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第36話 想い‥‥
大人達は子供が何も解らないと想って……
心ない事を口にする
『六つ子かと思いきや、顔がバラバラなのね
同じDNAは感じられないね……これだと』
『ねぇねぇ君達の母親は誰なの?』
『養子なのかしら?
だとしたら、真贋の血なんて入ってないって事?』
大人は憶測をすぐに口に出す
そんな時、子供達は揶揄した顔で大人を視る
『君達のお母さんは男だね
男は子供を産めないよ?』
親切に教えてくれる
子供達は知っていた
自分達を育ててくれた京香のお腹が大きくなったのを知っているから……
大きなお腹をしてる人が、お腹が小さくなると子供を抱っこして幸せそうに笑っている
美智瑠の母親も、飛鳥井の秘書たちも……
たかが四歳しか生きてないけど、知っていた
だが子供達は知っているから、康太と榊原の愛を疑わない
この人たちは自分達の両親だ……と信じて疑わない
「かぁちゃ も とぅちゃ あいちてるもん」
流生はそんな時、何時も口にする
両親を愛してると口にする
太陽も「あちゅきゃいのきょ らもん」と口にする
自分達は飛鳥井の家の子だと口にする
それ以外にはなれないのを知っているから口にする
音弥は楽観的に「おとたん とぅちゃ かぁちゃ にょきょ!」と笑って言う
翔は何も言わず、そんな事を言う奴を侮蔑した瞳で視る
小さくとも飛鳥井家真贋の瞳に………人々は逃げ出す
大空はそんな大人を「おろきゃ……」と嗤う
血は繋がらずとも飛鳥井康太の子だった
榊原伊織の子だった
誰が何を言おうとも揺るがない自信があった
多分……自分達は両親の本当の子ではないだろう……
お節介に教えてくれる大人達の言う事は本当なのだろう
だが、それがどうした!
そんなのは些細な事だ
榊原は子供達によく言う
「僕達家族は血ではない、魂が繋がった親子なのです
君は僕達の大切な息子です。愛してます。」
惜しみもなく与えてもらう愛に疑問など抱く暇はない
母は不器用で大雑把な人だけど、子供達を愛して護る為に生きているのは解る
その大きな背中に護られて生きている
子供達は想う
何時か………
護られるばかりじゃなくて、護ってあげるから……と。
惜しみなく与えられる愛に報いようと子供達は生きる
誰に何を言われても
両親の愛を知っているから大丈夫
「りゅーちゃ ちってる!
らから、らいじょうぶ!」
流生の口癖だった
その台詞に一生はギクッとなり、榊原と康太は嬉しそうに笑うのだ
最近 流生は助けてくれる一生の手を、やんわり断る
「らいじょうび!」
そう言い何でも自分でやろうとする
そして歩く時は榊原の手を取り、一生とは距離を置く
「りゅーちゃ とぅちゃ にちぇる!」
榊原の頬にスリスリして言う
榊原は嬉しそうに笑って流生を抱き締める
そして言うのだ
「似てるなら気を付けないといけませんね!
