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第69話 4月1日エイプリルフール

エイプリルフール当日 康太は榊原をあっと驚かせる嘘を考えていた 朝からソファーで何やら考え事をする康太に一生は「どうしたのよ?」と問い掛けた 「一生‥」 「悩み事か?」 「悩みって訳じゃねぇ‥‥ 今日はエイプリルフールやん? だからあっと驚く嘘を考えていたんだよ」 「その嘘は誰に向けて着こうと想ってるんだ?」 「伊織」 「なら簡単やん! お前の事が嫌いになった!とでも謂えば効果は覿面だと想うぜ!」 「‥‥‥それ、言っちゃうのか?」 「ダメなのかよ?」 「嘘でもな‥‥伊織にその言葉は向けたくねぇんだよ」 康太の愛だった 一生は困った顔をして 「なら妊娠したって謂うしかねぇやん」 「‥‥それは去年やった 嘘だって言ったらめちゃくそガッカリされた そもそも男のオレが妊娠すん訳ないやん!」 もうやったのね‥‥ 一生は遠い目をして苦笑した 「なら何もないやんか!」 一生はボヤいた 「何かあっと驚く嘘‥‥つきてぇんだけどな」 「諦めなはれ!」 「何かねぇかな? やっぱ‥‥お前よりも好きな奴が出来た‥謂うしかねぇか?」 「泣くから止めときなはれ!」 「泣かねぇよ」 「泣くって、旦那は繊細だったりするからな」 「なら‥‥やってみるか?」 「止めときなはれ!」 「今日はエイプリルフールだかんな どんな嘘でも許される!」 許される嘘ってのは相手が冗談だと受け止める余裕がある場合にのみ許されるんだけどな‥‥ 一生はハラハラと康太の嘘の心配をした 榊原伊織(青龍)にとって飛鳥井康太(炎帝)は命よりも大切な存在なのだから‥‥ そこへ榊原が掃除を終えてやって来た 康太は榊原の姿を見ると 「伊織」と名を呼んだ 「何ですか?康太」 「お前よりも好きな奴が出来た」 姿を見るなり切り出す康太に一生は、あちゃーと顔を覆った 突然の言葉に‥‥ 榊原は何がおこったのか思考を止めた ‥‥‥今‥‥何を言った? ‥‥‥‥‥今‥‥‥何を謂われた? 榊原の瞳から‥‥ 涙が溢れだし 泣いていた それを見た康太はギョッとなり慌てて榊原に飛び付いた 一生は康太の頭をゴツンッと叩き 「ほら、みなはれ!」と怒った 「伊織、嘘だ! 今日はエイプリルフールだ!」 だから嘘を着いたんだ!と慌てて説明した 榊原の瞳は何も写さず‥‥ 「僕を殺して下さい‥‥」 と謂うなり‥‥瞳を閉じた 一生は康太と榊原を寝室に連れて逝くと 「康太、お前の責任だからな! ちゃんとエイプリルフールの嘘だと教えとけ! それをなんとか出来るまでは部屋から出て来るな!」 そう言い寝室を出て逝った 康太は榊原をベッドの上に座らせると、優しく抱き締めた 「伊織‥‥ごめん嘘だから‥‥」 何度も言い接吻ける 榊原の瞳は康太をやっと映し出した 「‥‥‥康太‥‥」 「今日はエイプリルフールだかんな‥‥伊織を驚かせたかったんだ‥‥」 「‥‥驚きました‥‥ 死んだ方がマシな程に‥‥驚かされました」 「お前より好きな奴なんて出来る筈なんかないやん! それくらい解れよ伊織」 「解っていても‥‥君の口から聞かされれば‥‥ その瞬間‥‥心臓が止まりそうになります‥‥ 君に見向きもされず‥‥存在する僕は‥‥ 生きる意味も目的も失った生きる屍も同然です‥‥だから僕に興味がなくなったのなら‥‥頼むから‥‥殺して下さい‥‥」 康太は強く強く榊原を抱き締めた 「‥‥ごめん伊織‥‥」 康太は泣きながら榊原に謝った 榊原をビックリさせようなんて考えなければ良かった 何者にも動じない榊原の驚く顔が見たかったのだ 驚いても後で嘘だと伝えれば‥‥榊原も嘘でしたか‥‥と安心する そんな目論見だったのだ 来年からはエイプリルフールには‥‥嘘は付かない‥‥と心に決めた 「康太‥‥僕に飽きた訳ではないのですね?」 