな……」 刺された痕も生々しい傷を持つ兵藤だった 「その話は後でな オレは浮いていてぇんだ」 康太はプカプカ浮いていた ガルが康太を鼻で突っ突いた 「お!ガル元気だな!」 ガルは浮いている康太の体躯の上に乗って、一緒に浮いていた 一生はそれを見て「楽してるじゃねぇかガル」と笑って水を掛けた 「止めッ……一生!」 康太は一生に水を掛け返した 一生は逃げて飛び回っていた その足元にコオとイオリと桃太郎がじゃれ着いていた 「お前ら……干からびそうな顔してたのに……」 生き生きと泳ぐ犬を見つめて一生は言った ガルは『生き返るよぉ一生』とワンワンワンと鳴いた 夏は始まったばかりだった

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