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同室者の苦悩

やられた。盛大にやられた。何の遠慮も無かった。 「嵐ちゃんひどい」 俺の髪の毛はすごく細くてすぐに絡まる。濡れている時は乾いている時の10倍は絡まる。いや、冗談とかではなく。なのに嵐ちゃんときたら、がっつりとやってくれた。 「部屋をびしょびしょにするのが悪い」 ペチンとおでこを叩かれた。そうかもしれないけど、口で言ってくれればいいと思う。 それから12時くらいまで二人でだらだらとテレビなどを観て過ごし、眠さにウトウトし始めた俺は嵐ちゃんに自室に行けと促される。 「明日寝坊するなよ」 「ぅん、おやすみ嵐ちゃん・・・ちゅ」 おやすみのキスをして自室に向かう。明日からは楽しみにしていた学校生活のスタート。楽しみで眠れない、なんて事は全くない。睡眠大好き。寝坊しないようにアラームをしっかりセットする。あぁー楽しみだ。 その頃レイラの去った共同スペースでは、嵐太郎が頭を抱えていた。 「あいつ危なすぎだろ・・・」 あまりにナチュラルにキスをされ、呆気にとられている間に既にレイラは自室へと消えていた。実は夕方に騎麻と寝起きのレイラがキスをしていたのはばっちり目撃していた。が、普段からブラコン気味で中等部の弟へ、挨拶代わりのキスをかます騎麻には見慣れているのだ。しかし騎麻は嵐太郎にキスする事はない。油断していた、というより、予想外すぎる行動で読めるはずがない。 机に置いていたiPhoneを手にとり、LINEを開く。宛先は友人であり、今現在嵐太郎の頭を悩ませている男の保護者。 『挨拶代わりにキスするのは常磐の教育なのか』 短い内容だが、送信相手の騎麻にはしっかり内容が伝わったようで、すぐに返信が来た。 『え、レイラにキスされちゃった?(⑉°з°)-♡ あいつちょーっと人より スキンシップ激しめの子だからね☆ 俺も今度嵐にしちゃおっかな(/ω\)ハズカシーィ』 というイラつく顔文字付きのふざけた返信内容にため息が漏れる。確かに初日にしては大分打ち解けたとは思うし、懐かれて悪い気はしない。だが、それとこれとでは話が別である。 レイラも聞いていたようだがこの学園には少数派とはいえ、同性愛がまかり通っている。そんな学園に初等部から通っている嵐太郎は、言ってしまえばノーマル寄りのバイである。更に言ってしまえば、レイラの顔はどストライクなのである。胸が付いていたら間違いなく手を出していたし、むしろナニが付いてる状態でも手を出したくなる程にタイプなのだ。 そんな事を知らないレイラは嵐太郎の前を全裸で歩いたり、何の躊躇いもなくキスをしてきたのだ。大人っぽい、落ち着いている、と言われる嵐太郎だが、所詮は高校二年生。 「・・・ヤりてぇ」 自分の欲望には忠実なタイプである。

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