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ファンクラブ

その後は何も無かったかのような態度の嵐ちゃん。もしかするとああいった・・・キスとかはこの学園では日常的に行われること何だろうか。いや、いや、そんなはずはない。では何故?そんなことはわからない。 「・・・ま、いっか」 悩んだり考えたりは好きじゃない。好きか嫌いかで言えば、会ってまだ二日目だけど嵐ちゃんは好きだし、気持ち悪い所かむしろ気持ち良かった。元々スキンシップ好きの俺としては、密着する事に抵抗はない。結果、キスも唇と唇が密着しているだけだと思えばスキンシップの延長だろう。 咄嗟の事で少し取り乱してしまったが、何だ、別に驚く事ではないんじゃないか。あんだけ普段から色気たっぷりの嵐ちゃんだ。スキンシップにえろさが滲み出てもおかしくない(?)。 少し自分でも無理矢理な論ではあるけど、まあ良いだろう。 「食事会の服用意したか?」 「用意したよー!」 「食事会って鬼ごっこの後にあるってやつー?」 休み時間になると自然と俺と要と凌は集まる。といっても俺と要は隣同士なので、少し離れた席の凌がやってくるんだけど。 「食事会ってなんか服いるの?」 「そーそー!食事会って言っても生徒だけじゃなくて、理事会や役員会のお偉い方も来るからねー。みんな一応正装して出席するんだよー」 「めんどくせぇー」 それは知らなかった。立食パーティーの形をとった交流を深めるための会だとは聞いていた。が、理事会となると、常磐の人間もいるのかな。 (パーティーとか久々だな〜) 実は俺は企業などのパーティーにはほとんど出席したことがない。というより、俺だけじゃなく俺以外の常磐家の人間も、パーティーには殆ど出ない。 パーティーとは言ってしまえば企業同士の交流の場であり、媚を売り合う場だ。TOKIWAグループ程の規模の大きさになると、パーティーには引っ張りだこ。でも、媚を売るのも売られるのも興味のなかったTOKIWAグループの創立者が、「んなめんどくせぇもん行くより、家で家族と過ごす時間にした方が有意義だ」と全てのパーティーを断ったらしい。 そこからTOKIWAグループの人間の殆どがパーティーにはあまり出席しなくなったんだとか何とか。詳しいことは知らない。 「やっぱパーティーってことはスーツ?」 「だいたいはそうかなー?たまに準備が間に合わなかった生徒が制服で出たりするけど。」 スーツなんて持ってきていない。一応騎麻に連絡しておこう。 「あ、あのう!」 「ん?俺?」 放課後、鬼ごっこに向けて校内探検していると、前から小さめの可愛い系の生徒が二人で声を掛けてきた。一人は緊張しているのか少し固めの表情で、一人は何を考えているのかわからない無表情。 「あのっ常磐君!あなたのファンクラブを作らせて下さい!!!」 「えっ」 土下座でもするんじゃないかという勢いで頭を下げられた。うん、とりあえず、廊下で叫ぶの止めて。凄い目立ってるから。 「すみません。ちょっとあちらに移動してお話いいですか?」 俺も是非そうして欲しい。無表情くんの指差す食堂近くの、生徒のために解放されたテラス席へと移動する。徐々に暖かくなってはきているけど、外にあるテラス席は少し肌寒かった。 「突然すみません・・・。僕は一年の加野冬弥で、こちらも同じく一年の濱野秋斗です」 コクリと頷く。さっきの様子だと俺が名乗る必要はないのだろう。そう判断し、とりあえず話の先を促す。 「僕達っ是非常磐君のファンクラブを作らせて頂きたくてっ」 「二年の先輩方の方でもファンクラブ設立の話が出てるみたいなんで、先手必勝、俺達が先に常磐君との接触を試みたってゆー訳です」 「はぁ・・・」 ファンクラブかぁ。凌にファンクラブの説明を聞いた時、絶対俺にもその話が来るだろうとは言われていた。が、まだ学園に来て四日目だ。 「君ら俺のファンなの?」 「はいっ」 この二人との接点はない。二年でも話が出ていると言ったが、学年が違えば更に接点は無いはずだ。移動教室や食堂で声をかけられたりもするけど、それも挨拶程度の僅かな接触でしかない。

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