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友達が出来ました
「あんなに近くで生徒会見たの初めてだわ」
教室に戻り机にダラりとうつ伏せになった要くんはなんだかちょっと疲れた様子だった。
「俺もだよーっ。やっぱ近くで見ると圧巻って感じ!良い萌えは補充出来たけどちょっと目立ち過ぎて、ファンクラブに目付けられないか冷や冷やしちゃったよー」
まっ、あの三人のファンクラブはみんな穏健派だから安心だけど!という姫路くんの言葉に興味を持つ。
「ファンクラブって?」
姫路くんの説明によると、この学園、見た目の良い生徒にはファンクラブがあるんだとか。恋愛対象としてや憧れ、尊敬する生徒の同志が集まりキャッキャと女子の様に戯れるという、謎の集団らしい。
生徒会のメンバーにはもちろん、嵐ちゃんのように見た目が良ければ一般生徒にもファンクラブはあるんだって。そのほとんどは互いに集まり、想いを寄せる相手について語り合ったり、遠くから見つめている程度で害はない。けど、たまに過激なファンがいて、対象者に近付く人に喧嘩を売ったりする事もあるんだとか。
「姫路くんって何か色んな事に詳しいね」
腐男子は情報通なのです!と胸を張る姫路くん。そこでダラりとしていた要くんが顔を上げこちらを見てきた。
「常磐って昼もだけどだいたい人の事名前ってか愛称で呼ぶのに凌だけは名字なんだな」
そう、普段なら基本的に人を名字で呼ぶ事はしない。昔ロシアに住んでいた頃に、名字呼びは堅苦しくてあまり好まれないと教わったのがきっかけ。だけど、姫路くんはファーストタッチのインパクトが強すぎて、愛称を付けるタイミングが無かったのだ。
「ま、結果的に凌のキャラが濃すぎてタイミングを失ったってことか」
「そんなぁ〜っ。今からでも是非俺も名前で呼んで!」
「じゃあ要くんみたいに凌って呼ぼうかな」
是非ー!と喜んでいる凌。初めは鼻息荒く意味不明なことを叫ぶ不審者のようだったが、今では大分興奮が落ち着いたのか明るくて話しやすい。たまに意味不明な事を言うけど、そこはスルーしてしまえば問題ないとわかった。
「俺のことも君とか付けなくていーぜ。で、俺はレイラって呼ぶ」
「じゃあ要だね!」
そこで丁度チャイムが鳴る。午後は確かホームルームが続いていた。ドアからくたびれた白衣姿のハジメちゃんが入ってくる。
「午後は来週の歓迎会の説明と役割決めをするぞー」
「来週に行われる新入生歓迎会だが、まあ知っているとは思うが鬼ごっこを行うー。新入生が逃げて二、三年が鬼だ。もちろん校舎に詳しくて人数の多い鬼側が有利になる。そこで特別ルールとして、各クラス1名のキングと3名のナイトを事前に選出しておく。その選ばれた4名が最後まで生き残れば、キングだと7人分、ナイトだと3人分として数える。そんで、各クラス生き残った人数の一番多いクラスには景品が出るから気合い入れろよー」
ハジメちゃんが黒板に図を書きながら説明していく。毎年各クラス生き残るのは10人以下らしく、キングとナイトが何人生き残れるかで勝負が決まるらしい。ちなみに優勝クラスへの景品は、食堂での"シェフの気まぐれスペシャルメニュー"の食券一ヶ月分だとか。
「ちなみにクラス優勝を逃しても生き残った生徒には、願いを一つ聞いてもらえる権利が与えられる」
どちらの特典も人気みたいで教室はなかなかの盛り上がり具合だ。俺もシェフの気まぐれスペシャルメニューというのが気になる。想像していたよりも面白そうなイベントだなと、歓迎会が更に楽しみになった。
「まあ説明はこんなもんだなー。で、本題のキングとナイトを決めるんだが、やりたい奴はいるかー?」
その問いかけに手を挙げるものはいない。クラスの得点に大きく関わるその役目に、みんな遠慮気味になっているようだ。
選出のポイントとしては、やっぱり走る速さと持久力が大きなポイントになるだろう。しかし走るのがいくら速くても、タイミングが悪ければ捕まってしまうし、走るのが遅くても見つからなければ逃げ切る可能性はある。実際のところ運次第といった感じなので、更に選出が難しかったりする。
「要はやらないの?」
「足には自信あるけど、こういうの絶対陸上部のエースとか10人位の集団とかと出くわすんだよなー」
それはなかなかの運の悪さだ。一向に決まる気配を見せない様子に、ハジメちゃんもどうしたもんかと考えている。俺も足には自信がある。が、体力が無い。それに校内もまだ殆ど把握していない。でもどうせ参加するなら楽しみたいしなーうーーん。
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