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第3話

 仁と不良たちは、臨時駐車場で取っ組み合いをしていた。 「東!」  霧也の声も届かないのか、仁は腕を振り、足を蹴り上げ、頭突きを喰らわしている。 「たッ、助けてくれ!」 「解かった、お前の勝ちだ!」 「お前、だとぅ?」 「いや、東さんッ!」 「よせよ。東でいい」  仁が顔を上げこちらをみた。霧也と視線が交錯する。慌てた霧也に、仁は片目を閉じた。 「おら、保健室行くぞ」 「うぅ」 「痛てて……」  その去り方は、あまりにも鮮やかだった。

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