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(嵐太郎視点)

今日からこの部屋に新しい住人が増える。二年になってから、人数の関係で一人で部屋を使用していた。一人の時間が割りと好きな俺にとっては、なかなか快適な生活だったので少し残念。短い一人暮らしだった。 常磐レイラ。今日から俺の同室者で、初等部からの友人であり生徒会長の常磐騎麻の従兄弟であり、TOKIWAグループの現社長の息子。・・・まず肩書きにインパクトがありすぎる。 そのレイラは、少し部屋を空けていた間に入れ違いで到着していたらしく、余程疲れていたのかソファで熟睡していた。そして、初めて見たその姿には驚かされた。 今までに見たことがない程白く透き通った肌に、少し長めで癖のある白に近いプラチナの髪。閉じられた瞼は同じ色の長い睫毛に縁取られ、小鼻のすっきりした綺麗な鼻筋に、薄く色付いた唇。完璧なバランスで構成された顔は、まるで絵画から出てきた天使のようだと思った。が、全身を覆う黒い服と至る所に輝くシルバーアクセで、だいぶロックな天使だが。 その後すぐに目を覚ましたレイラの瞳はアメジストの様な紫をしていて、更に天使の様な見た目を増長させるものだった。自己紹介もそこそこに腹を空かせていた俺達は、とりあえず先程騎麻とテイクアウトしてきた食事を三人でとることにした。 話してみてわかったがレイラは、サバサバしていて、とても付き合い易い性格をしている。無表情だと人形のように見えるその顔は、表情がコロコロ変わり全く冷たい印象はない。むしろ人間味に溢れている。人懐っこく、初対面だとは思えない程にお互いすぐに馴染むことが出来た。ま、昔から騎麻に話だけは沢山聞いていたんだけど。 午後9時を少しまわった頃。騎麻が自室へ戻った後に、先にシャワーを浴びた俺と交代でレイラが浴室へと消えていく。するとすぐ浴室の扉が開く音がし振り向くと、何故か全裸のレイラ。 「パンツ忘れたー」 と、そのまま共同スペースを横切り、先程軽く荷解きをしていた右側の自室へ入っていく。ガサガサと音がした後、また全裸のレイラが姿を現し、浴室の方へと消えていった。 「・・・タオルあっただろ」 見た目は天使でも中身はただの自由人。男同士なので気にする訳ではないが、会ってまだ数時間だというのに全裸を目撃するとは流石に予想外。ばっちり目撃したナニが意外とデカかったとか、ガリガリに見えるが綺麗な筋肉がついていたとか、思う所は様々だ。 それから15分程して、再度浴室の扉が開いた。流石に今回は全裸では無かったが、身につけているのはパンツのみ。なんというか、デジャブ。 とりあえずレイラの頭に引っかかっているタオルを奪い、大量の水滴を撒き散らしている髪をわしゃわしゃと拭く。 「わわっ痛い、痛いって嵐ちゃん!!」 知るか。タオルが水分を吸収し重力を増していくのを感じ、更に豪快に髪をかき混ぜていく。はげる!やめて!とタオルの下からくぐもった声が聞こえたが、関係ない。むしろはげてしまえ。 「床はちゃんと自分で拭いておけよ」 若干涙目のレイラが大人しくタオルで床を拭き始めたのを確認する。少し癖のある白い髪の毛が今は絡まり丸い綿毛のようだ。ちょっと笑えるが可愛い。ちなみにまだパンツ一丁という姿のまま。 その後、絡まった髪を解くのに二人して苦戦した。 (嵐太郎視点終了)

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