「当たり前やん 何万年一緒にいるんだよ? この先もずっとずーっと一緒だ青龍 お前だけを愛している この先もそれは変わる事はない 変わるとすれば、お前への愛が日々募る位なものだ!」 「エイプリルフールに着くには‥悪質過ぎる嘘です‥‥ 僕は‥‥君に捨てられるのかと‥‥」 そう言い榊原は再び泣き出した 男前の顔が‥‥台無しだった 鼻は真っ赤になり‥‥目も腫れていた なのに‥‥こんなにも愛しい‥‥ 「伊織を驚かせたかっただけだ‥‥ 伊織が驚いたなら、その後に「嘘だ!伊織!」と言ってオレがどれくらいお前を愛しているか伝えるつもりだったんだ‥‥」 「どれくらい僕を愛しているか‥教えて下さい」 康太は榊原をギュッと抱き締めた後に、榊原の唇に優しく接吻けを落とした 「オレは昔も今も焦がれる程に愛しい存在はお前だけだ‥‥ ずっとずっと‥片思いをしていたのは青龍、お前だけだった ずっとずっとお前の傍に逝きたいと願っていた お前の頬に‥‥触れたかった お前の唇に触れたかった‥‥」 康太はそう言い榊原の頬に触れ‥ 唇を指でなぞった 「憧れてやまなったオレの蒼い龍‥‥ お前に触れられるなら‥‥気紛れでも遊びでも‥‥良かったんだ お前がオレに触れてくれるなら‥‥オレは‥‥その瞬間だけで生きて逝けると想ったんだ」 「炎帝‥‥」 「焦がれる程に想っていたのはオレの方だ 絶対にお前の傍には逝けねぇと諦めていた 法皇になるべき存在が化け物のオレなんて相手にしてくれねぇ‥ 解っていたけど‥‥傍に逝きたいと想ってしまったんだ‥‥」 康太の腕は震えていた 過去を思い出して刹那そうな顔をしていた そんな顔をさせたかった訳ではない 「ずっとずっと‥‥青龍だけを見て来た あの日‥‥青龍がオレと人の世に堕ちてくれた事は今も奇跡だと想っている こんな化け物を愛してくれる奴なんていねぇ‥ そう想って来たからな‥‥ この愛はオレにとっても奇跡だと想う‥‥」 「康太‥‥もう良いです 君のついた可愛い嘘など‥‥笑って許すべきでした」 「いや‥‥オレが悪かった‥‥」 「どうして僕を驚かせたかったんですか?」 「年に一度のエイプリルフールには趣向を凝らして驚かせてみかったんだよ 子供達に父ちゃんを驚ろかせたんだぜ!って言って自慢してみたかったんだよ」 「僕を驚かせたかったんですか?」 「流生が『とぅちゃはなにちてもおどろきゃにゃい!』って言ってたからな‥‥少しだけ対抗意識を燃やしちまったんだよ 子供達も必死になってお前を驚かせに来るかんな、その前に母ちゃんの意地を見せたかったんだよ」 拗ねた様な顔で謂う康太に、榊原は優しい顔になる 「驚きましたよ 僕を驚かせれるのはこの世でただ一人 君だけです 僕を簡単に殺せるのも君だけです 君が僕の事を愛してなんかいない‥‥そう一言謂えば僕は生きるのを諦めます」 「そんな日なんて永遠に来ねぇよ 魔界に還っても冥府に還っても‥‥生を終えて魂だけになっても‥‥ オレはお前だけを愛し続けるかんな」 榊原は強く強く康太を抱き締めた そしてベッドに押し倒し執拗に接吻けた 「君を確かめさせて下さい」 「あぁ、好きにしろ この体躯はお前の為に在るかんな」 榊原の指が確かめる様に康太に触れる 服を脱がせ素肌に触れて逝く 乳首を摘ままれ甘噛されて康太は仰け反った 榊原のモノだった 青龍のモノだった 髪の毛も皮膚も細胞の一つさえも榊原のモノなのだ 榊原に触れられた所から熱く反応する この体躯は青龍の為にだけに在る体躯なのだ 互いを愛撫する様に触れ確める 大切な作業だった 快感を覚えているお尻の穴はヒクヒクと蠢いていた 榊原は秘孔に触れ指を挿し込んだ シワを伸ばす様に指を動かし内側をなぞる 康太の良い場所を引っ掻く指に、煽動が激しくなる 「‥‥あっあぁぁっ‥‥イイッ‥‥」 康太は腰を捩って快感を伝えた 指を三本挿し込みバラバラに動かす 腰が揺れ足が榊原を誘うように開かれる 「欲しいですか?」 