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初登校

ピピピピッピピピピッ 「んー・・・」 手を伸ばし、手探りでアラームを止める。今のアラームは何回めのアラームだろう?・・・わからない。だけどきっとまだ大丈夫、まだ寝れる。そう自己完結し、また眠りにつこうと軽く寝返りをうとうとしたその瞬間ーー。 バッ 「う"っ」 「アラーム何回シカトするつもりだよ」 勢いよく布団がどこかへ消えてしまった。あぁ、朝日の眩しさに目が霞む。どうにか薄目を開け、ベッドの横に布団を持って立っている人物に目をやった。 「お前今日初日なんだから早めに職員室行かないとだろ」 そこには既に制服を着た嵐ちゃんの姿が。そう、今日は楽しみにしていた学校生活の初日だ。確かに昨日騎麻に職員室に行くように言われたような。 「嵐ちゃん・・・俺、職員室わかんない」 「連れてってやるからさっさと起きて準備しろ 」 そう言うと嵐ちゃんは部屋から出ていった。まだ眠さではっきりしない頭のまま、どうにかベッドから出ると、そのまま洗面所へと向かう。冷たい水で顔を洗い、やっと眠気がおさまり頭が回転をし始める。 「嵐ちゃんおはよー」 「あぁ、おはよう。朝飯食うか?」 「んーん、朝はいらない」 部屋に戻ると嵐ちゃんが珈琲を飲みながらテレビを観ていた。朝は食べない派。おもむろにテーブルの珈琲に手を伸ばし一口。うげっブラックだ。 「着替えてくるね」 そう言い自室に戻るとクローゼットにかかる真新しい制服を手に取る。深いモスグリーンのチェックのパンツに胸元に校章の入ったグレーのブレザー。首元には学年を示す赤色のネクタイ。 着慣れない制服に少しの照れくささと今後の学園生活への期待で顔が緩む。 「じゃあ行くか」 「うん!」 まだ早い時間なのか生徒の姿はほとんどない。5分程で校舎に着き、嵐ちゃんの案内で職員室に向かう。見慣れない学校という建物にキョロキョロと、視線が落ち着かない。色々な企業の御曹司や金持ちが通う学校、どこも綺麗に掃除が行き届いていてゴミ一つない。 気付くともうそこは職員室の目の前で、嵐ちゃんにお礼を伝えわかれる。 ガラガラっと扉を開くと、中は沢山の机が並んでいて、忙しそうにプリントを整理する人やパソコンに向かう人が大勢いた。どうしたらいいのかなと様子を伺っていると、白衣を着た20代後半程の男が近づいてきた。 「よーう。常磐レイラだな。俺はお前の担任の仲宗根一だ。よろしくなー」 「担任!よろしくハジメちゃん!」 「こらこら、先生には敬語を使えー」 まあ、いいけど。と、頭をグリグリと撫でられる。そのまま一頻り撫でると頭から手を離し、少し離れた机の上に積まれた教科書の束を持って戻ってきた。 「これお前の教科書な。早速だけど教室いくぞー」 「はーい」 教科書の束を渡され、そのまま職員室の外へと歩き出す。所々毛先の跳ねる伸びっぱなしの髪に、うっすら伸びた無精髭。くたびれた白衣がなんとも言えない担任の仲宗根ハジメちゃん。 「常磐は学校通うの初めてなんだってなー。ま、存分に楽しめよー」 そう言いまた頭を撫でられる。撫で方が犬猫を撫でるような感じでちょっと変な感じ。 「友達出来るかな?」 「おーおー、100人でも200人でも出来るぞー。でもまぁ、まずは同じクラスの35人と仲良くなろーなー」 そんな話をしている間に着いた1-S。天羽学園のクラス編成は、成績や家柄の上位がSクラスに集まり、AからDクラスはその他の生徒を満遍なく平均的に振り分けてあり、Eクラスはスポーツ特待生のクラスになっている。もちろん世界のTOKIWAである俺はSクラスに振り分けられた。 「呼んだら入ってこいってのも面倒だし一緒に入るか」 そう言うハジメちゃんに付いて教室に入る。ザワザワとしていた教室内が俺が入った瞬間に静まり返る。うぅ、ちょっと緊張してきた。 「今日からこのクラスに入る常磐レイラだ。ほれ、自己紹介しな」 教室内の全ての視線が集まる。あぁ、こういう時に何を言えば良いのか聞いとけば良かった。 「常磐レイラ、です。初めての学校生活でわかんない事ばっかだから、仲良くしてね?」 これで良いのかと不安でハジメちゃんの方を見上げる。うんうん、と頷きながらまた頭を撫でられ少し安心する。すると静かだった教室が急にどっと湧き、至る所から 「よろしくー!」 「ようこそレイラちゃーん!」 「え、すっごいカッコイイー!!」 「常磐ってあの常磐!?」 「よろしくねー!」 と、様々な声が上がった。少し照れくさい。

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