23 / 25
第23話
そんな思いで、私の元へ通っていたなんて。
身体めあてだったんじゃない。
仁は、私の事が好きだったんだ。
では、私は?
私も……仁の事を……。
心が揺れる。
「今まで楽しかったぜ。じゃあな」
仁が、行ってしまう。
「待て!」
霧也は、反射的に彼の腕を掴んでいた。
行かないで。
行かないでくれ 仁。
「コーヒーくらい、最後まで飲んでいってもいいんだぞ」
「あ、ありがと」
座りなおした仁は、睫毛を伏せている霧也に困惑していた。
(これって、脈あり、ってこと?)
コーヒーを飲んで気を落ち着かせようとしたが、心臓が早鐘を打って落ち着かない。
他愛ない話を交わしているうちに、コーヒーは飲んでしまった。
本当に、これで最後だ。
霧也は、ようやく正面から仁を見た。
「あの連中とは、縁を切ってくれ」
「……」
「そうすれば、考えないでもない」
「?」
「お前と、交際をしてみてもいい」
ともだちにシェアしよう!