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第70話 スフィンクス

康太は飛鳥井の家の応接間で寛いでいると、足元にじゃれつく感触に目をやった 「‥‥??‥‥‥ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 康太の悲鳴が飛鳥井の家中に響き渡った お茶を入れにキッチンに行っていた榊原が駆け足で応接間へと向かった 一生も聡一郎も隼人も慎一も、ついでに瑛太と清隆も康太の一大事だと応接間へと飛び込んで逝った 「康太、どうしました?」 榊原は康太に問い掛けた 康太は白目を剥いて‥‥気絶寸前だった 「‥‥‥脳ミソ‥‥剥き出しの動物がぁ‥‥」 譫言の様に呟いて‥‥ 目を瞑った 榊原は康太の足元にいる無毛の生き物に目をやった 脳ミソ剥き出し‥‥と康太は言ったが、まさに‥‥脳ミソ剥き出しの状態だった 体躯に毛はなく 「‥‥‥なんなんですか?この生き物は‥‥」 と呟いた 瑛太と清隆は気絶寸前の康太に気を使い 「しっしっ!」と無毛の生き物を追い払おうとした 無毛の生き物は眼光鋭く人間を見て‥‥ プンッとそっぽを向いてソファーに飛び上がり寝そべった 脳ミソは剥き出し、体躯はシワシワで無毛 眼光鋭く‥‥どういう生き物なのだ? 全員はそう思った 宇宙から来た宇宙人とか? 清隆は「宇宙人のペットとかですかね?」と呟いた そう言っても不自然じゃない容姿だった 瑛太は「爬虫類が立体歩行に成功したのかも‥‥」と思案した 聡一郎は「‥‥グロ過ぎです‥‥脳ミソしまってあげて下さい」と気絶しそうだった 隼人も「‥‥目がトカゲみたいなのだ‥‥その鋭い爪で襲うつもりなのだ!」と警戒した 慎一は無毛の生き物に触れた 「毛はないですが、これは脳ミソと謂うよりもシワみたいですね」とシワに触れて感想を述べた 慎一‥‥お前って本当に最強だな‥‥ そこにいた皆がそう思った頃 応接間のドアが開いた 「康太還っていたのね? あら‥‥皆さんどうしました?」 平気な顔で真矢は問い掛けソファーに座った その横に清四郎も座ってニコニコとしていた 「真矢さん‥‥」 瑛太は真矢の名を呼んだ 一生が「康太が脳ミソ剥き出しの生き物がいる!って気絶しちまったんだよ」と説明した 「あら‥‥どうしましょう‥‥」 真矢は困った顔で呟いた そこへ玲香がやって来て 「どうしたのじゃ?」と問い掛け 一生は経緯を話すと、玲香は大爆笑した 「真矢と清四郎はお祖父様の所へ来て下さったのじゃ! で、さっきまで我と話しておったのじゃ! で、その脳ミソ剥き出しと謂われたのは猫じゃ!」 【猫ぉ!!!!!】 家族や一生達は叫んでいた 「そうじゃ猫じゃ! スフィンクスと謂う種類の猫なのじゃ! 珍しいから真矢が康太にと連れて参った動物なのじゃ!」 スフィンクスと聞き、聡一郎はPCで検索を掛けた すると同じ様な猫の画像が次々と出て来た 「猫です」 聡一郎が謂うと榊原は康太を起こして説明した 康太は榊原に説明され、聡一郎に画像を見せられ‥‥ やっとこさ脳ミソ剥き出しの生き物が猫だと理解した 「‥‥‥猫ってツラじゃねぇやん」 康太は呟いた 榊原も「そうですね‥‥毛がないからこのシワが脳ミソに見えてしまいますね‥‥」と困った様に答えた 真矢は「康太にプレゼントよ!」とにこやかにそう言った 「え?オレに?」 「正確には康太の子にプレゼントなのよ 毛がないからアレルギーでも大丈夫なのよ」 真矢が謂うと康太は‥‥ いやいや‥‥アレルギーでも大丈夫かも知れねぇけど‥‥人でも食いそうなこのツラだと子供達は泣くやんか‥‥と想った 子供達が幼稚舎から還って来ると珍しい生き物に驚いて‥‥康太の足元に隠れた 「かぁちゃ‥‥きゅいころちゃれそー!」 と流生が泣きそうな顔で言った 康太は内心、だろ!そうだろ!と自分だけ驚いたんじゃなくて良かったと想った だが子供の順応性の高さは時として驚かされる 最初は恐々と見ていただけだったのに‥‥ 危険がないと知ると毛がない生き物の傍に行き 全員で撫で始めた 真矢は嬉しそうにそれを見ていた 真矢は康太に「スフィンクスと言う猫なのよ」と改めて説明した 「撮影でね、出て来た子なのよ 珍しい生き物だから欲しいと言ったらブリーダーさんを紹介してくれてね 無難な子を選んでくれたのよ 近年はアレルギーでも大丈夫な猫って事で人気が高い猫ちゃんなのよ」 真矢の説明に康太は 「‥‥オレ‥‥それ知らなーず‥‥」とギブアップのポーズを取った 榊原も「僕も知りませんでした」と毛のない猫を見て呟いた 「子供達の友達にしてあげてね」 「喜んでます ありがとう義母さん」 まだ毛がない猫には慣れない康太だった だが真矢の想いに礼を述べた スフィンクスと言う猫が子供達の友達になった日 康太は何て恐ろしい生き物を作るのよ神様‥と想った

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