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第50話 桃太郎の想い

今日は康太の誕生日 ボクは朝からリボンを咥えてご主人貴史の所へ行った ワンワン!! まだ寝ているご主人貴史の顔をペロペロ 「桃……まだ寝かせろよ……」 ワンワン!ワワワン!! ご主人貴史の前にリボンを差し出した ご主人貴史は寝ぼけ眼でリボンを見た 「何?これ?」 ワォーン!ワンワン!! 「結べって?」 ワン! ご主人貴史は仕方ないなぁ……と言い起き上がりボクの体躯を抱き上げた ご主人貴史は良い匂いがするんだ スリスリしてるとご主人貴史は笑って撫でてくれるんだ そしてお尻尾にリボンを結んでくれるんだ ボクのご主人は優しい この前ね定期検診でね、傷だらけのワンワン見たの 保護されたんだって一ノ瀬は言ってた そのワンワンね怯えた瞳していた 近寄ろうとするとウゥゥゥゥー!と唸って警戒していた 一ノ瀬は「近寄っちゃダメだよ桃ちゃん……この子はねご主人様に虐待されていたから誰も寄せ付けないんだからね……」と悲しそうに教えてくれた ご主人様に虐待されて……… そんな可哀想な子がいるなんて想った事さえなかったから……ショックだった こんな風に愛してくれるご主人貴史と出逢えて、ボクは本当に運が良かったと想った ご主人貴史と出逢わせてくれてありがとう ボクは初めて神様に感謝したんだ ご主人貴史が結んでくれたお尻尾のリボンをフリフリ プレゼントを咥えて階段を下りる 途中、美緒と出逢う 美緒は笑って 「おめかししてどうしたのじゃ?桃」と近寄って来て撫でてくれた ワンワン!キュンキュン 美緒に説明する 美緒は笑ってボクのお話を聞いてくれるの ボクの後にご主人貴史が階段から下りてきて 「お主もおめかししてどうしたのじゃ?」 と尋ねた 振り返ってご主人貴史を見ると、そこには少しラフだけどおめかししたご主人貴史がいた 「おめかしなんてしてねぇよ!」 照れ隠しにぶっきらぼうに話す 美緒は笑って 「そうか!今日は康太の誕生日であったな」と確信を着いた 「知ってるなら言うな」 「今宵は我も逝くからな」 「飲み明かすんだろ?」 「そうじゃ!楽しみよのぉ」 嬉しそうに言う美緒を他所に兵藤は桃太郎を連れて家を出た 桃太郎は外に出てご主人貴史を見た するとご主人貴史はA4サイズの大きさのリボンをした袋を持っていた ご主人貴史がこよなく愛する存在を桃太郎は知っていた そしてその愛は報われないのと知っていた ご主人貴史…… ご主人貴史の想いを考えると泣けてくる でも泣かない ご主人貴史の愛だから……ボクは見届けると決めているんだ ご主人貴史…… ボクは貴方よりは長くは生きられないけど…… ボクは貴方を見ていたよ ずっとずーっと………見ていたよ この命が続く限り 傍にいたいよ 飛鳥井の家に逝くと子供達がご主人貴史に飛び付いた ボクはコオとイオリとガルの傍に行った コオが『桃ちゃん、元気だった?』と優しく問い掛ける イオリが『お尻尾のリボン、可愛いですね』と誉めてくれた ガルが『桃ちゃん逢いたかったよぉ』とすり寄って来た ボクは……こんな風に愛された子達の中にいて 愛されて育ったから……知らなかった この世には愛されて育たない子もいるんだって……知らなかった あの子……まだ丸くなって……警戒しているのかな? 本当なら真っ白な毛並みが……汚れて怪我していた 血が滲んだ包帯が痛々しかった あの子……どうなるのかな? もう……痛い想いはしないで良い所へ逝って欲しい…… 康太は桃太郎を視て「元気がねぇな……どうしたよ?」と兵藤に尋ねた 兵藤は少し困った顔をして…… 「この前、一ノ瀬の所に爪を切りに行ったんだよ そしたらそこに虐待されて保護された犬がいてな…… 怯えて警戒しまくりの犬は初めて目にするからな 桃はショックだったんだと想う」 説明した 「一ノ瀬が保護したのか?」 