「欲しいに決まってる オレは何時だって伊織が欲しい 青龍が欲しいんだかんな!」 「ならば今日は焦らさずに飛び付いたあげます」 そう言い榊原は血管の浮き出た最大に膨張した性器を握り締めた 康太に見せ付ける様にカウパーで濡れた肉棒を‥‥‥ 康太の秘孔に宛がい‥‥ 一気に貫いた 押し寄せる快感に康太はイキそうになる だが榊原は簡単にはイカせてはくれそうもなかった 康太の性器の根元を握り締めイクのを阻んだ 「‥‥ぅ‥あぁ‥‥は‥‥ぁん‥‥」 行き場のない熱が体内を駆け巡る 康太は榊原の気のすむ様にしようと想っていた だが‥‥止めどなく襲う快感に‥‥ 訳が解らなくなりつつあった 「これは罰なんかじゃないのですから我慢しなくても良いです だけど一緒にイキたいので少しだけ我慢して‥‥」 康太の上で快感に艶めく榊原がいた 快感に目を細めて愛しそうに康太を見ていた 「一緒に伊織‥‥」 「ええ‥‥一緒に康太‥‥ 僕は絶対に君を離しません 僕が嫌いになったら‥‥殺してあげます 君を殺して僕も死にます‥‥」 「そんな日は来ねぇよ」 絶対に来ねぇ 康太がそう言うと榊原は握り締めていた指を緩めた 康太は堰を切った様に射精した ドクドクと夥しい精液が榊原の腹を濡らす 榊原も康太が射精すると同時に、康太の中へ放った フルフルと性器が痙攣をしたかの様に射精を続けていた お腹の中が熱くなる 康太は榊原の背に縋り付いた 止まれない榊原は再び康太の中で力を取り戻し硬くなって逝った 自然に合わさる唇は互いを求めて執拗な接吻になり‥‥ 二人は互いの体力の限界まで求め続けた 康太が目を醒ますと榊原の顔が目の前にあった 「気を失っていた?」 「ええ‥止まれませんでしたからね」 「何時間位寝てた?」 「どうなんでしょう? 窓の外はすっかり暗いので夜なのは確かです」 「そうか‥‥腹減ったな」 『ですね、体躯を洗ったら食べに行きますか? 何もないなら食べに出ましょうか?」 「だな。 伊織は寝たのか?」 「少し寝ました 起きてからは君の顔を見てました」 顔を見てました、と言う榊原の言葉に康太は 「よど‥‥垂らしてなかったか?」 と心配した 「どんな君でも愛しているので大丈夫です」 「オレは愛する伊織には何時だって可愛い所を見せてぇんだよ!」 「見てますよ 何時だって可愛い君を見てます」 「愛してる伊織 愛してる青龍 オレの蒼い龍‥‥お前だけしか愛せねぇ」 榊原は嬉しそうに笑って康太を抱き締めた 「僕も愛してます 康太愛してます 炎帝愛してます どんな君でも愛してます だから自分の事を化け物だなんて謂わないで下さい 君を愛する僕を貶めないで下さい」 「ごめん‥‥」 「僕の愛する君は何時だって前を向いて歩く正しい人です 逃げ道は用意しない君を護りたいと想っています 逝くなら共に‥‥それしか願っていません」 「お前がいるからオレは前を向けるんだ お前がいるからオレは正しく在ろうと想うんだ だからオレを離さないでくれ‥‥」 「絶対に離しません!」 