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同室者はかなりの男前でした

「これ完全に熟睡じゃねーか」 「ったく、こんなとこで寝てたら風邪ひくぞー」 どれくらい時間が経ったかはわからないけど、耳元で聞こえる声に少しずつ意識が浮上する。やだ、まだ眠い。起きたくない。そう思う本能になかなか瞼が持ち上がらない。 「れーいらー、起きないとご飯食べちゃうぞーもうお兄ちゃん腹ぺこだぞー」 そう言いながら優しく頭を撫でる手に徐々に意識がはっきりしだす。ん〜、この声、は、 「ん、きぉ・・・?」 「おはよ、レイラ。よく寝てたね」 そこに居たのは常磐騎麻、一つ年上の従兄弟の姿。久々に見る騎麻は寝起きのどアップでも全然いけちゃう、相変わらずのイケメン。優しく微笑みながら俺の頭を撫で続けてる。なんかほっこり。おはよ、と返しながら騎麻を引き寄せちゅっと軽くキスをする。ん?別に挨拶だし。 「起きたのか?」 突然聞こえてきた声にビクッとした。騎麻以外にも人がいたみたい。上半身を起こし声のした方を向くと、キッチンの壁にもたれ掛かりミネラルウォーターを飲む知らない男。 その知らない男の正体は、俺の同室者だった。 結城嵐太郎二年生。騎麻とは初等部からの付き合いらしい。日本人にしてはかなり体格が良くて、ちょっと長めの黒髪は緩くウェーブがかっている。なんだかちょっとえろい。少しタレ目なのも、口元と目元にあるホクロも、心地良い低い声も、何もかもえろい。 騎麻は爽やか貴公子の万人向けイケメン。で、この人は年上のお姉様方に人気そうなワイルドイケメン。ちなみに響ちゃんは子供からお年寄りまで虜にするマイナスイオン系イケメン。んー、イケメンって色んな種類があるなー。とりあえず、 「らんらんと嵐ちゃんどっちがいい?」 「・・・」 「はははっレイラの名前呼びは"これからよろしくね"の意味だから受け入れろよ!」 「・・・嵐太郎か嵐で」 「じゃあ嵐ちゃんね!」 ちょっと苦笑いの嵐ちゃん。そんなの気にしない。嵐ちゃん可愛いじゃん。 騎麻が食堂で注文してくれたらしい料理のいい香り。LINEが既読にならないのを見て、俺が寝てるのを察知した騎麻が、気を利かせてくれたのだ。そういえば移動中に軽くご飯を食べたっきりで、今日はまともな食事をしていない。気付いた瞬間素直過ぎる腹が鳴った。 会話もそこそこに先に食事をとることにした。俺の好きな肉料理がいっぱい。サイコロステーキに唐揚げ、ローストビーフにボルシチ、あぁこのフライドチキンも美味しい。 「おい・・・すごいスピードで肉がなくなってくんだけど」 「こらレイラ!野菜も少しは食べなさいっていつも言われてるだろ!」 「さっきブロッコリー食べたから!」 見た目はガリガリにほんのり筋肉を貼り付けたような体の俺。食べても食べても太らない。女の子のみんなゴメンね? 「生徒会って忙しいんだね。日曜なのに仕事してたんでしょー?」 「イベント前だからな。でも歓迎会に間に合って良かったな、初の学校イベントじゃん」 「そう!歓迎会って何するの?」 事前に教えてもらった行事の最初のイベントが、"新入生歓迎会"だったのはしっかり把握済み。それに間に合うように急いだんだから。 「確か俺らの時は鬼ごっこと食事会だったよな。高校生になって何で鬼ごっこだよってな。」 「まぁ今年も内容は殆ど一緒かなー。」 入学から数週間が経ちクラスや授業に慣れて来た頃に、校内探索と上級生との交流を目的にと、始まった行事らしい。鬼ごっこでその二つの目的が達成されるのかは謎だけど、意外と好評で恒例になったんだとか。ま、俺はまだここに来て上級生としか交流を持てていないんだけど。 腹もいっぱいになりだらだらと時間を過ごしていた。騎麻は明日も朝から生徒会の仕事があるみたいで、先程自室に戻ってしまった。嵐ちゃんは今お風呂タイム。今日初めて会ったばかりだけど嵐ちゃんはすごく落ち着く。たぶん見た目の雰囲気がちょっと父親の十六弥くんと似てるからだと思う。主に色気部分が。 みんな元気かなぁ・・・と、実際には離れて一日しか経っていない家族の顔を思い浮かべる。それぞれが毎日忙しく仕事をしていたけど、何日か会わない日があっても離れて暮らすのは初めてだ。ちょっぴりセンチメンタル。後でみんなにメールでもしよう。 「風呂空いたぞ。タオルとか適当に使って良いからレイラも入ってこいよ」 お風呂上がりの嵐ちゃんは、そりゃもう凄かった。何がって色気が。部屋着のゆったりしたスウェットを履き、暑いのか上半身は裸。腹筋が素晴らしいことになっている。まだ湿っている髪の毛が顔にかかって大人っぽさと色気が倍増。俺にはまだこういった大人の色気はない。ま、今後も出るのかは不明だけど。 「嵐ちゃんって隠し子とか居そうな感じだよね。なんか場数を踏んだ男の色気がダダ漏れてる」 「どういうイメージだよ」 フッと笑いながら髪の毛をかき上げる姿とか、もう100点満点だよ。ふと裏門で優希くんが言っていた話を思い出す。 「確かに嵐ちゃん見てると抱かれても良いって思っちゃうかも?」 「おいおい、急に何の話だ」 やたら顔が良い生徒のせいでホモが急増中らしいよと、優希くんの話を簡単に伝える。きっと嵐ちゃんだけじゃなく、騎麻も響ちゃんもみんなを魅力しまくってる。 「お前もかなり過ち犯しそうな見た目だけどな」 と、嵐ちゃんが少し呆れ気味に言う。

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