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第49話 最悪の二人 + 鬼が織り成す大掃除大作戦 ②

「………鈴倉……本当にごめん…」 「だから謝らなくて良いんだってば…… 桜庭君、僕は君よりも年上で、君の上司だよ? この先もね、僕は君の上司でいるつもりだ だからさ、還っておいでよ! 力を沢山着けて、僕の右腕になるべく頑張って還って来てください」 鈴倉はそう言い桜庭に手を差し出した 桜庭は「……え?」と訳が解らない風に躊躇していた 「僕は司法の勉強をしていました 天宮先生の所で学んでいたのです そんな時、康太君と出逢ったのです 僕はもっと身近に康太君の手助けをしたいと、この会社に来ました 会社を知るには総ての部署を回らねばならない 広報宣伝部はほんの第一歩だったんですよ 僕の目的は飛鳥井建設の総合的な管理をする部署 監査部、監理局の立ち上げなんです その為に人員の選抜も兼ねていました 桜庭君、チャンスをモノにして戻って来て下さい その時は僕の右腕になって活躍して下さいね」 桜庭は姿勢を正すと 「必ずや戻って参ります! 俺は兄に誇れる男になりたい! 今までの非礼を詫びるべく、貴方の元に戻って来たならば、役に立てる様に学んで修行して参ります」 「流石……飛鳥井家真贋…軌道修正しましたね ならば僕は君が誇れる上司になりましょう 君が戻って来た時にナメられない上司になります!」 「………お手柔らかに……」 鈴倉は、えへへと柔らかく笑っていた 榊原は「掃除に戻りますよ!桜庭君、君はまだ水野の下なので広報宣伝部の掃除を頼みます」と指示して見回りに戻った 兵藤は「これで一件落着か」と安堵のため息をついた 毎年恒例の飛鳥井建設の大掃除は波乱の嵐を吹き荒れさせ…幕を閉じた 「うわぁ天使だわ!」 「大きくなったらイケメン確定ですね!」 「めちゃくちゃ可愛い」 それぞれが感嘆の息を漏らして、康太の子供達を見ていた 6人の子供達は凛々しい顔して、康太の横に立っていた 康太は子供と共に食堂に並ぶと 「オレの子供達だ!」と紹介した ずっと隠してきた子供達だった だが……もう隠していられないと判断したのだろう 幼稚舎に通い出した子供達を隠し通せる事は無理がある 何時かは人目に晒さねばならない なれば少しずつ、出して逝く事を選んだ まずは、自然な形で社員に子供達を紹介する 榊原は烈を抱っこしていた その抱っこの仕方は慣れていて、常に子供達と一緒にいて世話を焼いているのが伺えれる程に、お父さんをしていた 康太は「オレの子供だ!明日の飛鳥井の礎になるべく存在だ!」と紹介した 女性社員から「紹介して下さい」と声が掛かった 「ほら、翔から自己紹介だ!」 康太が言うと翔はペコッとお辞儀をして 「あちゅきゃい かけゆれちゅ!」と自己紹介した 「あちゅきゃい りゅーちぇーれちゅ!」 「あちゅきゃい おとやれちゅ!」 「あちゅきゃい ちなたれちゅ!」 「あちゅきゃい きゃにゃたれちゅ!」 お兄ちゃん達が自己紹介を終えると、烈も元気に 「れーれー!」と自己紹介した 榊原は「烈以外は桜林学園の幼稚舎に入園しています」と優しく話した こんな風な榊原は珍しかった 子供達の前では優しいお父さんなのだと想った 自己紹介を終えると「んじゃ、席に着いてお弁当を食べるぜ!」と康太は言った 子供達は兵藤を見付けて「「「「「ひょーろーきゅん!」」」」」と大喜びだった ちゃんと席に着いて食事する子供達を社員は見ていた 飛鳥井翔は社長に良く似た堅苦しさを秘めて 飛鳥井流生は……康太の仲間に酷似して 飛鳥井太陽と大空、そして烈は榊原に良く似た顔だった 音弥はどこから見ても隼人に酷似して‥‥ それぞれのDNAが伺えれる顔付きなのに…… ちゃんと飛鳥井康太の子供だった この子達が明日の飛鳥井を引っ張って逝くのだ そして飛鳥井は先へ繋がり進んで逝くのだ 社員達はそれが誇らしくもあり……… 過酷な道を生きていかねばならぬ子達が……… 可哀想にも想えた この年で背負うものが違う この子達の背中には…… 既に……大きな荷物がのし掛かっていた 母さんは厳しく、父さんは優しく 子供達を見守っていた 鬼の副社長が我が子の前では誰よりも優しい存在でいる…… 城田は「飛鳥井はまだまだ安泰ですね」と呟いた 飛鳥井翔 彼は次代の真贋だ 彼の瞳には……果ての光景が映っているのだろう…… 受け継がれて繋がる それを目の当たりにした社員達は、前を向き大人しく食事を取る子供達を見ていた 榊原は烈を抱っこしたまま立ち上がると 「皆さん大掃除、お疲れ様でした これで今年も清清しい想いで新年を迎えられますね 本当にお疲れ様でした」 と労いの言葉を口にした 烈は「たー!」