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(12) ヒナタのいない日常

オレは、しょっちゅう、蓮の家に遊びに行った。 そして、セックスをする。 気持ち良くて、気持ち良くて、完全に中毒。そういうレベルだ。 たしかに、ヒナタとのチンチン合わせは気持ちよかった。 しかし、蓮とのセックスは、アナルでいく瞬間、下半身が熱くなり体がマヒする感覚に襲われ、そして、絶頂を迎える蓮の愛情が伝わり、それを全身で受け止める。 体中が愛で満たされる。 ああ、これが愛される喜びなんだ……。 つまりオレの体は、オレの中の雄の部分ではなく、雌の部分でいくことを望んでいる。 そういうことなんだ。 蓮の家は、事を済ませた後、夕ご飯時前に出る。 やはり、家の人と顔を合わせるのは気まずいものがある。 いくら友達と言っても、こうしょっちゅうじゃあ怪しまれるだろう。 それで、一人、とぼとぼ家に帰る。 誰もいない灯りの消えた暗い家。 母親の帰りは相変わらず遅く、オレは一人で夕食を食べ、お風呂に入り、テレビを見て寝る。 ヒナタのいない家は、ぽっかりと大事なものを失ったように感じた。 寒々しくて、例えるなら、色を失った世界。 隣の部屋にはヒナタはいるのだろうか? 何をしているんだろう? そんな、小さい頃から片時も離れなかったヒナタがいない生活が始まっていた。 でも、一向になれることはない。 「なぁ、ヒナタ。面白いな、この芸人。ははは、なぁ……」 いつもヒナタと観ていたお笑い番組を観て、ヒナタがいないソファに声をかける。 そんなことが何度もあった。 オレは、寂しくなるとヒナタの家の扉をたたいた。 都合の良いやつ、と思われたとしても仕方ない。 我慢ができなかった。 でも、ヒナタは、玄関口で首を横に振って、扉を閉ざした。 蓮君と付き合っているんでしょ! ボクといたら蓮君にうたがわれちゃうよ! 航太、頑張ってね……。 そんな事を言われている気がした。 オレは寂しさを紛らわせるために、 ヒナタとずっと作っていたジグソーパズルを、ひとりで作り続けた。 ヒナタの笑顔を連想するゴッホのひまわり。 分かっていた事だが、無くした一つのピースは足りないまま。 決して完成する事はないっていうのに……。 

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