熱い吐息にいざなわれて、豊島くんは神野と二人で風呂に入ることになった。 　かなり躊躇したが熱心に勧められて承諾する。 「怯えないでね」 　戸惑いはしたが、魅惑的な声と態度とに惑わされて、拒否はしなかった。 　いや、出来なかったのだ。 　神野のアドバイスなら受け入れたいし、どうやら行為の前にも後にも風呂に入った方がいいらしい。 　学校やバイトの後なので汗臭かったらいやだなとも思い、彼はおとなしく付き従った。 　そこで、卑猥な扱いを施されることになったのだ。 　神野は豊島くんの背後に立ち一緒にシャワーを浴びている。 　スポンジの泡がふたりの素肌を彩った。 　その中で、やがて神野は彼の腰の前に手をまわして股間を洗おうとしてきた。 「それはっ」 『綺麗にしてあげる』と囁かれたが大慌てで遮る。 「自分で洗います」 　しっかりとした声と両手とで自分自身を守る。 　神野はやれやれと肩をすくめ残念そうな表情を隠さなかった。 　それでもスポンジを手渡してくれる。自分で洗っていいということらしい。 「豊島くん、そのまましっかり立っててね」 　前がだめならこっちを……と、ボディソープまみれの指で神野は豊島くんの後ろの蕾をほぐしにかかる。 　しかも立ったままでの行為だ。 　ふたりの身体にはシャワーの水滴が降り注いでいる。 「神野さん！」 　後ろから羽交い締めにされていた。 　さすがに抵抗感を感じて身じろいでも、抱き込む腕はがっしりと強く、びくともしない。 　神野の指が彼の尻穴を広げるようにいじってくる。 　中まで洗って来る。 　むず痒いような刺激。 　赤裸々すぎて耐えられない。 「や、そんな……許して」 　足が震えて仕方がなかった。 　はじめての時にそこで感じたなんとも言えない感覚が蘇ってくる。 「なにを許して欲しいのかな。君はなにか悪いことをしたの？」 「う、」 　出しっぱなしのシャワーを浴びせながら神野がほくそ笑む。その顔は豊島くんには見えなかった。 　もし見えていたら、さしも鈍感な豊島くんでも少しだけ神野に怒ったかもしれない。 「悪いことなんてなにもしてないよね。君はとても素直でいい子だ」 　うなじに顔をうずめて朱印を残す。いくつも、いくつも、うっすらと赤くなった首筋にそれより赤いキスマークを刻む。 「あ、あ……ん」 「感じているの？」 　豊島くんには抵抗する術がない。 「指だけなのに、後ろだけなのに、イっちゃいそうなの？」 　言われてはっとなる。彼の息子は角度を上げていた。 「やだ」 　この場を逃げ出したい。彼は手で股間を覆った。 「ベッドに行こうか」 　神野は落ち着いてシャワーを止めると、彼の身体を支えながら脱衣所に移動する。 　若々しい身体の水滴はバスタオルでぬぐわれた。その間も豊島くんは自分のペニスを必死に隠している。 　その恰好がかわいそうで、かわいくて、神野はたまらない気持ちになっていた。 「大切にするからね」 「神野さん」 「たっぷり気持ち良くしてあげるよ」 　そして約束の証に彼の唇を情熱的に奪う。 「ぁ…ん……」 　濃厚で技巧的で熱烈なくちづけに、豊島くんはすっかり抵抗する気をなくしてしまったのだ。