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( 2) 似たもの同士
オレが守るべきヒナタに好きなやつができた……だと?
何故、そんなの事を言うんだ?
ちょっと待て。
聞き違い……か?
「ヒナタ、ごめん。よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
「いいよ、何度でも。ボクね。好きな人が出来たんだ」
オレは、目の前が真っ暗になった。
すぐさま、ヒナタに言った。
「ちょ、ちょっと! だれだよ! それ!」
ヒナタは恥ずかしそうに言った。
「えへへ。クラスの子だよ」
「お前! クラスの子って……。まさか、男子ってことはないよな?」
「えーっ。どうかな……」
「なっ、どうかなって……。オレは、絶対に男子と付き合うなんて許さないぞ!」
「へぇ。じゃあ、女の子となら付き合っていいの?」
「女子だったら……まぁ、しょうがないかな。ヒナタだって男なんだから」
「ふーん。ねぇ、航太。でも、ボクが好きになったのは、男の子だよ」
ヒナタは、躊躇なく言った。
「ヒナタ! オレは許さないぞ! オレ以外の男を好きになるなんて!」
「……そんな事いったって、好きになっちゃったんだもん……」
少し頬を膨らませる。
普段なら、可愛くて頬をつつくところだが、今はそんな余裕は無い。
「オレは、ヒナタ。お前が大好きだ。とても大切なんだ。ヒナタだってそうだろ?」
「ボクだって、航太のことは大好きだし大切。でも、しょうがないでしょ?」
「なんでだよ!」
「航太じゃ、ダメ、だよね?」
上目遣いにオレを見るヒナタ。
オレはたじろぐ。
「なっ……」
「航太も、ボクと同じ。してもらう側なんだから……」
オレは絶句した……。
ヒナタの言ったこと。それは、セックスの事だ。
そうなのだ。
オレとヒナタは、いわゆる受けなのだ。
つまり、『恋人』というのがセックスをすることが前提なら、オレとヒナタは恋人ではない。
だから、オレとヒナタは、友達以上恋人未満の関係。
しないのではない。
しようとして、できなかったのだ。
中学生になり、お互い性の興味に目覚めた頃、アダルトビデオを借りて二人で見た。
親に隠れて日常的にキスをするような関係。
考えてみれば、当たり前かもしれない。
次は、当然、セックスに興味が沸いた。
ビデオを見て興奮した。
目の前には、裸で体を寄せ合い、愛撫して、そして、二人繋がり快感によがる姿。
オレ達は画面の中と同じように二人裸になり、抱き合い、互いの体を愛撫した。
そして、いざしようとした……。
でも、できなかった。
二人とも、勃たなかったのだ。
いや、正確には、勃起はしている。
互いの体に挿入できるほどには固くならなかった、のだ。
いやらしい気持ちにはなった。
すごく、エッチな気持ち。
感情が高まり、爆発しそうな気分……。
でも、それは内側に向いていた。外側ではなく。
あとでわかったのだが、ヒナタもオレも、女の方に感情移入していたんだ。
「ねぇ、航太。ボクたちって、似ているよね」
「ああ、そうだな。でも、セックスできなくてもいいじゃないか。オレ達」
「うん。ボクたちはキスで気持ちよくなれるから」
「ああ」
そんなことがあった。
だから、オレ達は、セックスをあきらめたのだ。
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