康太は僕の奥さんですから、君にはあげませんよ!」
「かぁちゃ りゅーちゃにょ!」
何かと競い合い、ムキなる
そんな微笑ましい親子喧嘩に発展する
そんな榊原と流生を見て、音弥も参戦
「かぁちゃ おとたんにょ!」
大空も榊原と同じ顔して参戦
「かぁちゃ きゃにゃの!」
太陽はちゃっかり康太に抱き着き「ちなの、らもん」とニッコリ
翔が太陽に「かぁちゃ みんなにょ!」と言い、榊原に睨みを効かせてお仕舞いにしようとする
榊原は仕方なく折れて
「みんなで仲良くしましょう!」
と言い一番に康太を抱き締めた
子供達も負けずと康太に抱き着いた
康太はみんなに抱き着かれ
「おい……あんだよ?急に?」と笑いつつも受け止める
これが、僕達の両親です
そんな想いを込めて子供達は両親に抱き着いた
康太は翔の手を掴み、五人を抱き締めた
大丈夫
僕達は明日の飛鳥井を築く存在なのだから……
流生は鏡を視る
誰が教えなくても……その顔を視れば解る
音弥も鏡を視る
何となく……誰に似てるかは知っている
太陽と大空は鏡を視る前に血が親をかぎ分ける
あぁ……この人は……
認めたくなくて……距離も取った
でも……抗えないのが【 血 】なのだ
翔も言われなくても自分が誰の血を引いているか知っていた
瑛太と京香を視た時に……その映像が視れた
親の想いも知っている
小さいけれど翔は飛鳥井康太を継ぐ者なのだ
そして受け入れる
拒絶しても苦しいだけだから、受け入れる
そしたら案外楽になった
親は変わらない
自分達の親は飛鳥井康太と榊原伊織
そう思ったら案外楽に乗り越えられた
勿論、太陽と大空も……繋がる血は感じ取っていた
そして感じる
真矢の慈愛に満ちた瞳に限りない愛を感じて……
血をかぎ分ける
だが真矢はどの子も同じ愛を与えて区別は着けない
清四郎と同じだ
だから……この人達の傍にいても大丈夫だ
と想い、懐く
【 血 】は何よりも濃く
己のDNAを示す
魂の絆は血よりも濃く
繋がろうと日々努力する
なろうとするんじゃない
なりたい自分を生きるのだ
両親の子として生きるのだ
覚悟にも似た想いだった
らから、らいじょうぶ!
間違えなければ大丈夫
まじないの言葉は子供達の芯に打ち込まれ
日々を生きる
足掻いて
藻掻いて
でも絶対の愛の前に、真実なんて意味をなさないのを知る
絶対の信頼
絶対の愛情
見失わない様に生きなきゃ……
この瞳で視て行かなきゃ……
だから僕達は大丈夫
明日を生きる飛鳥井の礎になるだから……
五人は円陣を組んで手を重ねた
最近視た映画のワンシーンがお気に入り
そして流生が闘魂注入
「ぎゃんびゃるじょ!」
「「「「「おー!」」」」」
それを康太は見て、一生を見る
一生は「見んな!」とボヤいた
「高校時代さ、何かにつけてやってたよな?」
ミッションを始める前に円陣を組んで闘魂注入
「……気にすんな康太……」
それしか言えない
「一生」
「なんだよ?」
「もう少ししたら流生は自然にお前の傍へと寄るだろう……後少し待ってやれ」
「別に気にしちゃいねぇよ!」
「大丈夫、流生は知っている」
何を?……とは怖くて聞けない
「………そうか……でも何を知っていようが関係ねぇよ!
俺はお前の子供を全員愛すって決めてんだ
そして俺の子の北斗を愛して育てるって誓ったからな!大丈夫だ!俺は間違わない!」
やはり親子だ
言う事は殆ど同じ
隼人は暑苦しい子供達を見て
「………暑苦しいのだ」と口にした
それを聞いて音弥は「おとたん キック!」と言い隼人を蹴り飛ばした
隼人はブチッと切れ、音弥を羽交い締めにした
「オレ様を蹴るとか、百年早いのだ!」
締め上げられ音弥は「ぎぶ!」と一生に助けを求める
一生は「止めろよ隼人」と音弥を救出した
「生意気なのだ!」
隼人が言うと、音弥も
「はやちょもにゃ!」と返した
隼人は燃え上がり、音弥も燃え上がった
それを止めるのは慎一
「ダメですよ怪我したら伊織に叱られますよ」と止めた
