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(嵐太郎視点)

まあ結論から言うと、やってしまった。我慢が出来なかった。最初は火傷の様子を見てやるだけのつもりだったが、あんな涙目で見上げられては無理だ。 気付いた時には驚きに目を見開いたレイラの顔がピントも合わないような距離にあった。そして、瞬時に開き直った。やってしまったもんは仕方ない。 状況についていけていないのか、始めに驚いたように押し返した以外には抵抗らしい抵抗もなく、唇を離した後も反応が無かった。しかし、ほんのり色づいた唇に上気した頬を見て自然と口角が上がっていく。 「ごちそうさま」 「!!!」 我に返った瞬間火が出るんじゃないかという勢いで真っ赤になるレイラ。目線がキョロキョロとさ迷いわかり易く挙動不審。 「なに、自分は挨拶代わりにキスするのにされるとダメなの」 「!!それと今のは違うよ!!つか、俺家族にしか口にはしないし!!」 いやいや。昨日の夜普通にしてたぞ。そう教えると更に狼狽えだした。まあ、確かに大分眠そうにしてはいたが、まさか覚えていないとは。 恥ずかしいのか気まづいのかクッションで顔を隠して唸っている。勢いでやってしまった手前、気持ち悪がっている様子はない事には少し安心する。 「ほら、いきなり悪かったよ。機嫌直してこっちに来い」 「う"〜」 警戒しながらもそろりそろりと近付いてくる。ほらほらもっとおいでー怖くないぞー。手を伸ばせば届く、といった距離まで近付いてきた所で手を引き一気に距離を詰める。 「わっ」 勢いのままぶつかるようになだれ込んできた身体を抱きとめ、後ろから抱き締める形で足の間に座らせた。身長はあるがまだ身体の出来上がっていないレイラの身体はすっぽりと俺の腕の中に収まる。 「・・・なんか嵐ちゃん急にスキンシップが激しくなったよね」 大人しく俺の腕の中に収まるレイラは、考えることを止めたのか、大分温くなったカフェオレをちびちびと舐めるように飲み始めた。 ・・・俺が言うのもおかしな話しではあるが、さっきの今で危機感が無さすぎではないかと思う。先程の反応はなかなか好感触だったと思う。しかしこの切り替えの早さは、意識されていない、といった感じか。 (そう簡単には流されないか・・・。ま、これを機に徐々に慣らしていくしかないな。) 長年の学園生活で男同士に抵抗の薄い学園の生徒と、多少感覚はズレているがレイラは違う。そう簡単に男を意識するとは限らない。 戦いは始まったばかりとでも言うように、ギラついた目で見られていることにレイラは気づいていない。 とりあえず今日の戦果としては、キスは抵抗が有るが密着する事には無抵抗、といったところだろうか。 (嵐太郎視点終了)

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