と父さんの口まねをして言っていた 微笑ましい光景だった が……やはり彼は鬼だった 「今年も飛鳥井は色々と大変な年でした 狙われて陥れられ、何度も会社の信用の失墜寸前を繰り返しました 来年も多分……飛鳥井は厳しい年となるでしょう ですが負けずに逝きましょう 飛鳥井は大丈夫です 飛鳥井は終わりません! 終わりが来る日など永久にないと言えましょう それでは皆様に紹介致しましょう 次代の真贋、飛鳥井翔です 彼は飛鳥井康太を継ぐ者です」 榊原は翔を立たせると………社員に次代の真贋を紹介した 翔は何処を視ているか解らない瞳をして果てを視ていた そしてニャッと嗤うと胸を張った こんな時、飛鳥井康太を彷彿させて、彼が真贋なのだと何処かで理解していた そして榊原は流生を立たせると 「流生、この会社のお花はどうでした?」と話しかけた 流生は「なっちぇにゃい!」とまさの言葉を弾き出した 「いきいき ちてにゃいにょ! おはにゃ……かわいちょーよ」 「そうですか……社員の皆様、来年からは会社を飾るお花はもう少し大切に育てて逝って下さい! 我が息子はお花にはうるさいのです! 来年は流生からこの様な台詞は聞かない様にお願いします」 …………鬼だわ……… 最後に……掃除のダメ出しですか…… うわぁ……やっぱり鬼じゃないですか…… 「音弥、この会社の廊下の透明度はどうでした?」 榊原はそんな社員の心の声を知ってか知らずか……更に続ける 「らめ!とぅちゃにょ ちょーじよりもちたなきゃった!」 と、天使の様なお子様の口からダメ出しが…  「そうでしょ!そうでしょ! 僕は妻の為に心込めて磨きあげてますからね! そこまでは逝かなくも良いのですが、せめて我が子を満足させるべく透明度を出して下さい 来年は音弥をガッカリさせないで下さいね!」 うわぁ……我が子を使ってのダメ出し あぁ……鬼の所業じゃないですか!! 榊原はクスッと笑って 「太陽、大空、社員の皆様に労いの言葉を掛けて下さい!」と優しく言った 今………鬼が笑った?? 来年の事を言ってるから鬼が笑った??? 太陽はペコッとお辞儀をすると 「みにゃちゃん!おちゅきゃれ ちゃまれちた!」 と言葉にした 大空もペコッとお辞儀をすると 「かいちゃも ちれーになりまちた!」 と言葉にした そして最後は五人で 「「「「「みんにゃ ぎゃんびゃったね!」」」」」 と誉めの言葉を口にした 社員はそれだけで心が洗われて報われた気持ちになった 康太が「父ちゃんと瑛兄!」と言うと 清隆は「皆さんお疲れ様でした。今日は本当に頑張りましたね」と労いの言葉を口にした 瑛太も「日頃から副社長が口煩く言って来た成果が、今年は出ているのを実感しました 皆がそれぞれ進んで行動をしている光景を見れて本当に感動しました 君達の会社です 君達と共に創る会社です 来年も共に共闘して逝きましょう! 本当にお疲れ様でした!」 と、心からの労いの言葉に、社員は年が暮れる寂しさを感じていた また来年から戦場になる職場だ 心機一転、頑張ろうと気概が上がる 飛鳥井建設の大掃除はこうして幕を閉じた 社員は口にする 「やっぱり鬼でしたね」………と。 今年は静かで控え目な副社長だと想ったが……最後にゴツンッとかまされた やはり副社長はあぁでなくっちゃ! 城田は笑って「副社長は妻と子供にしか優しくないからな」と愚痴った 大掃除を終えて、社員の半数と飲みに出掛けた ご苦労さん会と称して飲んだ暮れる何時ものイベントだった 愛染も愚痴る 「あんな可愛いのに…既に……副社長の躾の賜物な性格になってたな……」 なっちぇにゃい! 言っちゃうんだもんな 仲村は「でも可愛かったな」と頬を緩めて口にした 綾小路は「天使でしたね」と愛らしい子供を思い浮かべた 「でも上司になったら怖いだろうな」 社員は頷いた そりゃ怖いだろうな 鬼の子だもん でも楽しみだ 何時かあの子達の時代がやって来る 城田は「腕を磨かなきゃな」と口にした うんうん!と全員が頷いた 腕を磨いて、常にあの子達の役に立つ存在でいたい 願いは一緒だった 後はもう……飲んだくれて、楽しく語る毎年恒例の飲み会となった 今年最後の締めくくり 来年もどうか宜しくお願い致します 社員一同の言葉だった

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