日頃大人しい榊原は怒ると怖い
二人は仕方なく諦めた
それを見ていた瑛太はクスッと笑って珈琲を飲んだ
その横に翔は座って緑茶を啜っていた
瑛太はそれを見て「………子供に緑茶って……大丈夫なのですか?」と慎一に問い掛けた
慎一は呆れ顔で「大丈夫です。翔は哺乳瓶でミルクを飲むのが嫌いで沢庵をしゃぶって育った子ですから……」と離乳食が始まる前に沢庵をしゃぶっていた頃を思い出し口にした
瑛太は「子供はミルクを飲みなさい」とボヤくと
「えいちゃ こーちぃ みるきゅと、おちゃとぉーいれにゃいとおきょられるにょ!」
とブラックで飲んでるのを慎一に知らせる
慎一は瑛太の飲み物を覗いた
そして奪うとミルクと砂糖を入れて瑛太に渡した
「……翔……恨みますよ!」
「えいちゃ けんきょー きをちゅけるにょ!」
そう言い椅子から立ちあがり瑛太の肩をポンッと叩いた
「……康太の子供の時みたいに腹が立ちます」
瑛太は怒っていた
慎一は「瑛兄さんはセコい子供じゃなかったのですか?」と、どんな子供時代を送ったのかと問い掛けた
それに答えたのは蒼太だった
この日、蒼太は飛鳥井で朝食を取っていた
勿論、宙夢も横にいた
「兄さんは裏で暗躍するタイプだったから、表面は大人しい子供でしたよ」
蒼太はそう言い笑った
その日同じく遊びに来ていた笙が
「それって伊織も同じタイプだね!」とサラッと言った
榊原と瑛太は口を揃えて
「「似てません!!」」と怒った
揃って言う姿は兄弟そのもので、知らない人が見たら兄弟喧嘩にしか見えないだろう……
榊原と飛鳥井と苗字が違う他人だなんて、言われないと解らないだろう
まぁ、源右衛門の血が繋がっているから他人ではないのだけど……
玲香は「同じ顔して言うでない!暑苦しい」と一蹴した
榊原は「僕の方が男前なのに……」とブチブチ
瑛太も「いえ!私の方が男前です!」とブチブチ
京香に「変わらぬ顔で競うな!」と止めを刺された
一生は「………容赦ねぇな……」と呟いた
子供達はご機嫌でそんな仲の良い家族を見ていた
美智瑠が「おとにゃげにゃい!」と笑うと
翔が「ほんちょに!」とじじくさくお茶をのみながら言った
笙は「美智瑠、君の大好きなミルクを飲みなさい!」と青筋立てて牽制した
最近美智瑠はやけにじじくさい事をサラッと言う
親の方がその言葉に青褪める……
美智瑠は「ちっちゃい!」とボソッ
笙は青筋立てて「み~ち~る~くん~」と名を呼んだ
美智瑠はヤバい……と玲香の後ろに隠れた
笙は「……本当にズル賢い……」とボヤくと
大空に「きゃわらにゃい……」と止めを刺された
「……康太……僕は立ち直れません……」
笙が落ち込むと明日菜が
「似た者親子だ、口では勝てぬ諦めろ
康太の子は康太と伊織にソックリだ諦めろ
うちの子は笙、お前に似ているのだ
要は元は一つの似た者同士と言う事だ
勝とうと想う方が間違っている」
正論で言われて笙はため息を着いた
「だね。でもさ明日菜、伊織は本当にひねくれてると想うんだけど?」
弟とは違うと笙は訴える
榊原も「康太、僕は兄さん程に腹黒くないです!
何だって兄さんは策士、一生や聡一郎の様に腹黒いのですから!」と無駄な抵抗をした
一生は「……鬼の執行部 部長さんに言われたない!」と苦言を呈し
聡一郎は「何を言いますか!鬼に言われたくはないです!」と怒りを露にした
収集が着かないと察した玲香は
「うるさい!黙れ!」と低く唸った
皆 ピタッと押し黙った
流生が「ばぁちゃ さいきょーらね!」と抱き着いた
飛鳥井の家は今日も平和だった
それぞれの想いを胸に抱き
明日へ繋げる
総て知っても大丈夫
僕達は絶対に切れない絆があるんだから!
子供は笑っていた
幸せそうに笑っていた
明日も
明後日も
一年後も
………何年経っても
大丈夫
僕達には誰にも負けない愛があるのだから……
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