康太と榊原は強く強く抱き合った その時、ドンドンとドアを叩く音が部屋に響き渡った 榊原と康太は顔を見合わせあった そして笑った ドアは開いていた ドアノブを捻った一生はドアを開けて 「そろそろ起きてくれねぇか?」と声をかけた 「一生、仲直りには時間が掛かるものなのです」 榊原が笑って謂うと一生は「掛かりすぎでっしゃろ!」と呆れて言った 「今、何時ですか?」 「午後7時30分 朝、寝室に閉じ込めて‥‥仲直りし過ぎでっしゃろが!」 「愛が募っているのです許しなさい!」 「許すけど康太のお腹事情がそろそろ限界でっしゃろ! 子供達も待ってるから支度を済ませたら、応接間に来てくれ」 「解りました」 一生はヒラヒラと手をふるとドアを閉めて戻って逝った 榊原は立ち上がると康太を抱き上げて浴室へと向かった 中の精液を掻き出し綺麗に洗うと、接吻け 榊原は康太のゴシゴシ体躯を洗って貰って流して貰った 二人してシャワーを浴びて体躯を拭いて、接吻け 何かにつけて接吻けていた 身支度を整えて部屋を出ると応接間へと向かった 応接間のドアを開くと‥‥ 盛大な子供達の泣き声が響いた ワン達も子供達と一緒に鳴いていた 榊原と康太は何がおこったのか解らなかった 「どうしたのよ?」 康太は榊原は問い掛けた 榊原は「解りません‥‥」と呟き応接間の中へと入って逝った 子供達の傍にしゃがむと「何かあったのですか?」と問い掛けた 心配した榊原の顔に流生は「あーぁ、やっぱおどろきゃかにゃい!」と残念そうに言った 音弥も「いけりゅとおもたにょに!」と残念そう 翔は「なきかたがあまかったかにゃ?」と分析していた 太陽は「とぅちゃ、えいぷりるぷーりゅにゃんらよ?」と驚かそうとした経緯を話した 「エイプリルフールでしたね 僕は朝、康太から死にそうな嘘をつかれました」 榊原が謂うと子供達は一斉に康太を見た 太陽は「とぅちゃ‥‥かわいちょう」と撫で撫でした 大空も「かぁちゃ、めっ!」と父を苛めるなと怒った 康太は罰の悪い顔をして 「うちの子は父ちゃん子だかんな」と淋しそうに言いソファーに座った 母ちゃんの膝の上に烈が野ってチュッとキスをした 「あーちゃ」 「烈、また重くなったな」 どっしりと我が子の重みに成長を感じていた 「あーちゃ らいちゅき」 「オレも大好きだぜ烈」 その言葉に榊原はピキッとなり烈を一生の膝の上に置いた 「康太は僕のモノです」 榊原が謂うと烈は「とーたん、ちーしぇー」と叫んだ 榊原はピキッと怒りマークを額に着けて 「父は小さくありません! ねぇ、康太、僕のは小さくありませんよね?」 「‥‥なんの話してるんだよ」 「君の僕の話です」 榊原はそう言い康太の横に座り接吻けを落とした 応接間には一生の他に聡一郎や隼人、慎一もいた 飛鳥井の家族や榊原の家族もいた 家族は皆、子供達のエイプリルフールを見守っていた 流生はやはりうちの両親は「らぶゅらぶゅ!」と笑ってそう言った 音弥も仲の良い両親に「そうそう!いちゅもだもんね!」と笑っていた 太陽は「ちんこんらもんね!」と何処で覚えたのか‥‥新婚だと言った 大空は「あいはからさにゃいようにちないとらめなんらって!」とこれまた何処で覚えたのよ?と想う台詞を言った 翔は「ぼくらのりょうしんはなかよしらもんね!」と笑っていた 烈はブーブーと怒っていた 一生の膝の上で暴れると一生は「勘弁してくれ!」と痛さに叫んでいた 康太は笑っていた 聡一郎も隼人も慎一も笑っていた 飛鳥井の家族も榊原の家族も笑っていた その後、皆が集まると宴会に突入する飛鳥井の家は、夜更けまで皆の笑い声が響いていた

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