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「俺さぁ、まだここに来て四日目だし、今まで学校にも通ってないから普通がどうとかわかんないんだけどさ、ファンだって言うなら俺のこと色々知ってるんだよね?」 「はい!常磐君はTOKIWAグループを纏める常磐家の方で、生徒会長である常磐騎麻先輩の従兄弟。そんな凄いお家の方なのに誰に対しても同じように接してくださるとてもお優しい方で、何よりこの世のものとは思えない美しさの持ち主で、僕の憧れです!!」 あまりに勢いよく熱弁する加野君に驚きながらも、何か違うな〜と引っ掛かりを覚える。 「君は?」 さっきから黙っている隣の濱野君へと声をかける。やはり無表情で何を考えているのか読めない。 「俺はあなたの顔がとてもタイプだからファンクラブを作って思う存分に眺めていたい」 「へ?」 「秋斗君っっ!」 顔がタイプ、だから、眺めていたい? 「あははははっ」 「笑った顔も更にタイプだ。写真に収めてコレクションしたい」 「ちょっ、何それ!あははっ笑わせないでよ!!」 この子やばい。そういうことは普通、思っていても口には出さないんじゃないかな。爆笑する俺と無表情で俺の顔を凝視する濱野くんに挟まれ、どうしていいのか分からずわたわたしている加野くん。その様子にまた笑いが込み上げてくる。 「はぁ、はぁ、ちょっと待ってね・・・」 あーー、笑いすぎてお腹が痛い。 「ファンクラブね、俺には要らないよ」 「え!!!」 「何でですかっ」 泣きそうな声を上げながらこちらを見上げてくる加野くんと、ほんの一瞬、目を見開いた濱野くん。いや、そんなに驚かなくても。 「君らはまだ俺の名前と見た目くらいしか知らないでしょ?誰にでも平等に接するのは、俺がまだ周りとの距離を探っているから、問題がないように優しく接しているだけかも知れない。実は心の中ではみんなのことを見下しているのを、上手く隠しているだけかも」 そんなことは!!と、声を上げるのを手を軽く上げ収める。まあ、実際に俺はみんなに同じ様にしようとか、優しくしようとかは考えていない。したい様にして、それを見た人が俺の事を優しいと思うならそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。つまり、 「俺と君らはまだお互い何も知らない。そんな状態でファンです、憧れですって言われても俺はそうですかって納得もしないし、別に嬉しくない。だから、ファンクラブはいらない」 「そんなぁ・・・」 あからさまに落ち込んだ様子。いやいや、話はまだ終わってないよ? 「でも、お互いを知らないなら、これから知っていけば良いと思わない?」 「「!」」 「俺、ファンクラブは要らないけど、仲良くしてくれる友達が出来るのは大歓迎なんだよね。どう?友達なら俺の顔も眺め放題、写真だって撮っても良いよ?」 どういった理由でも自分に好意を抱いてくれることは、実際嬉しくない訳ではない。でも、だったらファンクラブとして組織を作ったり、陰で慕うんじゃなくて、友達になって直接関わってきて欲しい。そう二人に伝える。 「是非!是非お友達になって下さい!!」 「俺も。友達になってあなたの事を知りたい。そうしたらもっと良い、あなたの色々な姿を見れそうだ」 ブレないな〜と、また笑いが込み上げてくる。よし、そうと決まれば! 「よろしくね、冬弥、あっきー!」 「よろしく常磐君!」 「いや、あっきーは止めようぜ」 ん?あっきー呼びは不服なの?却下です。いいじゃんあっきー。

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