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鬼ごっこ

「みなさんおはようございます!今日は生徒会主催行事、新入生歓迎会です!」 舞台の上で元気に挨拶しているのは、生徒会書記の蜂須ケイ、俺達と同じ一年生で実は同じクラス。一年生なのに生徒会として学園の運営を担っているとはすごいなぁ。ケイはとても素直で顔も中身も可愛い。おかげで今周りから野太い声援が響いていて、朝はテンション低めの俺には結構キツい。 「今からルール説明を久遠副会長にしてもらいたいと思います!」 ケイと位置を入れ替わるように響ちゃんが壇上に立つ。あぁ朝から眩しい王子様オーラが・・・。 「では、事前に説明は受けていると思いますので、簡単にルームを説明していきます。まず、一年生には朝のうちにキングには黄色、ナイトには青色、その他の生徒は白色のリボンを配っています。上級生は一年生を捕まえたらそのリボンを回収して下さい。捕まった生徒は体育館に戻ります。回収したリボンは後ほど景品と交換になるので無くさないように注意してください。」 続きまして、風紀委員長からの注意です、というケイの言葉にまた新たな生徒が壇上に立つ。そういえば風紀委員は初めて見るなと思い、視線を集中させる。凌の話では今の学園は生徒会も風紀委員も優秀で、歴代でも最も学園がきちんと統率された黄金時代なんだとか。 「風紀委員長の近衛悠仁だ。今日はあくまで新しく高等部の仲間入りを果たした、新入生を歓迎するための会だ。万が一にも暴力や喧嘩を起こそうものなら、風紀の処罰対象になる。みんな、羽目を外しすぎないように」 身長が高く堅苦しくは無いけど真面目さが姿勢や話し方からも伝わってくる、この風紀委員長さんも騎麻と仲良しらしい。普通は王道だと生徒会と風紀委員は仲が悪いけど、この学園は仲もよく協力体制もバッチリだって、もちろん凌が言ってた。仲が良いのはいい事なのに何で悲しそうな表情なのかは、凌だから仕方ないんだろうね。腐ってるし。 「では、最後に常磐生徒会長から開会の言葉です!」 壇上に立つ生徒会長としての騎麻は、何だかとても大人な感じがする。何がとははっきりわからないけど、表情とか立ち姿が"トップに立つ者"の姿をしているんだと思う。 「みなさん、今から行われる新入生歓迎会及び食事会は、今年度の生徒会が取り組んだ初めての行事になります。新しいメンバーで協力して計画をし、無事に本日を迎えることが出来ました。あとは、今日の場をみなさんに楽しんで貰うことで任務完了、ということです。今日は勉強は忘れて、思う存分楽しみましょう!」 一斉に会場を包む拍手と声援。身内のこういう姿を見るのは、嬉しく温かい気持ちになる。周りに負けないように大きく拍手をした。 「いよいよスタートだな。レイラ、捕まるなよ」 「二人もね」 さぁ、まもなく鬼ごっこスタート! 「絶対生き残るぞー!!!」 1-Sの作戦は名付けて、"仲間の屍を無駄にするな!!作戦"。クラスの大半が捕まっても、キングとナイトが生き残れば勝算はある。そのため、クラスの3分の2を初めから囮とし、鬼の気を引きながら逃げる。そしてその間に残りの俺達は鬼の少ない方へ逃げる。 ま、そう上手く行くわけがないんだけどね。 こんな大人数での鬼ごっこなんてのは、もうぶっちゃけ運任せでしかない。いくら鬼を引き付けたって鬼はわんさか居るし、何処で鬼と出くわすかなんて分かりっこない。そして今現在俺の目の前にも三人の鬼がいる。 「最初に見つけたのがレイラちゃんとか俺らついてるんじゃね?」 「俺めっちゃレイラちゃんタイプなんだよね!」 「よし、挟み撃ちで絶対捕まえるぞ!」 にやにや笑いながら近付いてくる。表情が鬼というより不審者だ。咄嗟に三人とは逆方向に走り出す。俺の直感があの三人には絶対捕まってはいけないと言っている。 「おいっ逃げたぞ!」 逃げるに決まってるだろ!確かこの先には隣の塔へ繋がる連絡通路があったはず。そう思い走る速度を上げる。 「こらーっ大人しく捕まれー!!!」 「嫌に決まってんじゃん!!!」 ああしつこいっ本当にしつこいっ!!俺は足の速さは自信があっても持久力はない。たぶん体力だけで言ったら俺の体は60代くらいだと思う。実は今も限界が近い。早く逃げ切らないと確実に俺の体力の底が見えてきている。 でも神様ってなかなかドSみたい・・・。何故なら連絡通路の反対側、隣の塔の扉に鬼が。鬼が!!! 「もぉっ・・・さい、あくっ!」

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