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③
何処かで父さんの死を知って
まだ若い母さんに再婚させ
ゆくゆくはその子どもを
跡継ぎにしようと企んでいるに違いない。
《母さんは実家に
連れ戻されたんだと思います》
父さんの死は知ったが
恋人がいることまでは知らなかったか
もしくは、恋人がいることは
知ったが母さんより年下で
パン職人だと知り、
別れさせようとしているか。
何にせよ、母さんは返してもらう。
俺の親は母さんしかいないんだ。
《母さんを救出しに行きましょう》
俺は啓毅さんと待ち合わせをして
母さんの実家に行くことにした。
龍煌にはメールで簡単な説明だけしておいた。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
隣県にある母さんの実家。
電車とタクシーで向かった。
やはり、門前払いか。
中に入れるなと
言い付けられているのだろう。
だが、叫べば母さんに聞こえるだろう。
『母さん‼ 迎えに来た‼』
啓毅さんも叫ぶ。
「由姫梛さん、迎えに来ました‼」
少しして、バンッと
音がして玄関が開いた。
「紫音、啓毅君
迎えに来てくれてありがとう」
小走りで向かって来て
啓毅さんに抱き付いた。
『お帰り、母さん』
タクシーに乗り、とりあえず
龍煌のマンションへ帰って来た。
「由姫梛さん、お帰りなさい」
龍煌に母さんを無事
連れ帰れたことをメールした。
「二人とも、
迎えに来てくれて
本当に助かったわ」
『見合いして、再婚して
子ども産んで跡継ぎにとか
言われたんだろう?』
確認の意味で訊いてみた。
「あら紫音、凄いわね‼
一字一句違わずあってるわ」
やっぱりな。
『だろうと思ってた』
俺達の会話を聞いていた
啓毅さんは顔面蒼白になっていた。
「全部断ってきたから大丈夫よ」
母さんは啓毅さんに
自らキスをした。
息子の前でよくできるな(苦笑)
別にいいけど。
「子どもつくるなら
啓毅君とがいいし」
サラッと爆弾を投下したな。
そういうのも二人きりの時に
言えよ、母さん。
夜になり、龍煌が帰って来て
四人で夕飯を食べた。
久々に母さんとキッチンに立った。
龍煌ん家だけど(笑)
『恋人が料理している
姿っていいよな』
いきなり、何を言い出すんだか。
「だよね」
二人の会話を聞きながら
母さんと笑った。
*数ヶ月後*
俺と母さんは
それぞれの恋人の家で
暮らすことになった。
発端はあのことで
啓毅さんが母さんと
離れていると心配だと言ったからだ。
*二年後*
母さんと啓毅さんに
子どもが生まれた。
俺にとっては義弟になる。
年齢的には
俺の子どもでも通るだろう(苦笑)
俺達も母さん達も幸せだ。
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