「違う、一ノ瀬の病院に通っている保護団体の奴が、一ノ瀬に預けたらしいな 動き回らない様に鎖は異常に短く首を吊る様に繋がれていたそうだ…… 餌も十分に与えられてなくてガリガリだった 毎晩毎晩キャンキャン鳴く犬の声が煩いと警察の方に通報されたそうだ 警察の方が犬の待遇に見かねて保護団体の方に通報して、保護団体の方が動いて保護したそうだ」 康太は眉を顰め……「ひでぇな……」と呟いた 「真っ白なCMとかに出てる犬と同じ犬種らしいが汚れてて真っ黒だった 桃は虐待された犬ってのを初めて見たからなショックだったんだ」 「………虐待された犬は警戒心が凄い…… 下手すれば人間を襲って殺処分か、餓死するケースもあるな……」 「……あぁ……一ノ瀬もそれを心配していた……」 「その犬はどっちよ?」 「餓死……の方だな 怯えて警戒しまくりだったけど襲ってくる気配はなかった そもそも襲える程体力もないんだけどな 吊るされて散歩もさせてなかったから足の筋力が低下していて歩けねぇ程だったからな」 「………それは……餓死するしかねぇな」 康太と兵藤が話しているのを桃太郎は聞いて泣いていた 鼻水までじゅるじゅる垂らして泣いていた あの子……絶望の縁にいる瞳していた 生きるのを諦めた瞳していた 桃太郎の尻尾は悲しそうに項垂れていた 一生が「その犬、何とかしようか?」と名乗り出た 康太は「お前でも荷が重いと想う」と止めた 「だとしても聞いた以上はな………放っておけない」 一生らしい言葉だった 桃太郎は一生の膝に乗り上げてペロペロ一生を舐めた 『カズ……カズ……』 ワンワン鳴きながら一生の顔を舐めた 「桃、お尻尾のリボン、可愛いな」 ハッと気付いて桃太郎は康太の前に逝った ワンワン!ワワワン! お誕生日おめでとう! 桃太郎はそう言い取って置きの宝物を康太に差し出した 康太は鼻で差し出されたプレゼントを受け取り 「オレにくれるのか?」と尋ねた 桃太郎は『ワン!』と元気よく吠えた 兵藤はプレゼントを覗き込んだ 「何よ?それ?」 康太は桃太郎からのプレゼントを笑って見ていた 「これは誰から貰ったんだ?」 『昭一郎!』 ワンワン!答える桃太郎と会話している様だった 「昭一郎が与えてくれたのか?」 『そうだよ!』 桃太郎は嬉しそうに答えた 康太の手の中にあるのは石だった ただの石でなく………水晶の原石だった それもかなり大きい 「…………桃……これ……かなり高いぞ?」 よくもまぁ咥えて来たと驚きと ここまで立派な水晶の原石は中々手に入らないだろう……位凄かった 桃太郎はお尻尾をフリフリ嬉しそうだった 康太は「一生、アレを。」と言うと一生はリボンで結んだ骨を桃太郎に差し出した 桃太郎は瞳を輝かせ骨を舐めた 康太は兵藤に「………良いのかよ?」と問い掛けた 「構わぬ!貰ってやってくれ!」 と答えたのは兵藤ではなく美緒だった 美緒は夫の昭一郎と共に飛鳥井の家に来ていた 「その石は昭一郎の山で採れた石でな 霊峰と詠われし山神の一部と謂われておる石だ 桃太郎はその石を欲した だから昭一郎は与えた 桃太郎に預けた石をお主に持って来たとしても、それは桃太郎からのプレゼントじゃ! 受け取ってやれば桃太郎は喜ぶ」 康太は嬉しそうに石を眺め 「此処まで立派な水晶は見た事がねぇな」と感心した 美緒は「そうであろうて!研けばどの水晶よりも霊力を備えた石になろうて!」と答えた 「だな!」 「その石は持つ相手を選ぶ! 我等の所に在る時は石っころにしかならぬ存在であった 石は桃太郎が誰に持って逝くか知ってて選んだ その石はお主を選んで傍にいるべき存在と言う訳だ」 そう説明すると後は玲香の横に行き、飲み始めた 康太は桃太郎を撫でて 「桃太郎ありがとうな 桃がオレにプレゼントをくれたからな 三月三日のお前の誕生日には、何かプレゼントするからな待ってろ」 そう言った 桃太郎は嬉しそうに撫でられ…眠りについた みんな………幸せに笑っていられたらいいなぁ 桃太郎はそう想う 多分……泣いてる仲間は沢山いるのかも知れない 回りには愛されて生活している子達しかいなかっただけで…… 回りを見渡せば……沢山いるのかも知れない そんな子が一匹でも減ればいいと想う 泣いている子がいなくなればいいと想う みんな幸せに…… なんて夢なのは知っている でも………想う位良いじゃない 願う位良いじゃない どうか………みんな幸せに………    笑っていられます様に……… 夢の中でも祈るのだった

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